分枝の魔法
毎度恒例となっている検証の時間である。
人面樹から得られた新たな魔法の中でも特に紬が期待を寄せている魔法がある。
それは分枝の魔法だ。
人面樹は枝や根に木の実などを分枝の魔法でコピーして生やし操っていたようだが、紬はこの魔法を使うことでもっと面白いことができそうだと思っている。
その思惑が可能であるのか、それを検証するためにいったんカルデラ湖まで戻ってきた紬。
まず手始めに検証するのは、人面樹と同じような普通の使い方を試す。
植物本体から根や枝に葉っぱといったものを生やしてみた。
それらがきちんと操れることまで確認したところで、次の検証は羊たちの体からそれらが生やすことができるかどうかの確認である。
結果は成功。身体から少しだけ力が抜けるような感覚の後に一部のコピーを生やすことができた。どうやら体内の魔素を利用しているようである。
検証の結果、能力を割り振っている羊か植物本体を通して繋がっている状態の羊であれば体から植物の一部を生やすことが可能であった。
それらを操ることも可能なため動かす魔法では難しかった重量のあるものも、根などで掴むことで動かすことができるようになったというその事実は地味に嬉しいものだと紬は思う。
今までできなかった作業も可能となりそうなので、拠点づくりの方も作業が捗ることだろう。
さて、分枝の魔法が非常に便利なことは確認できたが、紬が試したいと思った面白そうなこととはこれからである。
分枝の魔法とは本来のところは植物の一部を生やすことができるという魔法なのだろうが、紬は普通の植物ではない。
バロメッツとは羊の成る木だ。
ならば分枝の魔法によって羊もコピーして生やすことが可能なのではないかと紬が考えるのも必然であった。
一号をコピーしてみようと分枝の魔法を発動してみると、体内から一気に力が抜けるような感覚が紬を襲う。
しかし普段から魔素が豊富なカルデラ湖の水を吸収している紬であれば問題ない。
分枝の魔法は正しく発動し、一号が接続している茎の根本から新たに生えた茎の先端には、白い毛色の羊が成っていたのだった……。