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禍福は糾える縄の如くその人生は終わりを迎える

なんとなく筆が動いた作品。不定期ですがよろしくお願いします。





 とある病院の一室。ベッドに横たわる少女の近くで話す大人たちがいた。

 その内容はといえば脳死判定がなされたこの少女の臓器がどこに行くのだとかそういう話だ。


 その時、脳死判定の曖昧さがなんとかかんとか……といった話題を友人が話していたっけ……などとベッドに横たわる少女がはっきりとした意識を持って考えていることに気がついた者は誰ひとりとしていなかった。



 禍福は糾える縄の如しというのならば、吾妻紬(あづまつむぎ)という少女の人生の始まりは幸せであった。わりと裕福な家の長女として生まれ両親に大切に育てられていた頃は幸せであった。

 禍福は糾える縄の如しというのならば、家族が乗った飛行機が事故にあったのは不幸であった。家族のうち一人だけ助かったのは不幸中の幸いであったともいえるかもしれないが……。

 臓器移植を受け一命を取り留めた紬の人生は一変し、苦学生としての生活が始まったのであった。

 両親が残してくれた遺産もその大半が手術とその後のリハビリ等の治療費として消えた。

 進学するにも金がかかる私学などありえないので国立の、それも授業料免除となる特待生入学を目指し勉学に励んだ。


 合格発表当日。はたして吾妻紬の名前はそこにあった。それも特待生である上位五名の枠に入っての合格であった。

 禍福は糾える縄の如しというのならば、その日合格した紬は幸せであった。

 そしてその帰り道、事故に巻き込まれたことは本当に不幸であった。


 紬が気がついたのは病院のベッドの上だった。

 指一本動かせずまぶたも開かない、だが耳だけは聞こえる状態だった。

 脳死というよりは植物状態に近かったのだろう。しかし医師たちのジャッジは脳死。おそらく保険証に入れたチェック……臓器提供意思表示も無関係ではなかったかもしれない。かつて受けた臓器提供で助かった。だから自分もとチェックを入れた。

 だが誰がわかるというのだろうか。意識があるままに麻酔もなく腹を開かれ臓器を摘出されることになるなどと……。


 吾妻紬はあまりの痛みで気絶することなく意識あるままに臓器を抜かれ、その人生に幕を下ろした……。


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