猿の群れ
獲物の姿が覆い隠されたために苛立ち混じりに猿や岩を投げつける岩猿。
しかしその程度では岩のドームはびくともしない。
猿たちも石などを持って岩のドームに打ち付けたりしているが、すぐには突破できそうにない。
簡単に殺せる獲物だと思っていた岩猿であったが、まさか岩の壁を出してくるなど予想などできていなかった。
そういったことができる存在を岩猿は知っていたが、アレから種のようなものを奪ったのか? いや、アレをこんなやわそうな動物が殺せるはずがない。アレには自分も勝てなかったのだから……と岩猿は自身の考えを否定した。
そして何故かアレと同じ力を持つこの獲物からならば、種のようなものを奪うことも容易だと判断して自分の群れの総力をつぎ込んで攻め立てていたのだが、なかなか思うようにいかないのでひどく苛ついている。
手下どもでは埒が明かないと、岩猿は獲物が隠れた岩へと歩を進め、バチバチと腕に火花を纏いながら近づいていった。
そして力をためるように大きく腕を振りかぶっての一撃。
轟音と共に岩のドームの内と外を隔てていた岩が吹き飛び大穴が空く。
腕力強化の魔法を使った岩猿の一撃の前には岩の壁など無いも同然であったのだった。
しかし岩猿の攻撃で崩れ吹き飛んだ穴の先、そこには一号たちの姿はなかった。
代わりにドームの中に充満していた煙、眠りを誘う煙が外へと流れだす。
最も穴に近かったのは当然穴を開けた岩猿であったのでもろに眠りの煙を浴びてしまう。
だが蜘蛛の異形がそうであったようにその効果は一瞬。ややフラついた岩猿であったがすぐにその体勢を立て直した。
だが、その一瞬が命取りである。
岩のドームに隠れてすぐに鉱物造形の魔法で穴を掘り、ドームの中には眠りの煙を置土産に残した後に、地下を通って猿の群れの背後にまで回り込んでいた紬がその絶好の攻撃チャンスを逃すはずがなかったのであった。
鉱物生成の魔法と鉱物造形の魔法を利用した紬の攻撃が猿の群れへと放たれた。