新たな羊
一号たちが島の北側を探索していた一方で、カルデラ湖の方ではバロメッツの蕾が今にも開こうとしているところであった。
留守番組の羊たちが見守る中、その赤い蕾が開かれた。
開いた蕾の中から姿を現した新しい羊は淡い黄色の毛色をしていた。
今までの羊の毛色でいうと五号や八号の黄金の毛並みに近い色だ。
だがそんな毛色のことよりも紬には新しい羊にとても気になる特徴が存在していた。
生まれたばかりにかかわらずこの羊の頭からは既に角が生えていたのだが、その角がどう見ても普通の羊の角ではなかったのである。
額の真ん中から伸びた一本の角。その螺旋状の角を見た紬はとある異形の角に似ていることに気がついた。
その角は角兎のものに非常に酷似していたのだ。
それに気づいた紬は、そういえば蕾の時点で角兎由来の魔法である察知の魔法が余っていたから割り振っていたんだったっけ? と思い出していた。
普通の羊でなく一角の羊が成った原因というと、これぐらいしか思い当たらなかった紬。
蕾の段階で割り振った能力がその蕾に成る羊の容姿に影響を与えたということなのだろうか?
今後の検証案件として他の能力を蕾の時点で割り振ってみることを決めた紬。
とりあえず今はこの一角の羊について調べてみようと確認を開始した。
さらに詳しく確認したところ、蕾の時点で割り振っていたはずの察知の魔法が無くなってしまっていることがわかった。
いや、正確に言えば強化された能力を代わりに得ているがその能力は固定されてしまっていて今までのように割り振る事が不可能になっていた。
一角の羊に固定された固有能力は察知の魔法をより強力にしたもののようで、悪意や敵意のみならず真贋を見極めることができるようになっていた。
現状では使い道が無いが嘘を見破る事もできるらしい。
これらの特徴、見破る力と一本の角を持つ羊について紬には心当たりがあった。
瑞獣、カイチ。
中国の伝説に登場する一角獣のことである……。