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Master Code  作者: 覇牙 暁
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第六十五話

第六十五話「戦う理由」




 アールヴヘイム王都、北東カイキアス方面。


 私とカナを背に乗せたグラーネは、今も尚黒煙が発ち込める瓦礫の山と化した市街地を駆け抜ける。



 「方角は……間違ってないわよね」


 「その筈ニャんだけど……、だーれも居ないニャ」



 神馬モードから速度を落とし、比較的ゆっくりとした足取りでグラーネを走らせて来たけれど。



 (やっぱり、時間をかけ過ぎたか……)



 シェルターで新型の通信機なんかを受け取っている間に、随分と時間が経ってしまった。


 例の“包帯の男”は、もう此処には居ない。


 けどまぁ、それは想定内だ。

 行き先の見当は、大凡ついてる。



 「―――世界樹の祭壇」



 エルフ達が信奉する世界樹ユグドラシル。


 そのユグドラシルに纏わる神事や祭事、この国の重要な政務などで頻繁に利用されている場所だ。


 王城のある西面から時計回りに10数キロ北方へ回り込むと、それが見えて来る。


 この“祭壇”って奴は、日本で言う所の神社仏閣に相当する建物の中、その最奥部にある。


 要はユグドラシルを奉る神殿の一部なワケだけど、私の認識は少し違っている。


 ―――“制御盤”だ。


 ユグドラシルは巨大なコンピューターのような物で、同時に膨大な情報量を収められるサーバーの役割も果たしている。


 その中枢システムと直結し、制御する場所こそが、この“祭壇”なのだ。


 一般に公開もされているんだけど、それはその重要性を隠す為のフェイク。


 本来は一般人が立ち入ったり触れたりなんて事を許してはいけない類の物だったりする。



 (私を含む、王族の一部にしかその使用権限は与えられていないから、他の誰かが触った所で何も出来やしないんだけれど……)



 これは、飽くまでも対ノーマル用に考案し、用意された情報操作。


 誰かがその事実を知り、何かを企むとしたら、アールヴヘイム攻略を目指す上で最も意味のある部分になる。



 (敵が何を目的に動いているのか、それもまだ判らないけど……)



 王都に対する大規模な破壊行為。


 アバターラの軍勢を相手に戦おうとする覚悟。


 それに、UEPネットワークに介入し、通信機能を麻痺させた技術力や、ガーディアンモドキが使うというアバターラ殺しの能力。


 総合的に見て、相手は現状世界最強の軍事力を持つアールヴヘイムに対して敵対行為を取るだけの自信と実績がある者たちだ。


 そんな連中が狙う物となると、当然的も絞られて来る。



 (わざわざ哨戒の兵に見付かるようにチンタラ歩いて移動してたってのが、どうにも気になるトコだけど……)



 誘き出されてる、って可能性もある。


 というか、確率的にはかなり高い。


 けど、それを承知の上で、私は“包帯の男”を追っている。


 それ以外に、今は何も考えられないってのもあって……。


 涼子さんを殺し、多くの仲間達を殺し、ミミやカナに重傷を負わせ、私の大好きなこの王都を滅茶苦茶にしてくれたゲス野郎……。



 (許す理由なんざ、微塵もない)



