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Master Code  作者: 覇牙 暁
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第二十七話

第二十七話「暗躍」




 魔動小銃ハートレスシュメルツの完成。

 加えて、アヴェンジャーMk-IIの量産も進み、必要総数まであと僅かという所まで来ている。


 これらの開発が予想以上に順調なのは、偏に協力してくれているミミのお陰だ。


 今はアバターラ内に居たミリタリーヲタク達が中心になり、Mk-IIの運用方法やハートレスシュメルツを用いた新しい戦術の考案が進められていて、エルフの兵士達は日々調練に汗を流している。


 いよいよ、蛮族に対する大規模な反抗作戦が開始されようとしていて、城内も城下もピリピリとした緊張感に包まれ始めていた。


 そんな中―――。



 「―――キマイラ??」



 会議室で、何時ものメンバーを交えての軍議中に伝令が走り込んで来たのだ。


 首を傾げる私に、その伝令は。



 「ハッ、全長8メートル程の巨体で、獅子の手足と頭、牡山羊の胴、頭を持ち、尾は大蛇。膂力強く、強力な火炎を吐き出し、村外れの森で暴れ回っているとの事で、現場の兵や民にかなりの被害が出ている模様です」


 「マジもんのキマイラじゃん……」



 北欧神話にキマイラが出てくるなんて話しは聞いた事がないけど。

 報告を聞く限り、どうも私の知識と合致した姿形を持っているらしい。


 つまり、コレもPYOには存在しなかったモンスターだ。


 しかし、と首を捻る。



 「リムニルグ村、か……」



 私が見ている地図上では、その場所を示す光点。


 王都から南西に100キロ程離れた場所にある集落で、農業や狩猟で生計を立てている人口200人程の小さな農村だ。


 そんな場所が、何故?



 「ねぇ、お爺ちゃん。リムニルグってどんな村?」



 私が尋ねたのは、丁度軍議で同席していたエルフの長老だった。



 「そうですな……。400年程前にエルフの開拓民が拓いた村で、これといった特徴はありませんが、大きな果樹園がある事で知られておりますじゃ。比較的豊かな集落ではありますが、しかし……、蛮族共にとっての戦略的価値を考えますと……少し妙、ではありますなぁ」



