岩猿
岩猿率いる猿の群れの猛攻を前に、一号たちは防戦を強いられることとなった。
今までの異形との戦闘では紬のほうが数で勝っている場合ばかりだったが、今回は相手の数のほうが上である為にまさに数の暴力と言った具合に休みなく攻め立てられているのだった。
多数を相手にするのには眠りを誘う煙の魔法が効果的なのだが、その眠りは即効性こそあれどそこまで深いものではない。そのため強い衝撃などで簡単に目が覚めてしまう。
そして岩猿が投げつけてくる猿たちは眠りを誘う煙に触れて眠りについたとしても落下の衝撃ですぐに目を覚ましてこちらに攻撃を仕掛けてくるのだ。
あるものは爪でひっかき、あるものは砂を蹴り上げ、あるものは石を投げつけてくるという多種多様なレパートリーの攻撃手段で襲い掛かってくる猿たち。
攻撃を捌ききるのも一苦労といった感じで、なかなか反撃するタイミングを掴めない。
眠りを誘う煙の魔法をボス猿に直接当てられたならだいぶ違ってくるのだろうが、その岩猿は煙の射程の外のかなり遠くの方から猿群れに指示のようなものを出しつつ猿や岩を投げてきている。そこまでの間に猿の壁とも表現できそうな人垣ならぬ猿垣があるせいで近づくこともままならないというのが現状だ。
人面樹を相手した時のように大容量の水を生成できたならば簡単に殲滅できたのだろうが、この岩場では水を生成する魔法は相性が悪いようで、生成できても岩団子虫を覆う程度の量までであった。
逆に鉱物生成の魔法ならばこの場との相性が良いので効率よく生成できる。なので今回の戦闘は鉱物生成の魔法を主軸にすることとなるだろう。
勿論、毒性付与の魔法を使えばもっと簡単に猿の群れを処理することはできるだろうが、紬はこの群れの死体を畑の肥料として利用したいと考えているので、作物にどのような影響が出るかわからないので毒を使う手段を選択肢から外して考えている。
とりあえずいったん仕切り直しとするために紬は鉱物生成の魔法と鉱物造形の魔法でドーム状に岩を形成してその中に姿を隠したのだった。