 ブチ殺す。どんな手段を使ってでも、だ。


 私はただ、その一心で犯人を追っていた……。



 「―――っち? カスミっちってば!」


 「えっ?」



 カナに声をかけられ、ハッとする。


 どうやら、いろいろ考えてる内にボーっとしてしまっていたらしい。



 「また考え事してたニャ?」


 「あー……うん、ごめん。で、なに?」



 腰にしがみ付いたまま、カナが肩越しに私の顔色を窺っていた。


 ……近い。まぁ、馬上だから仕方ないんだけれど。


 でも、カナの方はその距離感を何とも思っていないみたいで、ジィーっと視線を合わせてきて。



 「気持ちは解るけど、あんまし“そっち側”に踏み込み過ぎたらダメニャ」


 「え……」


 「最近のカスミっちは、特にその気が強いニャ……。復讐とか報復とか、そういうのに囚われ過ぎると……戻ってこれニャくなるニャ」


 「カナ……?」



 なんだか妙に、その言葉には重みみたいな物があった。


 普段は明朗快活で、悩み事なんて無いみたいな彼女だから、そんな言葉が出て来るというのは、なんだか違和感ばかりを感じる。



 「ちょっと痩せた気もするニャ。……ココとか」


 「ちょっ、アンタ何処に手突っ込んでっ」



 鎧の隙間から手を入れ、私の腰やお腹の周りをサワサワと撫でるカナの手。


 くすぐったくて仕方ないんだけど、手綱を握ってるから手を放すワケにも行かず。



 「ストレスは身体に良くないニャ。ゴハンちゃんと食べてるニャ?」


 「た、食べてるって! ってかそこ関係な―――っ!?」



 お腹からヘソ、脇腹と撫でていたその手が不意に上の方へと移動してきて。



 「おや、ココだけは成長しているご様子ですニャ」


 「ど、ドコ触ってんのっ!」


 「フムフム……。こりゃあ毎晩揉まれてますニャ〜。お相手は、カズユキ殿ですかニャ〜?」


 「ばっ、揉まれてないわよ!」


 「ウソつくニャ〜♪」


 「ちょっ、やめっ、ヤメロォー!」



 手綱の所為で身動きが取れないのを良い事に、地肌を直接撫で回される。


 抵抗出来ない所為でカナの行為はドンドンエスカレートしていって。



 「ココか〜? ココがエエのんかぁ〜?」


 「だ、だから……っ、やめ……んっ!」


 「アレ……ニャんだろ、これ……何かに目覚めそうニャ……」


 「目覚めん……にゃぁ〜〜〜っ!」



 徐々にヤバイ事になりつつあり……。


 ってか、女同士って恐い。


 こう、イロイロお互い解ってるというか。



 「はぁ……っ、はぁ……っ、カスミっちぃ〜……っ」


 「お、落ち着けっ! 帰って来いってば! あ……っ、ちょっ、そっちダメっ」



 目がイッちゃってる!


 息を荒げながら上気した顔で、遂には内腿の付け根にまで手を伸ばして来たカナに、私はいよいよ我慢の限界が訪れ。



 「ええぃ、いい加減にせいッ!」


 「んぎゃっ!」



 手を離せないから、至近距離にあったカナのオデコに頭突きをかました。



 「な、なにするニャ!」


 「そりゃコッチのセリフだ処女ビッチ!」



 多分、カナなりに元気付けようとしてくれたんだろうけど……。


 その結果として、なんか踏み込んではいけない方向に片足突っ込んでしまった気がする。


 なんか、その……ちょっと。

 ちょーっとだけ、しっとりしちゃってるから……替えたい。



 「カスミっち、ちょっとグラーネちゃん止めて欲しいニャ」


 「は? あんでよ」


 「パンツ替えたいニャ」



 O☆MA★E☆MO☆KA!


 ってかド直球で恥ずかしげも無く言いやがったなコイツは!


