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Master Code  作者: 覇牙 暁
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第七十六話

第七十六話「篭絡」




 ―――グキン! と、腕へと伝う鈍い音。


 この手が握るのは、唖然とした顔で私を見下ろす男の太い腕。



 「え……へ?」



 その男の顔が、見る間に歪んで行く。



 「ぃ……ぃい……っ」



 遂に認識が追い付き、男は全身を恐怖に支配され。



 「ぃぎゃああああああッ!!?」



 私が手を放すと、男はそのまま自分の腕を掴んで身悶えし、地面の上でのたうった。


 その彼の腕はあらぬ方向へとブラブラ曲がりくねっていて。


 当然か。その腕は、私が“へし折った”のだから。



 「ダメだよ、おじちゃん。人に嫌がる事をする人は、“嫌がる事をされても文句なんか言っちゃいけない”んだから」



 激痛で暴れようとする男の顔面に、私は足を踏み下ろす。



 「ぐぇッ!」


 「煩い、少し黙れ」



 強く踏み締め、顎を動かせない程地面に押し付ける。


 その上で、私は視線を前方へと向けた。



 「な、なん、だ……?」


 「おい、何をやって―――」



 女性を取り囲んでいた男達は、目の前で何が起こっているのか、その認識が追い付いていないらしい。


 ダメだな、コイツらは。

 てんでダメだ。



 「貴様らが腰にブラ下げているそれは飾りか? 間抜け共が」


 「「―――ッ」」



 私に指摘され、ようやく得物に手を伸ばすような相手。


 そんな奴らなど、わざわざ斬るまでもない。


 彼らが得物へと伸ばした手が鞘から刀身を引き抜くよりも遥かに早く、一瞬で間合いを詰めた私は懐まで入り込み。



 「か……っ」


 「おぐっ」



 脇差を手にしていた方の男には、首筋への手刀。

 もう一人には鳩尾への拳打を打ち込む。


 何れも一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる症状を引き起こす、一時的に相手を失神させる技術だ。


 良く少年漫画なんかで見られる首筋にトンッてやるアレ。


 半信半疑で可能って言う人と不可能って言う人が居るけど、実際には可能だし、メカニズムも単純。

 慣れれば達人でなくとも簡単に出来てしまう。


 まぁ、問題は、そのまま放っておくと脳に重大な障害が残ったり、場合によっては死に至る危険な技術である為、『活』という意識を回復させる技術を同時に習得していなければならないって事だけど。


 こういう手合いに、そこまで面倒みてやるような義理はない。


 同心に引き渡す際にでも活を入れてやれば良いだろう。


 一人だけ意識を残したまま放置しているけど、アッチは激痛でロクに動けないと見て、私は腰を抜かしてしまっている女性の方へと向き直った。



 「―――立てる?」



 と、手を差し伸べると、ようやくといった感じでその手を掴み、彼女は自分の足で立ち上がった。



 「あ、ありがとう、ございました……」



 まだ少し混乱気味のようだけど、それ程極端に取り乱した様子もない。


 これなら話しも聞けそうかと判断し、私は背後で呻いている男の方へと視線を向けつつ尋ねた。



 「どしたの、これ?」


 「え、ええと……、私にも、何が何やら……」



 しかし、本人はまるで状況が理解出来ていない様子。


 聞けば、襲われた状況は兎も角、その理由には見当も付かず、顔も見た事がない男達だという。


 つまりは、人気の無い夜道を一人で歩いていた所を襲われただけ、という事らしい。



 「そ。じゃ〜どうしよっかな」



 役人に突き出すにしても、一応証人は必要になるだろう。


 となると、彼女をこのまま家に帰すってワケにはいかない。


 少し面倒だけど、キンさんの家まで戻り、事情を説明して引き取って貰った方が早そうか。


 そう判断した私は、しゃーなしでさっきの男が手にしていた荒縄を使い、三人の男達を拘束。


 一纏めにした後、ついでって感じで気絶していない男に顔を近付けた。



 「さて、おじちゃん?」


 「ひっ!」



 今度は素直に満面の笑みを浮かべていたんだけど、酷く怖がられてしまった。


 ちょっとショックだ。



 「おじちゃん達さ、彼女をどうするつもりだったのかなぁ? 教えてくれる?」


 「し、知らねぇ! オレ達は、ただ頼まれただけだっ! オレは何も知らねぇ!」


 「……は?」



 え、ちょっと待って。何コイツ?



