分枝の羊
分枝の魔法によって一号を元にして新たに生えた羊は一号の姿そのまま……というわけではなく、ふたまわりほど小さな個体であった。
分枝の魔法の複製は劣化コピーとなるようで、完全なクローン羊になるわけではないようである。
さらなる違いとしてこの劣化クローンには紬の意識を載せることができない。
けれどもその身体を動かしたりすることができないわけではない。そもそもとして分枝の魔法はコピーして創りだしたものを操ることができる能力だ。
例えるならばラジコンを操作するのに似ているのような感じだろうか。あるいはゲームのキャラクターを操作している感覚に近いのかもしれない。
ようは一人称視点の操作は無理であり、三人称視点から操ることをしなければならないということである。
とはいえコントローラーのようなものもなく、複雑な操作方法を求められるわけではない。ほぼ感覚的に身体を動かすことができるので、そこまで操作に困るということはなさそうであると紬は感じていた。
そしてこの分枝のクローン羊のスペックはどれほどのものかというと、元になった羊…今回でいうと一号のスペックの七割といったところであった。
更に重要な点として一号に割り振っていた能力もコピーしていた。この事実はかなり大きな意味がある。
現在一つしか所持していない能力も分枝の魔法を併用することで、複数の起点を用意することができるということになる。
とはいっても、能力の方も劣化コピー状態となっているようなので過信は良くないだろう。
最後に重要なのは分枝の魔法の効果時間についてである。
分枝の魔法によるコピーは生やした時に利用した魔素の量で継続時間が違ってくるらしい。
より多く操作したりすることでも効果時間の限界は早く近づくことになるようだ。クローン羊が魔法を使えばさらにタイムリミットは短くなる。
植物本体と繋がっている時ならば追加で魔素を補充することも可能だったので、常に気を配っていればずっと存在していられるが、切り離しての遠隔操作となると限界まで魔素を注ぎ込んだ状態からだと一時間ほどで限界を迎えて光へと変わって消えてしまう。
他の魔法と同じように使い続ければより完成度の高いコピーや、継続時間の延長もできるようになるのかもしれないのでこの魔法も積極的に使っていこうと考える紬であった。