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Master Code  作者: 覇牙 暁
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第六十四話

第六十四話「通信手段」





 炎上する王都の土を踏み締め、歩き続けること10分余り。


 今回の襲撃に関する可能な限りの情報をカナから聞き、大凡の事態を把握した。


 騎士団及び一部準戦力民兵の奮戦により、エルフや人間達の大部分は辛うじて避難に成功しているらしい。


 とはいえ、この有様だ。

 数万人規模の犠牲者が出ているのは確実だろう。


 だが、民が生きて逃げ延びているのなら、この国はまだやり直せる。


 王都の物理的な損害は数字で見たいとは思わないけど、それでも壊れた物はまた作り直せば良い。


 ただ、その為には。



 「……脅威は、排除せねばならない」



 カナの報告にあったガーディアンモドキと、包帯の男。


 今は、その二つの排除を最優先とする。


 しかし、たった二人でこの広い王都を探した所で、そう成果が上がる筈もなく。


 私は一先ず、避難民が集まっているという地下シェルターへと足を向ける事にした。



 「いざって時の為に用意させた物だけど……まさか、本当に役に立つ日が来るとはね」


 「カスミっちの指示通り、備蓄も十分に確保してるニャ。仮設住居の代わりとしても使えるように作らせた、カスミっちの先見の明には恐れ入るニャ」


 「喜べるような話しでもないっての。あんなもの、使わないに越した事ないんだから」



 歩きながら会話を交わす中、ようやくカナにも何時もの調子が戻ってきたらしい。



 「―――此処からだと、ゼビュロス二番シェルターが近いか」



 王都西方の第二区画に建造したシェルターだ。


 聞いた情報通りだと、その辺りは比較的被害も少なかったって話しだけど……。



 「……これでも、“被害が少ない方”なのね」



 カナと共に辿り着いたその場所は、軒並み建築物が倒壊し、大勢のエルフ達の遺体がそのまま野晒しにされている場所だった。



 「生存者は……探すだけ、無駄か……」



 此処は、住宅街だった場所だ。


 道幅もそれ程広くなく、何時もなら奥さん方の駄弁り場と化していた辺り。


 けど、今は見る影もない。


 狭い道の至る所で、エルフ達の遺体が散乱している。


 どれもこれも、ロクな死に方をしちゃいなかった。


 壁に叩き付けられ、破裂した遺体。


 バラバラでどれが誰の物かも判らないような遺体。


 相当強い力で殴り付けられたのだろう、と容易に想像できる物ばかりだった。



 「……チッ、こんなの、人の死に方じゃないでしょうが……ッ」


 「カスミっち……」



 都心部の焼け爛れた遺体の方が、まだ幾分かマシに見える。


 それ程の有様だった。



 「行こう、此処で悔やんでも、先へは進めないニャ」


 「……解ってる。シェルターの入り口は、直ぐそこよ……」



 ガーディアンモドキへの怒りを更に燻ぶらせながら、私はその熱量を無理矢理腹の底へと沈め、再び歩き出した。


 そうして辿り着いたのは、住宅街の外れにある小さな目立たない神殿の入り口。


 この辺りに住むエルフ達にとっては憩いの場として利用されていた建物だけど、その奥には頑強なミスリル製の扉と地下へと続く階段が存在する。


 此処に、避難民の一部が集まっている筈だ。


 ―――その証拠に。



 「―――ひ、姫様……!? それに、聖女様も……!!」


 「よくぞ……よくぞご無事で……!」



 扉の前には、エルフの騎士が二人。


 危険を承知で、衛兵を買って出てくれたのだろう。



 「アンタ達が、ココの人達を守ってくれてたのね……。ありがとう、国王に成り代わり、感謝を……」


 「そ、そのような勿体なきお言葉! 我々は、ただ当然の義務を果たしているに過ぎません」



 簡単に人の命が失われてしまうこんな場所で、己の命が掛かっているその惨状を前に、そんな当たり前の義務を果たせる人間がこの世界にいったいどれだけいる事か。


 通信もロクに使えないような状況だ。


 上からの指示や命令なんて物も無かったに違いない。


 つまり彼らは、自発的に率先し、この場に立ってくれているのだ。


 私は、彼らのような人が居るからこそ、エルフを好きになれた。



 「ごめんなさいね……。私たち王族が不甲斐ないばかりに、貴方たちに苦労ばかりかけて……」


 「め、滅相も無い! 殿下や王族の方々が我ら民草の為にとどれほど粉身して下さっているか、我々は重々に存じております! どうか、ご自分をお責めにならず、頭をお上げ下さい……!」



