社会勉強?これが?
今日もつまらない家事を終わらせ、魔物の出る森へ向かう。
「この辺りのモンスターは狩っても狩っても居なくならないなっと」
独り言を言いながらロックリザード(鱗が岩のトカゲ、鱗の硬度が常に変動し続ける)をなんとか倒す。
もはやリザード系の魔物が出てきた程度では驚くこともなくなってきた。
ただ、問題点も多い。
その最たるものが......
「戦闘技術なんだよな......」
そう、技術である。
経験なら数やれば積める。
体力なら鍛えれば手に入る。
しかし、技術だけはどうしようもない。
これだけは独学では逆に危険だ。
「かといって教えてもらおうにも先生になってもらえそうな人もいないしな......」
『どうしようもないこともある』
それがこの世界で学んだものの最も大きいものの一つだ。
『才能』『運』『容姿』
そんなもんで人生が決まる。
それが社会のルールだって気づかされる。
いや、本当は気づいていた。
気づいていると認めたくなかっただけだ。
そんなのはただの言い訳だ。
わかってる、わかってるんだ......。
「スー、ハー、スー、ハー」
呼吸音?
どこから?
「せいっ!」
そこにいたのは、まさしく女騎士という感じの背の高い人だった。
上等そうな鎧、ピカピカに光る剣、鋭い眼差し、そしてロックリザード五体を一撃で倒す技術。
あの人こそ我が師匠にふさわしい!
「弟子にしてください!」
「いきなりなんだぁ?!」
<蓮くん説明中>
「なるほどなぁ、それで私を師匠にねぇ」
「はい!あなたの技に目を奪われたんです!」
「そう言われちゃ断るわけにはいかないな!」
「本当ですか!」
「ああ、本当だとも。でも私の指導を厳しいぞ?ついてこれるか?」
「はい!」
そうして僕に師匠ができた。
これで少しは異世界を楽しめるかな?
「違う!そこはもっと丁寧に!」
「はい!」
「はっ!」
「おっ、今の良かったな......。おっと、もうこんな時間か。汗かいただろう?近くの川で水浴びてこい。」
「ウィっす」
久々にいい汗をかいた。
努力するなんて、いったい何年ぶりだろう。
師匠、明日も稽古つけてくれるかなぁ?
「今戻りまし......」
さっきまで居た場所には、師匠も僕の荷物もなく、代わりに一枚の紙が置かれていた。
そこには
『名前も名乗らないような相手のことを信用しちゃダメだよ素人くん!貰ったものは、まぁ社会勉強の授業料とでも思って! ルート』
と、書かれていた。
「ダマサレタ......」
『スキルルート(カード)が解放されました!』
『解放条件:強い怒り』




