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Master Code  作者: 覇牙 暁
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第三十六話

第三十六話「工業都市、クッツァーヘイム」




 それは、思いの外トントン拍子で話が進んだ。


 ―――スヴァルトアールヴヘイムとの和平協定の件だ。


 そもそも、スヴァルトアールヴヘイムは不可侵条約の締結以降、アールヴヘイムとの間に大きな隔たりを感じては居なかったらしく、エルフ側が歩み寄りを見せるのであれば拒む意思は無かったようだ。


 対して、多少の反発が予想されたアールヴヘイム側のエルフ達だったが、アバターラ達のこれまでの貢献と実績、また宗教的理由からその決定に異を唱える者は終ぞ現れず。


 結果、僅か一月という短い期間で両国間の協議は終結。


 翌月には調印式が執り行われる事も決定し、現在に至る。


 だが、この和平協定の裏には、両国にとって表沙汰にされていない様々な思惑があった。


 例えば、強硬派蛮族の動向だ。


 スヴァルトアールヴヘイムは再三に亘って強硬派蛮族から恐喝行為を受けていた。


 無為に戦闘行為で血を流すよりも、金品を差し出す事を選んでいた訳だ。


 だが、この協定によってエルフとアバターラの戦力をアテに出来れば、蛮族軍の本拠を西と東から挟み討ちにする事が出来るようになる。


 如何に蛮族の兵力が強大であっても、二面戦争に加えて逃げ場を失えば蛮族とて敵ではないと考えた訳だ。


 その上、和平協定が結ばれる事でアールヴヘイムとスヴァルトアールヴヘイムの間で国交が再開される。

 協定締結の条件の中には、両国間での行商を自由化する内容も含まれていた。


 貿易が再開されれば、双方に経済的な流れが生まれ、国が潤うのだ。


 言うなれば、スヴァルトアールヴヘイムにとっては断る理由どころか利益しか生まない。そういった、またとない申し出だったという事になる。


 そして、アールヴヘイム側にもそれは言える事で。



 「―――これで、強硬派の蛮族は抑えられる。まぁ、無事に調印式が執り行われれば、の話しだけど……」



 執務室の椅子に背を凭れ、エルフのタブレットから表示されたホログラフに向かって私はそう答えた。


 そこに映し出されているのは。



 「やはり、殿下は“邪魔が入る”とお考えなのですね」



 リヴァルト・ライナー。


 以前、リムニルグ遠征時にエルフの隊を任されていた彼だった。



 「当然でしょ。連中にとって旨くない話しだもん」


 「この協定が締結されれば、蛮族の攻め手が止まり、自分達が付け入る隙も失われる……。確かに、黙って見ているとは思えませんね」


 「そゆこと」



 そして、そこには。と、脳裏を過る“あの顔”に、私は意図せず笑みを浮かべた。



 「……恐いお顔をなさいますね、殿下」


 「そう? でもやっぱりさ、折角だもん。“盛大に”、歓迎してあげたいじゃない?」


 「御尤も。―――では、先ほどの件、何か掴み次第、またご連絡させて頂きます」


 「うん、お願い。イライザにもよろしく伝えといて」



 お任せを。と慇懃にお辞儀したリヴァルトとの通信は途切れた。


 そこで、私は一つ息を吐く。


 ズルリ、とだらしなく背凭れに体重をかけ、両手をダラリと肩からぶら下げて。



 「―――派手に動くと勘付かれる、か……。なら、此処は」



 私はフッと腹筋に力を込め、椅子から飛び起きる。


 そして、隣の部屋で掃除中のミミに声をかけた。



 「およよ、お呼びです?」


 「うん。ちょっとの間、お忍びで此処空けるから。悪いんだけど、他のメイドさん達とか衛兵さんとかには上手く言っといて」


 「はいです! ……はいですっ!?」



 驚いて聞き返すミミに、私は手を振り。



 「じゃ!」



 ビシッと止め、窓から外界へと飛び出した。



 「ちょっ、姫様ぁあ〜〜〜〜っ!?」



 私が飛び出した窓へ慌てて駆け寄ったミミが、顔を出して手を伸ばすけど、私は満面の笑みで彼女に手を振り、背中を向けて紐無しバンジーを決め込む。



 「うっひょー! すっげー高さっ!」



 眼下に広がる景色は雄大そのもの。


 地上4000メートルの高度は伊達じゃない。