 「強姦しようとしてたんじゃ……ないの?」


 「え……。―――ッ!!」



 あ、今すっごい「しまったー!」って顔した。



 「ふぅ〜ん……、ちょっと面白い拾い物したっぽいわね、これ」



 ただの強姦魔。そう思って役人に突き出そうと考えていたんだけれど。


 どうやら、そうも行かなくなってしまったらしい。


 私は振り返り、未だ男達に恐怖を感じている様子の女性へと向かって。



 「コイツらの事は私に任せてくれないかな? 大丈夫、悪いようにはしないから」


 「そ、それは……構いませんけど……」



 訝しむような表情を浮かべる彼女。


 普通なら、このまま役人に突き出したり、お奉行様相手に証言したりと手順があるのが当たり前。

 それをすっ飛ばして、誰かも知らない相手に任せるなんてのは、当然不安があるだろう。


 だから、先ずはそれを払拭する。



 「心配しないで。私はお奉行様と知り合いなのよ。モリ様って言えば解る?」


 「モリ……様っ!? 南町奉行、モリ・カネツグ様の!?」


 「そそ。役人ってワケじゃないけど、茶飲み仲間っていうかね。結構仲良くさせて貰ってるの」



 途端、彼女は膝を折って平伏し。



 「と、とんだご無礼をっ! モリ様のご令友の方とは存じ上げず……っ」


 「あぁ、いいのいいの、気にしないで。別に身分が高いワケでも何でもないから、私は」


 「で、ですが……っ」



 キンさんの名前、効力ヤバ過ぎ。


 まぁ、それだけ身分制度が厳しい国って事の証明でもあるんだろうけど。



 「大丈夫だって。兎も角、私は馬居町の“邦木屋”っていう旅籠屋さんで部屋を貸して貰ってて、普段はだいたいそこに居るから。もし何かあったら、そこへ来て」


 「は、はい。それでは、よろしくお願い致します」


 「ん、あーでも、こんな暗くて人気の無い道、一人で歩いてちゃダメよー? 今度からは気を付けてね」


 「はいっ、お有り難うございました!」



 なんて、何度も頭を下げながら去って行く彼女。


 “おありがとう”なんて、そこまで自分を卑下する事はないだろうとも思うんだけど、やっぱりこれも身分故、か。


 さておき。これで心置きなく“コイツら”と真剣にお話しが出来そうだ。


 私は再び骨折したままの男へと向き直り、縛り上げた荒縄の端を引っ張って。



 「さぁて、詳しく話しを聞かせて貰おうかしらぁん?」



 ニヤリと笑み、そのまま適当な空き家を探して男達を引き摺り回すのだった。


 そうして、結局。



 「ま、安全に話しが聞けそうなトコってなると……此処しかないか」



 長屋の空き部屋なんてのは結構あるもんなんだけど、それじゃ隣に住んでる人に声が漏れてしまう。


 となると、一軒家が望ましかったんだけど、そんな家が空き家になんてなっている筈もなく。


 最終的に行き着いたのは、やっぱりキンさんの家だった。


 ついさっきお暇したばかりの家に再び顔を出した私に、下女は少し驚いていたけれど、事情を説明したら、キンさんに取り次いでくれて。


 で、良い場所があるっていうんで通して貰ったのは、キンさん家の裏手の山にある小さな作業小屋だった。



 「お、いいねぇ。雰囲気あるじゃん」



 竹林の中にひっそりと佇む、7坪ほどの広さがある木造の掘っ立て小屋。


 元々は竹を切り出したり加工したりする為に用意された場所らしいけど、今は殆ど使われていないそうで、中には適当な長さの縄や錆びた鋸、鋳造品の挟みみたいな道具が壁にかけられているだけだ。


