北の岩場
樹海のサーベルタイガーと遭遇したあたり、蜘蛛の異形がテリトリーとして居座っていただろう場所から更に北へと向かうとだんだんと木が減っていき、ゴツゴツとした岩が転がっている岩場となっていた。
ここに来たのは有用な物資、主に鉱物を回収するつもりで探索に赴いた紬。
鉱物生成と鉱物造形の魔法を得たので出来ることが大幅に増えた紬であったが、鉱物生成の魔法で生成した物は基本的に時間経過とともに光へと消えてしまうので、どうしても使い捨ての運用になってしまう。鉄の槍の雨のように攻撃手段として運用するのならば使い捨てでも問題無いのだが、拠点の設備などに利用しようと思うとそれではいけない。
なので鉱物の現物を確保して鉱物造形の魔法で使い捨てにしない設備用の鉱物を見つけるために島の北側の岩場に足を運んだわけである。
鉱物を見つけるために紬はとある魔法を使う。
鉱物生成の魔法だ。
魔法を使う場所によって使いやすさが変わることを利用すれば、目当ての物を見つけられるのではないかと紬は考えたのだ。
現に水気が樹海に比べると少ないこの岩場では水を生成する魔法の効率が低くなっている。
逆に鉱物生成の魔法は効率よく生成出来るように感じられた。
この感覚を頼りに鉱物生成の魔法で鉄を生成した時に効率よく生成できる方向に進んでいけば、鉄の現物が見つかるはずだろうと予想している紬は、少しずつ位置を変えながら鉱物生成の魔法を使っていく。
どんどん北へと進んでいった紬はひときわ鉱物生成の魔法で鉄を生成しやすい場所を見つけた。
見た感じだと周囲との差はわからないので地表に露出しているのではなく、地下部分に鉄が埋まっているのだろうと目星をつけた紬。
鉱物造形の魔法で上部の鉱石を変形させながらどかしていくことで鉄のあるであろう層まで地盤を掘り進めた。
そして赤っぽい鉱石を見つけることができた。赤錆のように見えるのでおそらくは酸化鉄を多く含んだ鉄鉱石だろう。
流石に鉱物造形の魔法では形を変えるだけで製鉄することはできないので鉄そのままとはいかないけれど、なんとかする方法はきっと見つかるだろうと回収しておく。
紬はもっと純度の高い鉄がないかと更に探索を続ける事にしたのだった……。