 イカンイカン、冷静になれ……。



 「……まぁ、アレですニャ。踏み込み過ぎると……戻ってこれニャくニャるっていう……例えですニャ」


 「この上無く酷い例えだなっ!?」



 責めるような目で睨むと、カナは誤魔化し笑いを浮かべた。


 ただ、そうしている間にもグラーネはちゃんと前を向いて走ってくれていたようで。



 「ふしゅー! ふしゅー!」



 若干、鼻息荒いし、目が血走ってるような気がしないでもないけど。



 「見なかった事に……しよう」



 とりあえず、深呼吸。


 ココは一転、空気を換えるべきだろう。



 「―――ん、抜群なタイミングじゃん、梶浦さん」



 偶然にも、そのタイミングで胸元に仕舞い込んであったスマホが震えた。



 「ニャ? 新手の自慰―――」


 「話しを蒸し返すなっつーの!」



 スマホのバイブ機能を何だと思ってるのか、コイツは。


 ……まぁ、ちょっと敏感になってた所為で、イロイロアレがアレだったけど、敢えて言わない。


 今度からはインナーにポケットでも付けとこ……。



 「出ないのニャ?」


 「出るわよ!」



 誰の所為だ、と毒づきながら、とりあえずグラーネの足を止め、スマホを取り出して。



 「はいはーい、私よ」


 『あぁー良かった! 繋がりましたね!』



 どうやら、出るのが遅れ、ちょっと心配させてしまったらしい。



 「ゴメンね、ちょっと立て込んでて」


 『いえいえ、それで進捗状況の報告なんですが―――』



 私達がシェルターを出てから、既に小一時間が経過していた。


 その間に、梶浦さんは研究員の仲間達を集め、“例の作戦”を実行に移す為、下準備を進めてくれていた。


 で、それが思いの外上手く進んでいるらしく。



 『香澄さんが仰っていた通り、主要メンバーの方との通信はまだ復旧していません。ですが、コチラで無事が確認されている各シェルターとの連絡がつきました』



 実は、このスマホを渡されて直ぐ、ダイキ達に連絡を取ろうとしてみたんだけど、どういうワケか通信が繋がらなかったのだ。


 だから、その点は一先ず置いておいて、他の生存者達と連絡を取り合い、反抗作戦の算段を立てていたんだけれど。



 『色々と判りましたよ。設置されたフィルターのソースコードもですが、仕掛けた側のID情報や、所属グループに関しても』


 「え、そこまで……?」



 ジャミング……というか、フィルターのソースコードについては予測出来ていたけど、相手側のID情報や所属グループまで判るなんて……。



 (相手はバカか? いや、それとも……)



 当然プロテクトはかかっていた筈だ。

 それを解除した上、情報を抜き出した梶浦さんの手腕を褒めるべきか。


 でも、そこまで読まれた上で、利用されてるなんて可能性も無いとは言い切れない。


 ジャミングツールにわざわざ署名する、なんてバカな事をする人間が居るとはちょっと思えない。ってのが私の感想。



 「ねぇ、梶浦さん。ジャミングツールのプロテクト、強度はどの程度だった?」


 『かなり堅固な物でした。こういう言い方はあまりしたくは無いんですが、私で無ければ恐らく突破は難しかったのではないかと。……しかし、どうしてそんな事を?』


 「ふむ……」



 梶浦さんがかなりやり手だって事はもう十分に把握してる。


 そもそも、元アドバンスドブレインのメンバーは下級研究員でも世界レベルで通用する技術者達だ。


 その中でも上位の実力を持つ梶浦さんに“堅固だった”と言わせる程のプロテクトが掛けられた情報だったワケだ。


 なら、考え過ぎか……?


 それ程強固なプロテクトを掛けた情報が“盗ませる為”に用意された情報とは考え難い。



 (杞憂であれば、それでいい。でも……)



 私はもう、間違えるワケには行かない。


 念には念を。

 備え有れば憂い無し、だ。



 「引き出せた情報は全てコッチに回して。コッチでも精査する」


 『解りました。―――あ、それと、“例の作戦”についてなんですが、私は現場を離れられませんので、指揮権はグレイマン将軍に引き継いで頂きました。が……構わなかったでしょうか?』