 そんな彼らに、今の私は頭を下げるくらいの事しか出来ない。


 自分の思慮の浅さに嫌気がさす。



 「カスミっち、そういうのも大事だとは思うけど、今は」


 「あ……そ、そうね」



 涼子さんの事が頭を過り、つい後悔の念に囚われかけてしまった所をカナに咎められた。


 少し、冷静にならなければ……。



 「迷惑ついで、ってワケじゃないんだけど、ちょっと話しを聞かせて欲しいの。お願いできる?」


 「現状の把握に情報が欲しい、といった所でしょうか?」



 なかなかに聡い騎士だ。

 どうやら語るまでもなく、状況を理解してくれているらしい。


 私とカナは二人でその答えに頷き、立ち話もなんだからっていう彼らの案内で場所を移した。



 「どうぞ、むさ苦しい所で申し訳ありませんが、お掛けになって下さい」



 通されたのは、地下シェルターの一室。


 此処は本来、護衛の騎士や兵達が詰める為の場所らしく、飾り気の無いコンクリート製のそれなりに広い部屋で、設備もそこそこ整えられているようだった。


 そんな中、簡素な折り畳みテーブルを挟んでパイプ椅子に座り、私達は彼らから可能な限りの情報を手に入れる為、粛々と話しを始めた。



 「―――そんな、神官長様が……」


 「この件は、まだ内密にお願い。今のこの状況で、これ以上民を混乱させたくはないから……」


 「そう、ですね……。では、そのように」



 コチラからの情報に、彼は驚きつつも何かを思案している様子で首を傾げ。



 「どうかした?」


 「あぁ、いえ。実はつい先ほど、見回りに出ていた者から単身で都内を徘徊する人間を見たという報告を受けたもので。位置関係から察するに、神官長様の一件と何か関係があるのでは、と……」


