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Master Code  作者: 覇牙 暁
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第四十五話

第四十五話「囚われの操り人形」




 「―――それ、本気で言ってんの?」



 そう答えたのは、香澄。


 札幌駐屯地のミーティングルームを借りて行われていた、第301保安警務中隊とアールヴヘイム第一近衛騎士団による合同ミーティング内で発せられた物だった。


 折り畳み式長机を前に両陣営に分かれて対面式で協議が行われていたのだが、それは余りにも一方的な申し出であり。



 「恥を承知で申し上げたつもりです。我々は、防衛大臣直轄の警務隊。下手に動けば国家反逆罪と取られ、処罰は免れない。それは……此処の避難所を、市民を見捨てる事と同義です……」



 頭を下げ、香澄に嘆願したのは、北部方面総監部幕僚長兼駐屯地司令『金守かなもり 雄二ゆうじ』1等陸佐。


 彼が香澄に願い出たのは、現在内閣府庁舎に囚われている“コッペリア”の救出だった。


 緊急の特例で先任者から現在の地位を引き継いだ彼は、正規の手続きを踏んだ司令官ではない。

 しかし、普段から柔和な笑みを絶やす事が無く、また部下への心遣いが細やかで人柄が誠実な為、人望も厚い。


 そんな彼が、渋面を浮かべて年下の女性に頭を下げる。

 そうしてまでも助け出したい。そういう相手なのだろう。



 「結局、自衛隊も軍隊と変わんないわね……。国を守る為の規律が、こうやって足枷になってんだからさ……」


 「耳が痛いな……まったく」



 答え、金守は肩を落とした。


 事の発端は、つい先ほど。

 コッペリアという名の少女が内閣府庁舎に囚われている、という情報が外部から齎された事による。


 香澄にとっても、彼等にとっても、それは予想していた事だった。



 「救出自体はさ、別にいいのよ。私にとっても、必要な事だからね。けど、その後彼女をどうするかは、相手の出方次第。此処に戻ってくる保障は無いわよ?」


 「―――解って居ます。だから、貴女に一つ、提案がある」


 「提案?」


 「はい。コレは、前々から考えていた事ですが、私は今の自衛隊という組織には変革が必要だと感じていました。上層部の腐敗は政治の世界だけでなく、自衛隊という組織にとっても根深い問題となっている。今のままでは、この国を守るという自衛隊の本分を全う出来ない。そう思うのです」



 瞬間、香澄は鼻を鳴らし、嗤った。



 「な〜る。つまりアレだ。コッペリアを救出してくれるなら、自分を含む同士以下全員引き連れて、アンタはアールヴヘイムの軍門に下る。だから、その代わりに、この土地に住む民間人の安全を保障してくれ、と」