 パラシュートも無しで此処を飛び降りるとか、普通はただの自殺行為なんだけど、今の私にとって、この位の高さは何てことも無く。



 「床が無い? だったら、“空気”を踏めばイイじゃな〜い♪」



 空中で身体を捻り、足を下に向けて、そこで思い切り“大気を蹴る”。


 瞬間、ボッ! と足の裏に衝撃が伝わり、私の身体は落下するどころか物理法則をガン無視して何も無い大気中で跳躍した。


 こんな無茶をすれば、内臓や脳、血管に甚大なダメージが生じそうな物だけど、私は平気。


 平気だと“思い込んでいる”から。


 ―――オーバードライブ。


 以前、キマイラ戦でカズが起こした現象“オーバーリミット”は、究極的思い込みによって不可能を可能としてしまう制御不能の異常技能だった。


 でも、この“オーバードライブ”は違う。


 条件付きで思い込みを成功させる技術で、訓練すれば誰にでも容易に制御可能な限界値超過現象だ。


 解り易く言えば、ICEシステムの機能を暴走させずに任意で限界以上に稼働させているって事。


 だから、オーバーリミットほど馬鹿げた数字を弾き出す事は出来ないけど、代わりに限定的な超過現象を任意で引き出せる。


 例えば―――。



 「私なら、この程度の高さから落ちたって怪我一つしない」



 と、思い込む事で。


 ―――ドガンッッ!! と、激しい爆音と爆風を発て、足が地面にクレーターを作って減り込んでしまう程の運動エネルギーが私の全身に掛かっていたとしても、何の問題も無く耐えられてしまう。という訳なんだけど……。



 「……やっべ、抜けね……」



 土の地面に減り込んだ足が抜けず、もがく。もがく。もがく……。


 で、やっとの事で抜けたと思ったのも束の間、先ほどの爆音で周囲敷地内の衛兵たちが集まってきたようだ。


 ミニMAPに表示されている友軍判定の光点が移動してくるのが見えたのだ。



 「フッ……、今こそ、買い物の成果を見せる時ッ!」



 私は新たに増やしたスキンモードを選択!


 ―――“外行の私服”、君に決めた!


 スキンモードから追加スキンをタップ、そしてスライド。


 衛兵たちから逃げ出すように丘陵の草原を駆け出した私の身体を、前方からスキンデータが覆い尽くして。



 「フッ……」



 兵士達の着崩した作業服! って感じのチョイス。


 上衣は通常の作業服よりちょっと長目で、若干ロングコートみたいになってるけど、ボタンは留めずにTシャツはピッタリ目のヘソ出し。


 パンツはカーゴでゆったり穿いて、タクティカルベルトは敢えて二本を交差するように巻いてる。


 袖を捲ってボタン留めしてあるし、パンツもカーゴだからかなり動き易い。


 ついでに髪も括ってポニテにしてみたり。……ドヤァ。



 「ま、結局金銭感覚とかロクに育ってないんだけどさ……」



 私はそのまま城下の街まで駆け下りる。


 こんな格好で一国の姫様が外を一人で出歩いてるとは誰も思わないだろう。


 で、路地裏に入った所で何事も無かったかのように歩調を緩め、大通りまで出た。



 「―――な〜んか、妙なカンジよねぇ〜」



 私の周囲を行き交う人々のファッションの話しなんだけど。


 街並みは中世ヨーロッパ全開って感じで石造りの家が多いのに、歩いてる人らの恰好はエルフの民族衣装みたいのを好んで着用する人も居れば、現史世界の近代的な服装を好む人も居て。


 面白いのが、エルフらしい服を着てる人ほどノーマルやアバターラの率が高く、現代的な服装の人ほどエルフの率が高いっていう所。


 要は、真新しく見える互いの文化を真似し合ってるってカンジなんだろうけど。



 「こういう俗なトコって、エルフも人間も変わんないんだねぇ……」



 思わず苦笑。


 まぁ、趣味全開でこんな服をチョイスした私が言えた義理ではないんだけど。



 「さて、んじゃ〜行きますか」



 そんな街並みを、私は人込みに紛れて長壁側へと西に向かって進む。


 目指すは、スヴァルトアールヴヘイムの首都“クッツァーヘイム”だ。


 そこが、一週間後に両国の調印式が執り行われる場所。


 既に現地にはリヴァルトとイライザを含む複数のアールヴヘイム兵が向かっていて、私は後発になる。


 まぁ、誰も私が向かってる事なんて知らないんだけれど。



 「カズ辺りには、後で怒られちゃうかな……」



 私の警護を任されてる彼は、その警護すべき対象が城に居なくなった事に気付いたら何と言うだろう?


