脚力強化の魔法
蜘蛛の攻撃を躱していた四号。そのとき避けた先に察知の魔法が反応したことで急いでその場を飛びのいた。
飛び退いた場所には戦闘の序盤で蜘蛛が放った網があってそれがいっきに引き込まれていた。
察知の魔法が反応していなければ四号は網に引っかかり捕まっていたかもしれない。
蜘蛛が四号の方へと意識を向けている間に三号は地面に突き刺さっていたまだ消えていない鉄の槍を分枝の魔法で生やした根で掴んで引き抜き、それをそのまま蜘蛛の方へと投げつけた。
しかし蜘蛛はそれを躱す。
そして三号の周りには眠りを誘う霧がないことに気がついた蜘蛛の異形は、鉄の槍を投げつけてきた三号へと迫る。
三号は脚力強化の魔法を強め、タイミングを見計らう。
目の前に蜘蛛が迫り、普通の脚力では回避は困難な距離となったところで三号は脚力強化の魔法を頼りに後ろへ全力でバックステップを行なった。
その場に一枚の葉っぱを残して……。
葉が開き葉力で包み込んでいた眠りの霧が放たれる。周囲に一号が散布していたものを葉力で集めていたのだ。
遂に眠りを誘う煙の魔法と水を生成する魔法で作った眠りを誘う霧に蜘蛛の異形が触れた。眠気に襲われた蜘蛛のその身体がふらついた。
三号はバックステップの勢いを受け止めた後ろ脚をそのまま縮め、それを全力で蹴り出しふらついた蜘蛛めがけ頭突きを繰り出す。
頭突きを受けた蜘蛛は呻きながら大きく怯んだ。
その時に頭突きを行った三号から黒い小さな影が跳び出た。
それは分枝の魔法で生やした三号の小さなコピーだ。
その分枝の羊も脚力強化の魔法によって高速で突っ込んだのだ。
向かう先は蜘蛛の口の中。
当然毒性付与の魔法でその分枝の羊は毒性を帯びている。分枝の羊は毒性を帯びたまま蜘蛛の口の中に跳びこんだ。
はたしてその毒は蜘蛛に対してその効果を発揮した。
紬が分枝の羊に付与した毒によって、まるで平衡感覚を失い酔っ払ったかのように蜘蛛の異形の足取りが怪しいものとなったのだった……。