 「ご慧眼、恐れ入る」



 これは、彼の立場を考えれば悪い話しではない。と、香澄は思った。


 実の所、北海道は土地が広い事もあり、北部方面隊は自衛隊が有する戦力の大半を管理運用している。


 そして、彼の地位は幕僚長兼駐屯地司令。

 事実上、北部方面総監部のナンバー2だ。


 しかも、彼は人望が厚く、彼が説得に直接当たるなら他の自衛隊員や民間人達の意識改革も容易い。


 面倒な仕事が一気に減る事になる。



 「随分と気前がいいのね」


 「いいや、そうでもないよ。勿論、打算もあるんだ」


 「と、言うと?」


 「自衛隊の本分。それは、この国を守る事だ。君の側に付いたとしても、私はそれを曲げるつもりはない」


 「あぁ〜……、そういう事……」



 彼が何を言いたいのか、香澄には直ぐに分かった。


 腐り切った自衛隊とその上層部から、膿を出し切ってしまいたい、という訳だ。


 その結果、彼は自衛隊のトップに躍り出る事になり。



 「ふむ、それも悪くないかもね……」



 香澄はニンマリと笑みを浮かべ、金守も同様に。



 「腹、黒い……」


 「何時もの事でござるよ。何時もの」



 和幸は何か大切な物を諦めてしまった笑顔を浮かべ、シノは何故か納得してウンウンと頷く。



 「差し当たって、役割分担を決めておきましょうか」


 「先ずは情報収集、でございますね」


 「またシノ殿頼みになってしまうでござるなぁ」


 「悪いけど、しゃーないわ。ワシらにもワシらでやれる事はある」


 「陽動だな。後は、装備の調達か」


 「それは、コチラでもある程度用意させて貰うよ」


 「じゃ、お願い。そっちは……、任せる」



 ザックリと役割分担も決まり。


 そこから先、両者の行動は迅速だった。



 「100パー情報は漏れてんだから、急ぐわよー」


 「時は、金なり……」



 香澄達は駐屯地の敷地を借りて装備や資材を搬入し、自衛官らは避難民の意識改革に全力を尽くす。


 此処からは時間との勝負だ。


 コチラの行動を読まれ、コッペリアの拘束場所が移されては堪った物ではなかったし、彼女が帰還後、自衛隊は即座に日本政府から反旗を翻す手筈になっている。


 その為には勿論避難民らの了承も必要であるし、避難民が了承しているならコッペリアがこの決断に難色を示した際、説得材料になるからだ。


 敷地内の格納庫を借り、飛行揚陸艇“シュヴェルト・フリューゲル”へ装備や物資を運び込んだ香澄達は、戦力を二分し、直ぐに出発する。



 「カズ、毎度悪いけど、コッチはお願いね」


 「解ってるでござるよ、カスミ殿も気を付けて行ってくるでござる」



 駐屯地側の防衛及び陽動役には、和幸、ロディア、カガラの三名。


 コッペリア救出に向かうのは、香澄、シノ、イライザ、そして中継役のリヴァルト。


 目的地は内閣府庁舎。


 その場に残る者達に見送られ、飛行揚陸艇は四人を乗せて直ぐに駐屯地を飛び立つのだった。



 「庁舎の正確な位置は?」


 「既にナビへ入力済みです。比較的安全なルートを自動で割り出してくれるとの事で、オートパイロットに切り替えて頂ければ、後は待つだけですね」


 「OK、じゃその間に作戦会議と行きましょ」


 「了、解……」



 香澄は操縦席からナビゲーションシステムを操作し、揚陸艇の操縦をオートパイロットへと変更。


 座席を回転させ、後ろ側の二人と座ったままで対面する。



 「最重要目標は、コッペリアの救出。此処に変更は無し。けど、予定は少し変更よ」


 「と、申されますと?」



 香澄の話しにリヴァルトは首を傾げる。


 当初の予定では、現地に到着し次第、シノが先行して情報収集に当たるという話しだったのだが。



 「庁舎内なんだけど、ご丁寧に建設時の設計図がネット上で配布されててね。別途載せられてた現在の案内図と照らし合わせた結果、地下施設への大凡の侵入ルートが割り出せたのよ」


 「なるほど。では調査の必要はない、という事ですか」


 「そういう事。ついでに、シノが事前に調べを付けて置いてくれたコッチ側に付いてるアバターラの情報も判明したから、その配置も考慮して、電撃戦に切り替える事にしたわ」


 「つまり、直接乗り込んで一気に地下まで制圧する、と?」


 「ええ、ただし、庁舎に駐屯してるアバターラは三名。残りは恐らく、駐屯地へ向かってると思う」


 「それは……マズイのでは?」


 「だから、電撃戦なのよ。まぁ、シノの情報が確かなら、到底あの三人に太刀打ち出来る戦力じゃないと思うけど」



 リヴァルトとイライザは顔を見合わせ、頭を捻るが。


 香澄には、そう断言出来る十分な理由があった。



 (カズは勿論、カガラとロディーを騎士団員に選んだ理由……。あの二人、レイドボス並のステータスだからね……)