 土の地面が剥き出しだから、直接座るのはちょっと躊躇われる。


 だから、適当に椅子の代わりになりそうな台を引っ張り出して来て。



 「キンさん、悪いんだけどそっちの二人、適当に縛り上げといてくれる?」



 言いながら、骨折したままの男だけを一人バラし、手足に縄を巻き付けて。



 「それは構わないけど、ソイツはどうするんだい? 拷問にでもかけるのか?」



 何て言うから、私は思わず吹き出してしまい。



 「ダメダメ、そんなんじゃ。拷問ってのは、相手を選んでするものよ? こういう手合いには、こういう手合いなりの情報の引き出し方ってのがあるワケ。……ね? おじちゃん」


 「ひ……っ」



 怯えた表情で顔を背けようとする“おじちゃん”を、私は太い柱へと座らせて括り付ける。


 と、いうワケで。此処から私の腕の見せ所だ。


 一般的に拷問って言えば、専用の器具なんかを使い、苦痛を与えて情報を引き出す為の行為だ。


 けど、コイツは腕一本へし折られたくらいで簡単に怯えるような奴。


 脅せばある程度の情報が引き出せるだろうけど、でもそれは同時に“雇い主”に対しても感じている恐怖。


 洗い浚い話してしまえば、コイツは帰る場所を失い、下手をしなくても雇い主に殺されるだろう。


 そんな恐怖がある以上、本当の話しに嘘の話しを混じらせる可能性がある。


 気の弱い奴ってのは、それなりに自分の身を守る為には強かになれたりするものなのだ。


 だから、此処は別の手段を使う。


 キンさんが後ろの方で気絶したままの二人を縛り上げ、地面に転がして監視してくれているのを見計らい、私は柱に括られた男の前にドンと台を置く。


 それだけでもビビっているくらいだから、拷問なんてしようもんなら、マッハで気絶してしまったのではないだろうか?