 縛られて、椅子に拘束されて、お説教? ううん、パンツ捲られて、お尻ペンペンとか……?



 「そ、それは、それで……デヘヘ」


 「―――お母さん、あの人何してるの?」


 「しっ、見ちゃいけません……っ!」



 ―――ハッ!


 しまった。最近は忙しさで鳴りを潜めていた私のM気質が……!


 エルフの親子のお陰で我に返った私は、そそくさとその場を離れる事にした。


 その後、適当に買い食いをしてから長壁の外へ出た私は、インベントリから騎乗用アイテム“グラーネ”を選択。召喚した。



 「頼むわよ、グラーネ」


 「ぶるるっ」



 答えたグラーネに跨り、手綱を握る。


 そういえば、最近気付いた事なんだけど。


 この子達みたいな生物系騎乗用アイテムって、ちゃんと生き物として存在しているらしい。


 ただ、扱いがちょっと特殊みたいで、ゴハンとかは食べないし、疲れたりもしないみたい。


 しかも、仮に戦場で怪我を負ったり、死んでしまったりした場合、彼等はインベントリに強制的に戻されるだけで、再度召喚し直すとキッチリ怪我や傷が治っているのだ。


 その上、寿命も無く。



 「アンタらって、何なんだろうね?」


 「ぶるるひひぃ〜ん?」



 こんあ風に、尋ねれば答える。


 簡単な言葉なら、ある程度は理解しているのだ。


 実際、私はクセでお腹を蹴ったり鞭を入れたりしてるけど、走れって命令するだけでこの子らはそれを十分に理解して駆け出す。


 頭の良い子達だ。



 「アンタの脚の速さが頼りよ、がんばってね」



 と、首筋を撫でて、軽くキスしてあげれば。



 「ぶ、ぶひぃいいいいっ!」



 とまぁ、やる気も出してくれるのだ。


 ただ、今のはどう聞いても馬の鳴き声には聞こえなかったんだけど……細けぇこたぁイイんだよ!



