剪定
自身を食べる。
もうすでに字面が危険だ。そもそも草食動物が植物から生えてしまっている時点でどこか破綻しているわけだが……。
もちろん無闇矢鱈と食べるなんてことはしない。
そもそも食べられる感触は感じるので本当に最終手段としたいのだ。とりあえず繋がった状態で何度も咀嚼するのはやめることにした。葉の根本を断って落としてから食べることにする。
他の葉の影に入ってしまっているような、日照条件が悪い葉などを選んで食べる。ようは剪定するのとそうかわらない。
リサイクルでエコな感じで、不要あるいは不良になった部分を食べて取り込むことで効率化も図れるわけだ。もちろんエネルギーのロスは発生するのだが葉が腐葉土になるのを待つなんて事をするよりよっぽど効率がいいのである。
自給自足ここに極まれり。自前の葉っぱを食べ、羊部分もおそらく最終的には養分として利用できるだろうと思われる。酸素と二酸化炭素が呼吸と光合成で循環できることも鑑みれば、ここまで自給自足ができる生物が今まで居ただろうか? いや、いない(反語)。
などと気を逸らしながら葉を食べる紬。
剪定だなどといってはいるが、それは身を削る行為である。嫌でもあの病院で中身を持っていかれた事を思い出してしまうのだ。
ついでに言えば目の前の光景も追い打ちをかけてくる。葉を落とした根本から赤い液体がこぼれているのだ。軽くスプラッタな光景だ。
流石に血液ではないはずでバロメッツについての情報の中に茎から羊を切り離すと血のような赤い液体が……というのがあったと思いだす。おそらくそれと同じだろう。
あの時目が見えていたわけではないが、この血のような赤い液体を見るとどうしてもあの病院での出来事を思わせる。
あの出来事が吾妻紬の心に残した傷の根は深く依然として影を落としていた……