 「え、将軍さん、無事だったんだ……! そっか、うん、大丈夫。あの人なら信用出来るわ」



 グレイマン将軍ってのは、エルフの四大大将の一人で、軍の最高幹部。


 軍議では何時も顔を合わせていた人物で、謙虚で誠実な人柄の信頼できる男だ。


 まぁ、若い女の子とか色仕掛けにめっぽう弱いっていう弱点もあるんだけど、それはそれで愛嬌というか。



 「将軍さんに伝えておいて。この作戦は“速さ”が命。各シェルター間の情報共有を密に、無駄無く的確に、って」


 『お伝えしておきます』



 梶浦さんの判断は正解だ。


 陣頭指揮を執るなら、当然軍部の高官に任せた方が成功率が高い。


 実績や信用って物もあるからね。


 後は、私達がどれだけ上手く動けるかに掛かってるワケだけど……。



 『それでは、そちらの端末にデータを転送します』



 と、梶浦さんから送られて来たデータフォルダを展開し、中身を確認して……私は、自分の顔が見る間に引き攣るのを感じた。



 「―――“マーシアハ”って……」



 IDネーム、“マーシアハ”。


 その名前、というより、単語が持つ意味に、私はイヤな物を感じずには居られなかった。


 マーシアハとは、ヘブライ語で“油を塗られた者”を意味する言葉。


 より解り易く、馴染み深い言葉にすると、“メシア”。または英語読みで“メサイア”。


 日本語にするなら、“救世主”だ。



 (PYOみたいな世界じゃ、救世主なんて単語をキャラクター名に使うのも別に珍しいこっちゃなかったけどさ……)



 タイミングがタイミングだ。


 それに、所属するギルド名がまた酷い。



 「“トゥニクの使徒”……」



 “トゥニク”ってのは、ある宗教団体が崇める聖典の名だ。


 そして、そのトゥニクを聖典とする教団は、世界にたった一つ……。



 「……“デネフ教”かよ」



 こんな戦いをしていれば、何時かはブチ当たる相手だと思っていたけれど、まさかこうも早い段階でその名を目にする事になるとは思わなかった。


 騙りや冗談の類じゃない。


 確定はしないけど、事実なら腹を括らなければならない。


 コイツらは、そういう手合いだ。



 「―――カナ、状況が変わった。急ぐわよ」


 「ニャ? 急にどうしたのニャ」



 通話してる間、グラーネと遊んでいたカナに声をかけ、スマホを再び胸の谷間に押し込んで。



 「今回の一件、裏で手薬煉引いてる連中は、かなりヤバイ奴らっぽい」


 「ヤバイ……ニャ?」



 グラーネの鐙に足をかけ、その背に飛び乗り、手綱を握りながら。



 「子供に爆弾抱えさせて特攻させるような、クソ以下のテロリスト集団って事」


 「……っ!?」



 カナの顔が一瞬で蒼褪める。


 それもその筈。

 カナだって見た事がある筈なんだ。


 私達がPYOで世界中のプレイヤーたちとネトゲライフを楽しんでるその時に、突然ネットニュースを騒がせた中東の内紛を映す一連の動画を。



 「マジ……ニャの?」


 「コレ、アンタも見ておくとイイ。―――確定じゃないけど、個人の悪戯にしちゃ質が悪過ぎる。十中八九間違いないわ」 



 私は梶浦さんから預かったデータをカナにも転送し、彼女がそれに目を通しているのを背後で感じながら考える。


 神の尖兵を名乗り、現世で神の意思を代行する。


 神の教えは絶対であり、それは何物にも優先され、全ての行いが神の名の下に赦される。


 大儀を謳って略奪し、蹂躙し、隷属させ、強姦し、殺戮する狂信者共。


 “トゥニクの使徒”って組織は、そういう連中だ。



 「ガーディアンモドキと包帯の男。それに、トゥニクの使徒……。結局、邪魔してくれるのは何時だって人間の脆弱性って事ね……」



 ロシアも、日本も、アメリカもそうだった。


 神に救いを求めるのも、金や権力に縋るのも、全ては人の“脆弱性”に起因している。


 死ぬのが怖いから、死んだ先に救いを求め。

 理不尽な不幸を恐れるから、未知の存在に祈りを捧げる。


 痛いのも、苦しいのもイヤだ。

 逃げ出したいのに逃げられない。


 だから、極力自分は不幸にならないように、より大きな富と権力と武力を求めるようになる。


 最初がどんなに崇高な想いで描かれた理想の形であったとしても、人はそうやってその崇高な理念を歪めて行く。


 全ては、“弱さ”故。



 「だから、“神の赦し”なんて甘い言葉ほど恐ろしい物はないんだ……ッ」



 それが人間って生き物で、そうでなければ今の私達は存在しなかった。


 今更、それを変える事は出来ないし、変えられたとしてもその瞬間に人は人でなくなる。


 だから、せめて強くあろうとして欲しい。


 エルフ達がそう在るように。


 でも、そう出来ない者達が居るのなら……。



 (私は、そいつらを排除する)