 「ッ! どんな奴だった!?」



 思わず掴み掛りそうな勢いだった私をカナがその手で制し。



 「ちょっ、落ち着いてってカスミっち!」


 「ご、ごめん……」



 焦りは禁物だと解っているっていうのに。



 「い、いえ……。それで、容姿に関してなのですが、どうにも不気味ないでたちをしており、声をかけるのも憚られる程だった、と」


 「不気味、ってーと?」



 私の代わりに尋ねたカナに、彼は。



 「黒いフードを深く被り、血塗れの包帯で全身を覆った長身の男だった、と」



 その答えに私とカナは顔を見合わせ、お互いに確信する。


 間違いない。そいつが涼子さんやカナ達をやった相手だ。



 「そいつがどっちに向かったかは判る!?」


 「報告の通りであれば、カイキアス方面。ユグドラシルを回り込むように移動しているようだったと聞いております」



 カイキアス……って事は、北東。


 そこからユグドラシルを回り込むように移動している。


 何が目的かまでは解らないけど、追い掛ける為の情報としては既に十分だ。


 私は直ぐに席を立ち、カナへ目配せをして。



 「―――追う、のですね」


 「ええ、そいつが犯人と見てほぼ間違いない。それに……」



 私の勘が告げていた。



 「そいつの向かった先に、きっとダイキ達も居る」


 「解りました。で、あれば、少しお待ち頂けませんか?」


 「余り時間が無いんだけど……」


 「理解しております。その上で、どうか」



 私はまたカナと顔を見合わせ、僅かに考えて。



 「解った。でも、どうして?」



 尋ねた私に、騎士の彼は別の騎士に目配せをしたようで。


 その騎士が部屋を出て行くのと同時、視線を私に戻し、そして。



 「会って頂きたい者が居りまして」


 「私に?」


 「ハ……。神殿にて研究職に就いて居たという者で、名前を“カジウラ”と」



 その名前に、私は聞き覚えがあった。


 確か、松岡さんの下で働いている研究員で、UEPネットワークを利用した通信システムなんかの開発に携わっていた人物だ。


 私とは殆ど面識の無い人だった筈だけど、そんな人が私に一体何の用があるというのか。


 まさか、松岡さんの身にまで何かあったのでは、と考え、寒気を感じてしまって。



 「カスミっち?」


 「あ、あぁ……ごめん。なんだっけ」



 ぼうっと考え事をしていた私を、カナが心配そうに見詰める。


 ―――いや、確かにこれじゃ、頼り無いにも程があるという物だろう。


 カナや仲間達を一瞬であんな風にした相手と戦う事になるかも知れないって時に。


 私は一度頭を振り、余計な思考を追い出した。



 「大丈夫。心配ばっかさせて、ごめん」


 「それくらいイイって。むしろ、シンドかったら、ちゃんと言葉にしてくれたってイイ。友達ニャんだから」


 「フッ……ありがと」



 そうこうしている内、件の研究員が騎士に連れられ、詰所にやって来た。


 で、顔を合わせたんだけど……。



 「お久しぶりです。香澄さん」


 「あ……アンタだったの、梶浦さんって……」



 名前と顔が上手く一致していなかったようで、彼の顔を見て初めて私はハッとした。



 「あはは……やっぱり名前、忘れられてましたか……」


 「あ、あーいや、違うの! そーじゃなくて〜……その」



 やらかした。


 この人、実はワリとしょっちゅう顔を合わせてた人だった。


 松岡さんとの通信の際や、研究所で対応をしてくれてた人で、確かに最初、“梶浦 光一”と名乗っていたのを思い出した。


 最近も伝言を頼まれたとかで、一度通信を介してモニター越しに話しをした事のある人だ。



 「ごめん……」


 「いえ、いいんですよ。ボクはこう……影薄いですしね。仲間内でも、霧みたいだからって、ミスト〇ーン様とか呼ばれてたくらいですし……」


 「カスミっち、何気に酷いニャ……」


 「ご、ごめん! ごめんて!」



 うーわ、めっちゃ落ち込んでる!


 ってか、ミスト〇ーンとかまた懐かしいネタを引っ張り出して来たわね……。



 「い、イイじゃんミスト〇ーン! かっこいいじゃん! あらゆる物理攻撃無効だよ!」


 「すみません。ボク、原作知らないんですよ……」


 「…………」



 やっちまったな、私!



 「カスミっち、相変わらずヲタいニャ〜」


 「アンタに言われたかないわよ!」



 ニヨニヨ見詰めてくるカナの視線が痛い!



 「あ、あの、それで……ですね」


 「あ、うん。なに?」


 「コレをお渡ししておこうと」



 彼が私とカナに手渡したのは、スマホよりも小さな折り畳み式の個人端末だった。


 ただ、現状は何かしらの方法でUEPネットワークにジャミングが掛けられている。


 こんな物を今渡されても使えないと思うんだけど……と、私はそう考えていたのだが。



 「コレは?」


 「今現在、通信が一切行えない事は、お二方も確認されていると思うんですが、それはUEPネットワーク上の中継点に何者かがフィルターのような物を仕掛けている所為なんです」


 「フィルターって……あのジャミングみたいな物の事?」


 「はい。この端末は、そのフィルター越しにでも通信を行えるよう中継点をコレ自体が担う機能を持っていまして、フィルターによる障害の影響を受けず、UEPネットワークを通して直接情報伝達を行えるように改良した物なんです」


 「え゛っ!?」



 要は、コレがあればジャミングが効いてる今の状況でも通信が可能になるって事で。



 「此処に対象者のID情報を登録すれば、直ぐにでも使える筈です」


 「ちょ、待って。ジャミングが発生したのって、今日の昼過ぎからよね? この短時間で、アンタコレを……?」


 「はい。余り時間が無かったので、既存の機種を改造した急造品になってしまって、とても申し訳ないんですが……」



 まってまってまって。この人メッチャ有能じゃん!!