 「―――ハッ!」



 グラーネの腹を蹴り、手綱を引けば、上体を持ち上げて嘶くグラーネ。


 そのアクションから前足を地面に着くと同時、後ろ足が強く石畳を蹴り出した。


 ―――ドッ、と衝撃が私の身体にも伝わる。


 初速から僅か一秒で最高速。


 この子は軍馬の中でも特に優れた機動力を持っていて、普通に走るだけでも時速120キロは出るのだが、車に乗っているのとは違い、その体感速度はハンパじゃない。



 「ん〜っ、速い速〜い♪」


 「ぶるるるっ!」



 風を斬り裂くような感触が肌を圧し、それが兎に角心地良い。


 横を流れて行く景色は樹木や草花ばかりなんだけど、そんな物は残像としか捉えられないくらいのスピードだ。


 まぁ、この子には“神馬モード”っていうリムニルグへの道中で使ったあの状態もあるんだけど、今回はそれは使わない。


 あの速度なら、それこそ目的地まで一日と掛からないだろうけど、アレは速い代りに凄く目立つし、何より私の疲労がヤバイからね……。


 兎も角、今はコレでいい。

 時間が差し迫ってるって訳ではないし、折角の一人旅だ、少しくらい羽を伸ばすのもいいさね。


 ってなワケで、マッタリ気分のまま街道を西へ。


 レインレイクを抜ければ、しばらくは何もない道則になるけど、目的地に辿り着くまでには何ヵ所か集落を跨ぐ必要がある。


 その辺でイロイロと情報を集めつつ宿泊し、そうして三日が過ぎ……。



 「―――おおー、絶景だー」



 私がグラーネの背から見下ろしているのは、目的地クッツァーヘイムの街並み。


 街の直ぐ傍に大きな山があって、その道中から少し道を逸れ、崖っぷちから眺めているんだけど、これが実に絶景。


 アールヴヘイムの王都程広くは無いし、背の高い建物も精々王城くらいって感じなんだけど、街並みが王都とはまるで違う。


 広大な海を背に、最北端に丘陵を利用した王城が建っていて、そこから扇状に商業区が広がり、北西には大きな漁港。


 街の中央からやや東寄りには歓楽街らしき物が見え、南西には見慣れない景色が広がっていた。



 「アレが、スヴァルトアールヴヘイムご自慢の工業区ね……」



 この辺り、地下には沢山の鉱物資源が眠っているらしく、スヴァルトアールヴヘイムはそこから採掘した金属を使って多くの工業製品を製作してるって話しだ。


 剣や鎧といった武器防具を初め、農耕器具や工具、調理器具と何でもござれ。


 この星の工業製品の凡そ50%がこの街で製作された物で、蛮族共が使っている武器弾薬も此処から入手した物だと言われてる。


 兎角鍛冶の技術に関しては他に類を見ない最先端を行き、名のある名工が犇めく金属加工業の街。


 この街の事を、人は皆そう認識してる。



 「技術力の交流って点でも、見返りは大きそうね……」



 私はニマニマと笑みを浮かべ、グラーネの手綱を引いて景色に背を向けた。


 此処から下山し、関所を抜ければ到着だ。


 逸る気持ちを抑えながら、私はグラーネと共に山を下りた。―――そして。



 「―――止まれー!」



 山道を抜けて直ぐ、見えて来たのはクッツァーヘイムの大きな関所。


 此処で入出国する人の管理をしているらしく、駐屯しているスヴァルトアールヴヘイムの兵隊も有事に備えてかなりの数だ。


 私を呼び止めた門番の後ろにも、数人の衛兵達が控えていた。



 「馬を降り、通行証を。それと、荷物を改めさせて貰っても?」


 「あーそっか、アールヴヘイムじゃないんだから、顔パスってワケにはいかないわよね、そりゃ……」



 完全に失念してた。


 一応、昨晩の内に先行してるリヴァルトに連絡を入れ、話しを通して貰ってるんだけど……どうやって個人証明しよう?



 「どうしたもんかな……」


 「ん? 通行証を持っていないのか?」


 「そうなんだけど……、う〜ん」



 マズイ。ちょっと本気で困った。


 最悪、イライザかリヴァルト辺りを呼び付けて、通して貰うって手もあるんだけど、彼等だって仕事中だろうし、無理を言う訳にも……。


 ……どうしよ?(汗)



 「怪しいな……」


 「えっ!?」


 「おい、貴様。名前を言え。出身は何処だ? エルフ……ではないな。“向こう側”の人間か?」


 「あわわっ、ちょっ、まったっ」



 ひぇー! 槍の穂先向けないでー!


 と、思わず逃げ出してしまいたい衝動に駆られた時だった。



 「おぅおぅ、なんやネェちゃん。どっかで見た事ある顔や思たら、アールヴヘイムのお姫さんやないか」


 「へ……?」



 横から唐突に声をかけられ、振り返ったのだが……!?



 「お、なんや? ワシの顔になんか付いとるんか?」


 「え、あ、いや……」



 そこに立っていたのは、背に長大な戦斧を背負った鎧姿の―――大トカゲ!


 忘れてた。此処って、穏健派の蛮族も出入りしてる国なんだった!



 (ってか、これ……リザードマン、よね? リザードマンが……なんで関西弁!?)



 なんていうか、凄い迫力だった。


 今までにも何度かリザードマンと戦った事はあるけど、此処までデカくて強そうで、迫力あって関西弁な奴なんて初めて見た! なんでや、関西弁関係ないやろ!



 「お? どした、ネェちゃん」


 「ぁ、の……っ、え、と……っっ」



 キャー!! 久しぶりにヒキニートだった頃の私に逆戻り!


 声が出ない! なんか妙に気圧されて緊張してまうー!



 「だーっはっはっは! なんや、えらい可愛らしい反応やないか。“黒炎の戦姫”なんっちゅーけったいな二つ名で呼ばれちょるから、もっとこ〜バケモンみたいな女や思とったんやけどな! だっはっはっは!」


 (ア、アンタにバケモンとか言われたかないわよぉ〜〜〜〜〜っ!)