 その具体的な強さは、と言うと。



 「カガラとロディー、あの二人って、実数値で見ると、上位クラスの高レベルアバターラ15人でもギリギリ勝てるかどうかってステータスなのよ」


 「アバターラ、15人分……ですか!?」


 「そ、ちなみに、イライザ、アンタは同等のクラスのアバターラ5人分に相当する戦力がある。リヴァルトも同じくらいね」


 「な、なんと……自分に、それ程の力が!」


 「そのような事までお分かりになるとは……流石、姫様です」



 と、イライザは感嘆の声を上げるが、香澄は何となく気まずくなり、苦笑する。


 実際には、香澄自身の能力でも何でもなく、GM権限で本来は表示不可のデータをデバックモードで強制的に展開しているだけなのだ。



 「上位クラスの高レベルアバターラっていうと……例えば、チヒロやシバタ、ヒデアキくらいのクラスね。あのレベルの連中は、コッチにはそう残ってないのよ」


 「それが、15人で小隊を……と、なると、正直ゾッとしますね」


 「でしょ? 人間の軍隊なら、一個師団ブチ込んでも勝てるかどうかって次元なのよ」



 とはいえ、と香澄は内心の不安を拭い切れずにいる。その理由は。



 (低ランクのアバターラでも、オーバードライブ……。ううん、オーバーリミットを使うような相手が現れた時は、その指針がアテにならないってのが恐いトコなのよね……)