 私は思わず彼の手を取り、ブンブン振り回して。



 「名前忘れててゴメン! もう絶対忘れないから! アンタ、超有能! 良くやってくれたわ!」


 「ぇえっ!? あ、あのぉおおっ!?」



 一通り振り回してから着地させ、もう一度しっかりと彼の手を掴み。



 「ミスト〇ーンの名前も伊達じゃなかったって事ね!」


 「ど、どういう事でしょう!?」


 「コイツがあれば、全部解決って事! これ片付いたら、必ずなんかご褒美あげるから!」


 「は、はいぃ!?」



 コレは予想外の収獲だ。


 コレがあれば、本当に今ある問題の大部分が片付く事になる。


 彼は研究員で、開発者で、飽くまでもコレを私が持っていれば、現状だと便利だろうな、くらいの気持ちで用意してくれたんだろうけど。


 コイツの価値はその程度じゃ収まらない。



 「カスミっち、どしたの? そんな喜んで……」


 「何言ってんのカナ! コレつまり、接続障害で使用不能になってるUEPネットワークに強引に割り込めるツールって事よ!?」


 「う、うん?」


 「だぁかぁらぁ! 噛み砕いて言うと、関所で門前払いされた街道を裏道使って抜けようって事!」


 「ニャ、ニャア? ……?」



 あ、久々に見た、このアホの子特有の猫面。


 これ解ってない顔だわ。



 「えーっと、つまりね? ネットワーク接続その物を拒否されてた訳だけど、接続が可能なら出来る事はイロイロあるの。一時的な遠隔通信だけじゃなくて、仕掛けられたそのフィルター自体のソースコード解析も可能って事で―――」



 と、そう言い掛けた所で、梶浦さんは気付いたらしい。



 「そ、そうか……! 気付かなかった……!」


 「そうそう! コレがあれば、私の作ったツールも使える筈よ!」


 「確かに、あのクラッキングツールを使えば解析も可能だ。結果次第では直ぐにでも根本的なネットワーク通信の復旧が見込めるし、そうなれば……」


 「情報管理と統制を一括出来るし、各地で散り散りになってる部隊の再編成も可能。その上、今あるジャミングツール自体を逆手に取って相手に一泡吹かせてやる事だって出来るわ!」