 「―――ねぇ、私が恐い?」


 「う……っ」



 縛られて身動きの出来ない彼の頬を、私は指先でやんわりとなぞる。


 少し爪の先を立て、そのまま首筋までツーっと引き下ろし、喉ぼとけを軽く引っ掻いて顎先でピタリと止めた。



 「恐がらなくていいんだよぉ? 正直に話してくれたらぁ〜、痛い事なんてしないから……。ね?」


 「う、嘘だ! 情報を引き出したら後は用済みとばかりに、殺すに決まってる! そうだろう!」



 おーおー、ガチでビビってる。


 無抵抗の屈強な男を嬲るこの感じ、ちょっとゾクゾクしてきた。


 私は顎先から指を離し、代わりに彼の耳元へ顔を近付け、囁くように告げた。



 「心配しないで。ホント言うとね、アンタみたいなタイプって、私は意外に有用だと思ってるの」


 「え……、有……用?」



 私は台ではなく、胡坐をかいて座る彼の股座へストンと腰を落とした。



 「此処から先は、内緒の話し。だぁいじょ〜ぶ、アッチの二人は気絶してるからぁ、私達の声なんて聞こえてないよ~?」


 「な、なんの、つもり……だ」



 困惑してる。


 そりゃそうだろう。ついさっき、自分の腕をへし折って一瞬で男二人を無力化したような化物が耳元で優しく語り掛けているのだから。



 「腕、大丈夫? さっきは痛くしてごめんね。ちゃんと治してあげる」


 「え……」



 耳たぶに息を吹き掛けるようにしてそう囁き、私は彼の折れた右腕へ自身の掌を翳した。



 「―――闇夜の抱擁(Umfassen der dunklen Nacht)」



 彼の耳には、恐らくこのドイツ語が意味不明の祝詞や呪文のように聞こえている事だろう。


 故に、その自分の腕に生じた異変に、彼の表情が驚愕一色で染まる。



 「い、痛み、が……!?」


 「どう? ちゃんと動かせる?」



 尋ねるまでもない事だけど、骨折程度ならもう完治している筈だ。


 けれど、敢えて私は心配そうに彼の顔を覗き込み、慈しむように頬を撫でた。



 「あ、あぁ……」


 「そ、よかった。本当は怪我なんてさせたくなかったのよ? だっておじちゃん、私の好みだったから……」


 「好み……? オレ、が……?」



 頷き、自分自身吐き気を催すような究極の笑顔を浮かべ。


 それから、彼の両手を括っている縄を指先でスッパリと切断して見せた。


 これにはキンさんも慌てて口を開こうとしたけど、私は目配せで黙るよう伝える。



 「縛ってたトコ、痛くない? 大丈夫?」



 困惑して腕を摩る男のその手を掴み、私は宝物のヌイグルミのようにそれを両手でしっかりと胸に抱いて。



 「ふぉおっ!?」



 ささやかな胸にも使い道はあるのだ。


 特に、こういう“紳士”には。



 「ねぇ、おじちゃん。おじちゃんは、誰に仕えてるの?」


 「だ、誰に……って、そりゃ、流石に……」



 即座に拒絶しない。それはつまり、既に揺れてるって事で。


 だから、私はもう一押しとばかりに、お尻の下で硬くなっている“モノ”を意識しつつ、腰を揺らして彼の首に両腕を絡める。



 「おじちゃんの立場が判ると、おじちゃんの価値はもっと跳ね上がるわ。私も、おじちゃんをもっと大切にしてあげられるかも……」


 「た、たた、たい、せつにっ!?」



 あと一息。


 私は彼の股座で向き合うように座り直し、テントを張ってる“モノ”を自分自身の股間で圧し潰すように刺激して。



 「ぬぉおおっ!!?」


 「ねぇ、教えて? どうして、あの女の人を誘拐しようとしてたのかな……?」



 鼻息荒く興奮し切った様子の彼は、私の腰に手を回し、怯えるように指先を震わせていて。



 「う〜ん、教えてくれたら……おじちゃんが気持ちよくなれる事、してあげてもイイんだけどなぁ〜」


 「し、しかし、だな……! それは……忠義に、だな!」


 「そっかぁ、困ったなぁ……」



 言いながら、股間をグリグリ押し付けて。



 「雇い主さんって、私より大事な人、なの……?」



 悲し気に眉を顰め、顔を近付けてその目を覗き込む。


 揺れ幅は最早限界。

 明らかに私に向かって傾いていて。



 「私には、忠義を立てて……くれないの?」



 その瞬間、彼は完全に落ちた。



 「わ、わかった! キミの為なんだな!? 君の為になるんだな!?」


 「うん。おじちゃんが協力してくれれば、私は誰にも負けないわ。おじちゃんを脅して言う事を聞かせてる奴も、私がやっつけてあげる」


 「っ!? それは駄目だ! オレの主は、シドウ家譜代大名オオツキ・トキザネ様だ。4000人の配下を率い、西部25町を収める大領主様なんだ! そんな危険な事を君にさせる訳には……!」



 わお。サラっと吐きやがった。



 「大丈夫。おじちゃんの協力があれば、オオツキ様だって敵じゃないわ。私とおじちゃんには、それだけの力があるのよ」


 「なん……だ、って」


 「おじちゃんは、私の下で“救国の英雄”になるの。ただ、今まで通りオオツキ様に仕えるフリをして、私にちょっとだけ情報を流してくれるだけでいい。それだけで、私はすっごく助かるわ」