 香澄も使うあの能力。


 思い込みの強さでアバターラの力は大きく変化してしまう。


 ステータスの値だけが全てではないと、今の彼女は知っていたからだ。


 ただ、それ程の能力者がそう居るとは思えないのだが。



 「ま、向こうは心配いらないわ。それより、コッチの侵入経路なんだけど―――」



 人間側の常識を考慮した敵陣の配置図を作り、そこから最も考え難い侵入経路を考案した香澄は。



 「これはまた……大胆、というか、無茶苦茶というか……」


 「何よ、不満? リヴァルト」


 「いえいえ、滅相もない! ただまぁ、何時もの破天荒な殿下らしく、安心した次第にございますよ」


 「褒めてんのか貶されてんのか良く判んないわね、ったく……」



 カラカラと笑うリヴァルトをジト目で睨む。



 「姫……、そろそろ」


 「みたいね。じゃ、リヴァルト、アンタは此処の通信機とタブレット使って、私らと駐屯地の繋ぎをお願いね」


 「了解です。お任せあれ」


 「イライザとシノは、私と同行。ただし、イライザには途中から別行動を取って貰う事になるわ」


 「駐屯戦力の攪乱、といった所でしょうか?」


 「ご名答。連中が指令室として使ってる部屋が何処かにある筈だから、私らが暴れてる隙にソレを探し出して、制圧して頂戴」


 「了解致しました」


 「シノは……言わなくても判ってるわね」


 「暴れる……。以上」


 「ん、それでOK。じゃあみんな、行くわよ!」


 「「応ッ!」」



 飛行揚陸艇は東京上空まで到達した所で飛行モードをステルスに変更。

 速度を急速に上げ、自衛隊のレーダー網に捕捉されるよりも早く、一気に内閣府庁舎まで近付き。



 「―――総員、降下開始!」


 「「降下開始!」」



 飛行揚陸艇の後部ハッチが開き、そこから香澄を先頭に真下に見える庁舎屋上へと飛び降りる三人。


 勿論、彼等の背にはパラシュートなんて物は無く。



 「……フローティングウィンドッ」



 降下中にそう唱えたのはイライザ。


 瞬間、落下する彼女の身体は真下から吹き付ける逆風に煽られ、急速に降下速度を下げつつ、まるで舞い落ちる木の葉のようにフワリと宙を漂った。



 「魔法って便利よねー……」


 「忍法も、便利」


 「なんでそこで変な対抗意識燃やしてんのよ、アンタは」


 「ニン、ニンッ」



 と、空中で直立姿勢のまま、両の手を重ねて印を結ぶシノ。



 「忍法……、ちょっとくらい、高いトコから落ちても、大丈夫。……の、術」



 言うや否や、彼女の周囲に何処からともなく現れた木の葉が舞い散り、その姿が虚空に消えた。


 それを見て、香澄は。



 「もうちょっと術の名前何とかしようか(汗)」



 何時の間にか着地して庁舎の屋上で手を振るシノを見下ろし。



 「そんじゃ―――いっちょ派手に行きましょうかッ!」



 空中で握り拳を固め、その手の甲で黒鎖を変化。



 「ヴァリアブルデコード、モード“黒狼甲”ッ!!」



 引き絞ったその拳を、着地と同時に庁舎屋上へと叩き付けるのだった。そして―――爆轟が響いた。



 「ぐああああああああっ!!」


 「な、なんだっ!?」


 「急に、天井がっ!」



 まさに、急襲。


 庁舎内部で防備を固めようとしていた黒服達は、数名がその爆風で吹き飛ばされ。



 「―――お邪魔します、っと」



 混乱する彼等の前に、砕け散った瓦礫と粉塵の中から姿を現す、香澄とシノの二人。


 その混乱に乗じ、隅の方からコッソリとイライザが侵入したのを確認した香澄は。



 「それじゃ、一暴れしましょうか、助さんや」


 「アタシは、むしろ……嫁の、方」


 「あぁ……、確かに」



 黄門様ネタにマジレスしてくるシノの博識ぶりに驚きつつ、香澄は笑って一歩を踏み出す。



 「さぁて、囚われの操り人形ちゃんは……何処かしら?」



 拳を構え、不敵な笑みを浮かべる彼女に、黒服達は即座に自動小銃を構え。



 「げ、迎撃しろ! 発砲許可は出てる!」


 「はっ!」



 即時発砲。

 無数の弾丸が二人に襲い掛かるのだが。



 「ほっ、よっ、とっ、あらよっ、っと」



 まるでゲームでもしているように、飛んでくる弾丸の尽くを全て眼前で掴み取ってしまった。



 「なん……だと」


 「ふ、ふざけ……っ、漫画じゃねぇんだぞッ!?」


 「クソッ! 怯むなっ、撃ちまくれッ!!」



 尚も乱射する彼等に、次はシノが前に一歩踏み出し。



 「ARフルバとか……、素人、か」



 腰を屈めてサッと取り出したのは、数枚の手裏剣。


 指の間に挟み込んだそれを纏めて振るい投げると。



 「なっ!?」


 「いっ!」



 その全てが個別に黒服達の手や銃口へと突き刺さり、自動小銃を取り零してしまった。



 「無駄撃ち、厳禁」


 「FPSもやるんだねぇ、シノ」


 「ワリと……好き(ポッ)」



 何故頬を染めたのかは定かではないが、その手裏剣の扱いはやはりプロフェッショナル。


 加えて、黒服の乱射に関しても尤もな意見で。