 何故なら、私も“人間”だから。


 恐いんだ。そういう歪んだ人間達が。


 そういう歪みが、私の大切な者を奪って行くから。



 「―――もう、滅ぼすしかない」



 そう呟き、私はグラーネの腹を蹴る。


 疾駆するその背で風に打たれるけど、カナの耳にも僅かに声が届いてしまったようで。



 「何か言ったーっ?」



 「ううん、なんでもない!」



 首を傾げるカナに、私は私の発言を否定し、グラーネを走らせる事に意識を傾けた。


 どうせ、この想いはカナには理解して貰えない。


 だって彼女は優しいし、私のように同族に対してまで非情にはなれない子だから。


 でも、そんな彼女だからこそ、私は彼女の仲間でありたいと望んでる。


 彼女たちに出来ない事は、私がしなければいけない。―――例え、嫌われたとしても、だ。


 ―――駆ける。駆ける。駆ける。


 只管にグラーネを走らせ、淡々と先を急ぐ。


 そうでもしなければ、不安で心臓が圧し潰されてしまいそうだったから。



 (涼子さんをあんな風にした連中だ……。いくらダイキや他の副団長クラスがアバターラの中で飛び抜けて優秀だっていっても……)



 私は、例の中東の内紛の様子を映した一連の動画の中で見た光景を思い出していた。


 捕虜として捉えた敵兵や、他国のメディア関係者、他にも地元で反逆行為を行ったという女子供、老人たちを処刑するシーンだった。


 斬首や火炙り、生きたまま全身を切り刻まれ、挙句その辺の道路にポイと捨てられる人間だった物の残骸。


 抵抗出来ない相手を一方的に嬲り殺しにし、連中は平然と嗤って言うのだ。



 ―――“全ては、主の思し召しである”―――



 私だって、この国の為に似たような事をした。


 けど、私と連中とでは根本的な部分でその行いに違いがある。


 私は好きで人殺しをやってるワケではないし、殺しその物を愉しんでいるワケでもない。


 言い訳するつもりなんて微塵もなくて、それが人道的に外れた行為だと解ってやっている。


 ただ、そうしなければ多くを救えない。守れない。


 時間が無くて、他に選択の余地が無いから合理的な考えに基づいてやって来た事だ。


 ある意味、連中より質が悪いと言えばそうなのかも知れないけど……。


 私の中の価値観と照らし合わせるなら、ノーマルよりもエルフ達が大事なのだ。


 だから、エルフの為に他を犠牲にする事を厭わない。


 だから、私はノーマルと呼んで彼らを選別し、その中で生かす価値の低い物から順に切り落としている。


 それが私の、人間を殺戮する動機。


 何処の国の指導者でも皆がそうして命の重さを秤にかけ、そうして間引いて答えを出して来た筈だ。


 だから、彼らが主の為にと偽って自己の快楽の為に人を殺すのとはワケが違う。


 連中は、それが神の意思だと言って譲らないんだろうけど。



 (殺しに理由を求めちゃいけないのは、前線の兵士だけだ。上に立つ人間は、秤にかけて人を間引かなければ、組織を守れない……)



 人類皆平等なんて言葉、糞喰らえだ。


 人の価値は、その人格と持てる技能に左右される。


 誰にとってどれだけ大事な人であったとしても、それはそれを大事にする人間の価値観に当てはめられただけの価値。


 全ての人間が、全ての人間を同じように評価しているとは限らない。


 それが、人間の価値ってものだと私は思ってる。


 だから、このまま奴らを放っておくワケにはいかない。


 放置すれば、奴らの価値観で私の価値ある仲間達が殺されるから。


 あんな惨い死に様を、私の仲間達に晒させるワケにはいかないんだ、絶対に。



 (だから、私は私のエゴで人を殺す。それを誰かに否定された所で、そんなの今更知った事か……!)



 それで私の大切な人たちを守れるのなら、悪魔だろうが鬼人だろうが、何にでもなってやる。


 これが、ようやく気付きだした、私の戦う理由だった。

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