 「なるほど……その手があった!」



 私と研究員が大盛り上がりしてる横で、騎士達とカナはポカンと顔を見合わせ。



 「あ、あの、聖女様……。あのお二人は、いったい何をお話して……?」


 「ニャ〜、きっとアレニャ、神々の言語ニャ。ニャー達には解らニャい次元の話しをしているのニャ」


 「や、やはり! 流石はエインヘリャルを率いる我らがアールヴヘイムの姫殿下だ……。我々凡人には出来ない事を容易くやって除ける!」


 「そこに痺れる! 憧れるのニャ!」



 なんか、向こうは向こうで盛り上がっていた。



 「―――とりあえず、今言った通りで進めて。で、何か進捗があれば、コレで連絡を」


 「解りました。他の研究員達も集め、直ぐにでも対応させます」


 「お願い。……それじゃ、私達はもう出るわ。急ぎで追わなきゃならない奴もいるからね」


 「はい、どうか、お気を付けて!」



 私とカナは現状最強の武器を引っ提げ、シェルターを後にした。


 再び、視界に映るのは焼け野原に変わり果てた都。


 私は久しぶりにインベントリから“あの子”を召喚する。



 「さぁ、久しぶりにアンタの出番よ! 出て来なさい、“グラーネ”!」



 騎乗用アイテム。私の愛馬。


 伝説級名馬グラーネだ。


 青白い炎を纏い、鋭い嘶きを上げて地に降り立ったグラーネは、まるで久々の再会を喜んでいるように首を竦め、私に頬擦りをする。



 「おーよしよし……。元気にしてたか? ってのも変だけど……随分長いこと呼んで上げられなくて悪かったわね」



 その大きな頭を抱えて首を撫でてやると、グラーネは嬉しそうに鼻を鳴らした。



 「おー……、コレがカスミっちのグラーネちゃんかぁ〜……。でっかいニャ〜」



 自分の身長より遥かに高い位置にあるグラーネの顔を見上げ、感嘆の声を漏らすカナ。


 で、不思議に思い。



 「あれ、アンタってこの子見るの初めて?」


 「うん、アタシってば回復魔術に全振りだから、ソロじゃニャーと攻略出来ない高難度クエの報酬って一つも持ってニャーのよー」


 「え、じゃあ騎乗用アイテムって何使ってんの?」


 「ムム! それ聞いちゃう? 聞いちゃいますかニャ!?」



 思わせ振りな態度でインベントリを開き、カナが召喚したのは……。



 「出て来るのニャ! アタシのイチバンのシモベ!」



 天高く掲げる手。


 直後、地面に巨大な紋様が浮かび上がり、岩盤を打ち砕いて地の底から這い出して来た巨体。


 その威容は―――。



 「……猫?」



 まるで、猫。っていうか、猫〇ス。



 「見るがイイニャ! コレがアタシのシモベ、“しんしあちゃん”ニャのニャ!」


 「うん、それしまって。版権とかイロイロ煩く言われそうだから」


 「ニャんですと!?」



 どっからどう見ても、ただの猫〇スだ。


 いや、厳密に言うと、それっぽいペイントが施された、足の生えてるハイ〇ースみたいな感じだけど。



 「これ入手にめっちゃ苦労したのニャ! そんなぞんざいに扱わないで欲しいのニャ!」


 「はいはい、大変だったねー。しまっちゃおうねー」


 「ニャアアアッ!!」



 GM権限でその“しんしあちゃん”を強制送還。


 まさか、GM権限をGM相手に行使する事になるとは思わなかったわ……。



 「ぬぅおおおぅぅいっ! しんしあちゃぁ〜〜〜ん!」


 「つか、あんなバカデカイ騎乗用アイテム使ったら、相手にコッチの居場所がバレちゃうでしょうが。バカなの? 死ぬの?」


 「返せ! アタシのしんしあちゃんを返せ!」


 「却下よ」


 「ぬぅおおおぅぅいっ!」



 ヒロインにあるまじき鳴き声で尚も縋り付くカナに、仕方なく“しんしあちゃん”を返すけど。



 「とりあえず、しんしあちゃん禁止。アンタも一緒にコッチ乗せてあげるから」


 「なんでじゃあ〜! なんでしんしあちゃんはアカンのんじゃあ〜!」


 「言ったでしょ、デカ過ぎんの。つかアレ、パーティー用でしょう。使い処考えなさいって」



 と、諭すも、グラーネに跨りながらまだグチグチ言ってるから。



 「はーい、出発しまーす。喋ってると舌噛むわよー」


 「カスミっちは、しんしあちゃんの可愛らしさが判ってないニャ。そんニャだからアタシみたいに一般男性ユーザーからモテニャギニャッ!」



 構わず発進。一応注意はしたからね。


 舌噛んだみたいだけど、仕方ないね。



 「ふごごふご! ふごふごふごご!(舌噛んだニャ! チャームポイントの八重歯がグッサリニャ!)」


 「知らぬ!」



 私はグラーネの腹を蹴り、速度を更に上げ。



 「ニ゛ャアアアアァァァァァ―――ッ!!」



 神馬モードの速度で廃墟と化した都を駆け抜ける。


 背後のカナは必死に私にしがみ付き、何やら奇声を発しているけど、後ろを振り向く事は出来ない。


 何故なら、私もカナも、今やヒロインにあるまじき顔になっているからだ。



 「「ひぃぃーぎゃあああああっ!」」

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