 与えるリスクを最小と誤認させ、最大限にリターンを増幅する。



 「そ、それだけ……?」


 「そう、それだけ。それだけで、おじちゃんは“英雄”になれる。私もきっと、もっとおじちゃんを好きになるわ」


 「えい、ゆう……。好き、に……」



 最後に、私はトドメとばかりに自分の指先を唇に当て、その指で彼の唇をゆったりと撫でた。



 「っ!!」


 「お願い、おじちゃんの力を私に貸して……?」



 直後、彼の目付きが変わった。


 私をヒョイと抱き上げ、目の前に置かれた台へと座らせると、その場で膝と拳を地面に着き。



 「お任せ下され! このタケイチ・ハンベイ、キミに忠誠を誓う!」


 「ありがとう、ハンベイおじちゃん。カスミ、期待して待ってるね♪」


 「応! 任された!」



 私はニッコリと微笑み、彼に連絡方法を耳打ちすると、そのまま傍に立ち、頭を抱き抱えるようにして彼の頬に胸を押し当て、顎の輪郭を撫で上げた。



 「カ、カカッ、カスミ様! あ、当たって……!」


 「フフ、当ててるの♪」


 「おっほおおおおおっ!!」



 もうコイツの頭の中身は、私へのハートマークでピンク色に染まり、ヘブン状態だろう。


 有用な手駒の完成だ。



 「さ、今日はもう遅いわ。彼ら二人は、私の方で適切に保護しておくから、おじちゃんはオオツキ様のお屋敷に戻って、二人がカネツグ派に斬られたと報告して頂戴」


 「え、そ、そんな……! これで、お預けなんて……!」


 「今はダーメ。あんまり遅くなると、おじちゃんまで疑われちゃうでしょ? おじちゃんが殺されたりなんてしたら、カスミ、もう立ち直れないかも……」


 「っ! そ、そうか……。そう、だな!」



 私が足を縛る縄を切断してやると、彼はスクッと立ち上がり。



 「よし、おじちゃんに任せておいてくれ!」


 「うん、気をつけてね、おじちゃん」


 「応!」



 と、男は意気揚々と小屋を出て行った。


 ―――で、彼の気配が感じられなくなる程遠ざかったところで。



 「うぼぉぉおおぇぇぇぇぇぇぇっ!」



 女にあるまじき声を発し、私は地面に膝を着く。



 「お、恐ろしい女の子だな、君は……」


 「おぇ〜?」



 唖然とした顔で、私を見下ろしていたのはキンさん。


 私はキラキラと輝くヨダレを袖で拭い、一息ついて。



 「たまたまよ……。ああいう趣向の男って、扱い易いの……。まぁ、お陰で私の方は精神汚染がハンパなかったけど……」



 言いつつ、ワリと悪くなかったと感じているのは内緒だ。


 実はちょっと、新しい世界に目覚めかけてる。


 しかし、まぁ、兎も角。



 「そっちの二人は、キンさんに任せるわ。適当に処分しといて」


 「しょ、処分!?」


 「そ、処分。拷問でもなんでもして情報引き出したら、後はどう扱ってくれても構わないわ。裏山に捨てるでも、ゴミに出すでも、好きにしてイイわよ」



 という私の言葉に、彼は心底ゾッとしたようで。



 「ほ、本当に恐ろしい人だな、君は……」



 若干怯えた表情を浮かべている辺り、多少フォローは必要か。


 そう判断した私は、先ほどの男にもやって見せたように、キンさんの傍へとパタパタと走り寄って。


 腰に抱き着いてから顔を見上げ、無邪気な笑顔で。



 「えへっ♪」



 途端、顔を真っ赤にして狼狽えるキンさん。


 と、それだけかと思ったのに。



 「―――へ?」



 私の小さな胸の浅い谷間に挟まる硬質な感触。



 「え、ちょっ、何硬くしてんの!?」


 「ご、ごごめんっ!」



 オマエも紳士かっ!?


 サッと身を引き、貞操の危機を感じて自分自身を掻き抱く。



 「おのれ、ロリコン共め……っ」



 私の周りは、こんなのばっかか!?



 「ち、違う! ろり……なんとかというのは解らないけど、でも違う!」


 「どうだか……」



 こんなちっぱいの何が良いというのか。


 それだけは、流石の私にも理解し切れないのだった。

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