 「クソッ……っ、コイツら、余裕かましやがって……ッ!」


 「実際、余裕なのよ。アンタらノーマルがどれだけ束になっても、私達には遠く及ばない。知ってるでしょ?」


 「グ、ヌッ」



 彼等の脳裏に再生されるのは、連合軍ロシア支部を襲った惨劇の映像。


 銃声は鳴りを潜め、黒服達は後退る。



 「ただね、前にも言った通り、私らは私らに歯向かう連中に容赦はしない主義なのよ。だから、発砲された以上……分るわよね?」


 「この場の、全員……処刑、する」


 「―――うっ!」



 香澄は満面の笑み。シノは一切の無表情。


 そこから溢れ出すおぞましい程の殺気に、黒服達は一気に戦意を削ぎ落され。



 「だ、駄目だ……っ、オレらじゃ止められん……っ」


 「連中は何やってる!? これだから素人はッ!」



 恐らくは、外に配備されてるアバターラの事だろう、と香澄は察し。



 「じゃ、ソイツらが合流するまで、精々遊ばせて貰いましょうか」


 「狩りの、時間、だ……」



 悠然と拳を構える香澄と、右手に短刀、左手に苦無を構えるシノ。


 怯えすら見せ始めた黒服達は、半ば逃げ腰になりながらも直ぐ様迎撃の態勢に戻ろうとするが……。


 一方、その頃イライザは。



 「えーっと……コチラ、であっていますか?」


 「は、はいっ! この階段を下りて、右折した所を突き当りに!」


 「そうですか、ご丁寧にありがとうございます」



 職員と思しき人物を前に、右手で絞殺した黒服を掴んだまま、笑顔で答えていた。



 「敵意を見せた方は、漏れなく皆殺しにしろ、とのお達しを頂いておりますので、皆様ご了承下さいますよう」



 上品な笑みでありながらカーテシー。しかし、その身は既に返り血で染まっていて。


 非戦闘員であるその場の職員達は、最早怯えてまともに立ち上がる事も出来ずに居た。



 (聞き出せた情報通りなら、この下の階ですのね……。ですが、この場所、随分と非戦闘員の方が多いようですが……)



 目指すは指令室。


 黒服や外に配置されていると思しきアバターラ達の指揮を行っているであろう場所だ。


 此処を迅速に抑える事が出来れば、後の面倒が減る。



 「増援を呼ばれても、処理が面倒ですし……、姫様のお手をこれ以上煩わせるわけにも参りませんね」



 イライザは掴んでいた護衛と思しき黒服の亡骸を放り捨て、聞き出した通りに部屋を出て、外の階段を下へと降りて行った。



 「リヴァルト殿、駐屯地のご様子は如何でしょう?」



 その最中、懐から取り出したタブレットに向かい、尋ねるイライザに。



 『今の所、動きは無いようですよ、イライザ殿。それと、殿下とシノ殿が交戦状態に入ったようですが……コレは恐らく、時間を稼いでいるようですね。イライザ殿の報告待ち、といったご様子です』


 「判りました。指令室と思しき場所は当たりも付きましたので、直ぐに制圧に向かいます」


 『了解です。お気を付けて』


 「ええ、そちらも」



 通信を終え、タブレットを懐に戻し、イライザは階段を下りて廊下を一気に駆け抜ける。


 三階程上の階では激しい銃撃の音。

 どうやら、香澄達が適当に時間を稼いで暴れてくれているようで。



 (急ぎませんと……ねッ)



 狭い廊下では、正面から敵がやってくると隠れる場所も無い。


 故に、イライザは。



 「なっ、誰だ、貴様ッ!?」


 「侵入者かッ!」



 曲がり角で出くわした黒服二人を。



 「ぁがっ!」


 「かひゅ……ッ」



 片手で操る大型ナイフの一刀で、二人同時に喉を掻き切り、そのまま振り返りもせずに廊下を駆け抜けた。


 そして、目の前に迫った木製の扉へと迫り。



 「少々はしたないですが……致し方ありませんッ」



 疾走から跳躍、メイド服のスカートを掴み上げて足を大きく振り上げ。―――蹴撃。


 バギッと激しい音を発てて割れた扉と共に室内へと飛び込み。



 「なっ、誰だッ!?」



 最初に振り返った黒服へナイフを投擲―――額に命中。即死。


 次いで振り返ろうとしていた別の黒服へと飛び掛かると、その首に腕を掛け、振り回すようにして頸椎を圧し折る。



 「貴様―――ッ」



 三人目が銃を構えるが、今し方首を圧し折った黒服を盾に構え、直進して突き飛ばし。



 「失礼致します」



 その隙に一人目の黒服の額からナイフを引き抜いて、盾にされた黒服で視界を遮られた三人目の死角へと飛び込んだ。



 「終わりです」


 「―――ッ!?」



 声を上げる間も無く、三人目は首を切り落とされた。



 「ひっ、ひぃっ!!」


 「おや、これは……」



 指令室。そう思って飛び込んだのだが……。


 その部屋は思いの外小さく、敵の数も少なくて。



 「貴方は、確か……」



 高級そうな机を挟み、怯えて椅子ごと引っ繰り返って居たのは、見覚えのある顔。



 「これは、これは、長官様のお部屋でしたか」



 そこに居たのは、内閣官房長官その人だった……。

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