今後の方針
北側の岩場から離れ、紬は帰路についていた。
当初の目的であった鉄はあまり多くはないが多少は手に入れることができたので最低限やることはやったという感じである。
岩巨人という想定外が現れなければもっと探索を行うつもりであったが、流石に魔法が使えなくなると探索もままならなかったのである。
ちなみに岩猿率いる群れに襲われる以前に見つけていた鉱石は樹海と岩場の境界にまとめておいてあった。それなりに重量があるのでわざわざそれらを持ったまま探索をするのは効率が悪かったという理由と、探索方法の関係で手元に鉄があると上手く探すことができなかったためにそうしていたのだが、もしも持ち運んでいて岩巨人と遭遇するようなことになっていたらお荷物は捨て置いていかなければ逃げられず今回の探索は成果無しとなるところだったかもしれない。
とりあえず回収した鉄鉱石を鉱物造形の魔法で荷車の形に変形し、それを引いて運ぶ。
この探索に出る前に拠点で散々荷車の形を鉱物生成の魔法と鉱物造形の魔法で形を造る練習をしていたのでそこそこの出来の荷車となっている。
今回の回収した鉄鉱石はそう多くはないが金具の制作に実験や検証用としては十分だろうから当面はこの量でやりくりして行くことになるだろう。鉱物造形の魔法を使えば何度でも形を変えられるので前世の世界に比べれば繰り返し試す行為は遥かに楽にできるはずだ。
それでも今後もっと鉄が必要になったならばやはり岩巨人という存在が探索の障害となるだろう。
なので岩巨人に通用する手札を考える必要がある。
いや、岩巨人に限らずその周囲で環境魔素を利用する魔法が使えなくなる敵性の異形と遭遇する可能性はゼロではない。そうした可能性を考慮すれば環境魔素を利用しない魔法で戦闘に勝利できるようにいろいろと考えておく必要があるだろうと紬は思考する。
強化系の魔法を中心とした戦術を練るか、あるいは新たな魔法を求めてまだ見ぬ異形を探しに行くか……。
荷車を引きながらだと拠点に到着するまでまだまだ時間がかかる。その間紬は今後の方針について考えを巡らせるのだった……。