硬化の魔法
刃物として向いている材質の確認が終わったので、さらに魔法を上乗せした場合の検証に入る。
試すのは相手も使っているであろう硬化の魔法。
硬化の魔法の効果は、利用する魔素の量に比例して増減する。より多くの魔素を使うことでより頑強になる魔法だ。
この魔法ただ単純に対象を硬くしているというわけではないようで、硬くなるというよりは頑丈になっていると言ったほうが正しい。
本質としては耐久性を高める魔法なのだと思われる。
効果対象は物だけでなく自身も選ぶことができ、自身に硬化の魔法をかけた場合だと硬くなって動きが鈍るなんてことは無く、普通に動くことができるので固まってしまうわけではなく傷つけられにくくなるといった具合だ。
どのような原理が働いて堅くなっているのかはわからないが、紬の予想では物質を成り立たせている分子同士の結合をより強固にしているのだろうと思っている。
強く結びついているためにちょっとやそっとの攻撃では影響を受けなくなるということなのだろう。
この魔法をナイフにかけたならば相手の外殻で欠けてしまっていた刃も、欠けることなく切り進める事が出来るようになるかもしれない。
今回は徐々に効果を高めていってどのくらい強度が変わるのかの検証を行っていく。
十分な検証データが揃った頃には岩団子虫の外殻には無数の切り傷がつけられていた。
今回の検証でどれ程の魔素の量でどれくらい頑丈になるのか把握することができた。
ナイフの攻撃だけでなく硬化の魔法と加重の魔法を用いた打撃も検証したので岩団子虫の外殻はボロボロとなっているのだが、それでもまだ息があるので硬化の魔法の恩恵はかなり高いことが見て取れる。
だがそれもここまでだ。検証の時間は終わり、トドメを刺す事にした紬。
物理的な攻撃では埒が明かない事はよくわかってので、以前に兎に使ったように水塊の中に閉じ込めることで難無く溺死させた。
そして遺骸から種のようなものを回収する。息の根を止めたからか硬化の魔法の効果が切れて、今までの頑強さが嘘のようにさっくりと解体することができた。
そして岩団子虫から取り出した種のようなものから得た能力はやはり硬化の魔法であった……。