手乗り羊
植物本体から分枝の魔法でコピーを生やした場合どうなるのかを確認できたので、次は切り離した状態の羊単体で分枝の魔法を使った場合を試してみることにした紬。
一号に分枝の魔法の能力を割り振り、植物本体との接続を切り離す。
今までの検証から魔素を利用していることはわかっているので、一号には切り離す前に十分な量の魔素を植物本体から送って渡してある。
そして一号単体で分枝の魔法を使ってみる。
分枝の魔法の使用によって一号は力が抜けるような強い感覚を覚え、一号の身体から茎が伸び芽が出て膨らみ蕾が成った。それが開き中からは一号そっくりの白い毛色の羊が顔を出した。
ただしその大きさは非常に小さく、もはや手乗りサイズの羊であった。
劣化コピーというよりは1/16スケールのフィギュアと化している分枝の羊。
検証したところ一号が所持していた能力はそのままというわけではないが使用することができることがわかった。
試しににミニチュア一号が分枝の魔法を使ってさらにコピーしてみるといったことも試してみたが、更に小さな羊が生えたが満足に能力を使えず、すぐに限界が来て光へ変わり消えてしまった。分枝の魔法を使ったミニチュア一号も魔素が足りなくなったのか身体を保てなくなり消えた。
一号の方の消耗も大きかったので単体で使用するには気軽にとはいかないようである。上手く使えばいろいろな場面で役に立つはずなので、運用方法などを事前にしっかりと考えて確立させておく必要があると紬は考えた。
その後の検証実験の末に、分枝の魔法の使用時の魔素の量を調節するやり方を覚えたことにより、分枝の羊のサイズも調整ができるようになった紬。
植物本体から鈴なりに小指の先ほどの羊を生やすことも可能となった。
だからどうしたと思うかもしれないが、なにかしらの利用法があるかもしれないのでとりあえずできることを増やしていくというスタンスのもと紬は色々と試していく。
魔素が豊富に含まれるカルデラ湖がそばにあるからこそ、ガンガン実験することができるのである。もしも他の場所で同じように高コストの魔法を使い続ければあっという間に倒れてしまうことだろう。
魔素が多い環境に感謝しつつ紬は魔法習熟を兼ねた検証をこなしていく。結局紬が気の済むまで検証が行われ、それは数日に渡ったのだった……。