 萎縮しまくる私だったんだけれど。



 「え……、“黒炎の戦姫”って、例の……」


 「あぁあああっ、そうだ! どっかで見た事あると思ったら、昨日新聞に載ってたじゃないか!」


 「う、嘘だろ……? だって、“黒炎の戦姫”っていやぁ、素手で重装備のオーク族を撲殺するとか、剣の一振りで百人の敵兵を薙ぎ倒すとか言われてる、あの姫だろ……!?」


 「オレ、もっとこう……トロールみたいな女だって思ってた……」


 「オマエら新聞くらい読めよ!」



 ―――なんか、リザードマンさんの横で、衛兵達が騒ぎ始めていた。


 ってか、こう……微妙に失礼な発言も聞こえた気がするんだけど……。



 「あの……、カガラ様。この方は……その」


 「あぁ、そや。間違いなく、アールヴヘイムの第一王女、カスミ殿下や。ワシがこないなべっぴんさん見間違える筈がないやろ」


 「―――っ!! し、失礼を致しましたっ!」



 掌くるー。で、90度きっかり見事なお辞儀。


 いや、通行証忘れてきた私が悪いんだけどさ……。



 「き、気にしないで。―――でも、変ね……。リヴァルトとかイライザ辺りから、話しは来てなかったの?」


 「申し訳ありません、自分は何も聞いていないものでして……」



 と、前屈しそうな勢いで固まってる門番さん。



 「まぁ、ええやないか。一先ずはワシが身元保証人になるさかい、通したってぇな」


 「は、はいっ、どうぞ! お通り下さい、殿下!」



 と、案内役の衛兵さんまで付けてくれて。


 関所の中を例のリザードマンさんと歩く。



 「その……ありがとう、さっきは、助かったわ」


 「かまへんかまへん! ま、ホンマはな、リヴァルトから聞いて迎えに来たトコやってん」


 「―――は?」



 おい、今コイツ何て言った?



 「せやからな、ワシがその迎えや。いやー遅れてもてごっつスマンかったなぁ」


 「アンタが原因かよ!?」


 「だーっはっはっはっはっ!!」



 くっそ、感謝して損した!



 「まぁまぁ、そない目くじら立てんといてぇな。コレで、ワシも忙しい身でなぁ。イロイロあって、ちぃと出るんが遅なってしもうたんやわ」



 なんて、言ってる側から。



 「―――ちょーっと、カガラさーん! お釣り、忘れてるわよー!」



 と、関所内の食事処から顔を出してる女将さん。


 うん、これさっきまでそこで飲み食いしてたって事よね。



 「す、スマンな女将! それ日頃のお礼っちゅうかやな! と、とっといてぇな!」



 わー、物凄く目が泳いでるぅー。


 うん、だいたいこの人のキャラ掴めたわ……。



 「で? 同盟国になろうっていう国の第一王女様を待たせて飲むお酒のお味は如何だったのかしら? カガラさん」


 「は、はい……。ごっつ美味かったです……。えろぅすんませんでした……」


 「ったく……」



 道理で衛兵達に話しが通っていない筈だ。


 恐らくこの人、スヴァルトアールヴヘイムの軍部かそれに近い関係の人で、しかもワリと名前の通ってるエライ人な可能性が出て来た。


 この人が身元を引き受ければ、他所の誰でも簡単に顔パスで関所を通れてしまうくらいの。



 「ま、事情は大体察した。けど、アンタってリヴァルトと知り合いなの?」


 「おう! っても、知り合ってまだ日も浅いけどな。なんやこう〜飲み仲間っちゅうかやな」


 「あぁ、そういう……」



 リヴァルトもアレでかなりの酒豪だ。


 情報収集も兼ねて、いろいろそういう場を利用してるんだろう。


 で、たまたま知り合ったリザードマンのオッサンが、ワリと使える立場の人間だった。


 だから、利用……もとい、協力してもらったって所か。



 「けど、アンタってこの辺じゃ顔が効くの?」


 「せやなぁ、アーダルのオッサンとも付き合い長いし、商工会の連中とも懇意にさせてもろとるわ」


 「え、今なんて……?」



 なんかこう、聞き間違いかも知れないんだけどさ?


 コイツ今、“アーダルのオッサン”って言わなかった?



 「商工会の?」


 「違う! そっちじゃなくて!」


 「あぁー、オッサンの方かいな」


 「オッサンて! アーダルさんって、アレよね? それ、そこらの名前が同じだけのオッサンとかじゃなく、スヴァルトアールヴヘイムの現国王の、“アーダル・クッツァー”陛下の事よね!?」


 「おぅ、せやで。いやけど、あのオッサンなぁ、酒が入ると絡みがホンマうっとくなってなぁー、もう扱いがメンドイったらないちゅーかやなぁ」


 「そっちも飲み仲間かよ!?」



 アカン、だんだん頭痛くなってきた……!


 これ、ひょっとして、ワリとスゴイ人なんじゃないの……?



 「姫さんアレやな、ツッコミが気持ちええな! 気に入ったわ!」


 「私は気に入られたくないわ!」



 あぁーもう、また面倒そうなのが増えたぁぁ〜〜〜〜〜!



 「まぁ、そう言いな! 仲ようしたってや!」


 「もうヤダ……。お家帰りたい……」

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