 物凄くお髭が立派なこのお爺ちゃん、実はミミの祖父に当たる人で、歳はまさかの1800才。


 物知りでエルフの事なら大体何聞いても答えてくれる知恵袋的な人で、アバターラ側でも良く相談役として軍議に参加して貰っている。


 好々爺って印象が強いけど、ワリと老獪というか悪知恵も働くから、エルフ軍の大将軍も頼りにしているのだとか。


 そんなお爺ちゃんの説明によると、やっぱり見解は私と同じ。


 蛮族の行動としては、何か妙な物を感じているみたいだった。



 「ねぇ、ダイキ。コレちょっと放っとくの危険かも」


 「ふむ……。でも今の状況で兵を動かすのは……」



 円卓の上座に座るダイキはそう呟いて何かを考え込んでいた。


 実は今、アバターラとエルフの精霊連合は余り戦力を裂く事が出来ない状態に置かれてる。


 と、いうのも、例のMk-IIやHSハートレスシュメルツの運用に際し、エルフ軍の主力とアバターラ達が大規模な合同演習を行っている為だ。


 各地で散発的な攻撃を繰り返している蛮族の事もあり、現状動かせる兵力は正直に言って無いに等しい。


 大局を見るなら、放っておくのも一つの手だとは思うけど……。



 「私が行く。だから、兵は最小限で構わない」


 「カ、カスミちゃんが!? いやでも、カスミちゃんはお姫様なんだし……」


 「分ってる。立場と責任があるって事も。その上で、放っておけないって言ってるの」


 「う、う〜ん……」



 相手はキマイラ。

 その大きさや記憶している知識からも、その強さが並大抵の物ではない事は誰もが知っている事だ。


 討伐には、かなりの戦力を必要とする筈。

 でも、エルフからもアバターラからも、今は大きな戦力を動かすだけの余裕は無い。


 だから、見捨てろって? そんなの、無理に決まってる。


 だって私は、この国の王女で、エルフが大好きで。



 「民を守るのが、王族の務め。でしょ?」


 「それは……分る。けど、君が此処を空けるとなると……」


 「ちょっと……、王様ともあろう者が、人前で情けない顔しないの。数日私が抜けたくらいでどうにかなる程、アンタって無能だった?」


 「む、無能って! あぁ〜もう、コレ何言っても聞かないフラグだよね!?」


 「解かってんじゃん♪」


 「はぁ〜……」



 深い溜め息を吐き、ダイキは項垂れる。


 まぁ、私が抜ける穴は実際大きい、とは思う。

 軍略を初め、兵器開発や兵の編制、軍の総指揮、兵站の管理。


 果ては内政やエルフ軍との連携に至るまで、私がこなしている仕事の量はワリとハンパない。


 これを全て、私以外の誰かが負担する事になるワケだから、楽な選択じゃないだろう。


 でも、それを解ってて尚、ダイキは。



 「―――分かった。部隊の編制は任せる。お願い出来るかい?」


 「ん、任された!」



 ちゃんと首を縦に振ってくれるのだ。



 「なんと、姫様御自ら……!」


 「ええ、出立の準備が整い次第使いを出すから、アンタは下がって今の内に身体を休めておきなさい」


 「有り難いお言葉、痛み入ります! ではっ」



 伝令の兵士はそう言い残し、踵を返して退室する。


 対して、私は。



 「ツバサ、悪いんだけど、後の事は任せるわ」


 「ボ、ボク、ですか……!?」



 露出狂!? とか思う程派手な服装で不健康そうな顔してるけど、こう見えてコイツはかなり有能。


 普段はナヨナヨしてて若干オカマっぽいんだけど、実際にはハイスペックで知られてて、軍部じゃ兵達からの信頼も厚い。


 元はヒキニートって噂だけど、それは私だって同じだし。

 こんなナリしてるけど、度胸だって十分にある。


 現状、私の仕事を一時的にでも引き受けられる人間っていうと、彼くらいしか居ないのだ。



 「ニャーも頑張るニャ! だから、何でも言ってニャ!」


 「うん、ありがとカナ。でもアンタは自分の仕事を優先してね」


 「ニャ? うん、分かった、ニャ……?」



 気持ちは嬉しい。でも、キミには無理だ!


 内心そう思っていた私のホッコリ笑顔に、カナは小首を捻り。



 「ニャんだか最近、ニャ子がアホの子扱いされてる気がしてならないのニャ……」



 勘だけはいいな!


 とは、口が裂けても言えないが。



 「それと、カズ。悪いんだけど部隊の編制をお願い。少数精鋭でね」


 「了解でござる。腕の良い連中を集めておくでござるよ」


 「うん。あと、今回はアンタも参加」


 「心得た!」



 こうして、話しは纏まり―――。


 翌朝、アイテムの補充や装備の点検など、諸々全て完了。


 陽が上ったばかりのまだ早い時間ではあるけど、西門の門前で出発するエルフの荷駄隊を指揮していた所。



 「カスミちゃ〜〜〜ん!」


 「……? あれ、社長。それに……松岡さんも?」



 昨日の伝令役に先導をお願いした辺りで名前を呼ばれ、振り返ると二人が駆け寄って来るのが見えた。



 「どしたん? 二人とも」


 「どしたん? じゃないわよぉ〜」


 「お見送りしようって社長と話してたんだけど、まさかこんな早い時間に出て行っちゃうなんて思ってなくてね……」


 「あーゴメン。荷駄隊の都合があるからさ、ちょっと予定早めたんだ」


 「そーゆー事はぁ〜、先に言ってよぉ〜」


 「ごめんごめん」



 どうも、わざわざ見送りに来てくれたらしい。


 嘗ての両親にもされた事なんて無かったから、考えもしなかった。


 で、そんな事を考えていたら。



 「はい、コレ」


 「え、なにこれ?」



 社長に手渡されたのは、小さな包み。


 受け取って見ると、なんだかほんのり温かい。



 「脱ぎたて?」


 「ちぃ〜がうわよぉ〜!」


 「斬新だね……。その発想は無かったよ、カスミちゃん……」


 「お〜弁〜当ぉ〜!」


 「は、弁当??」


 「そ、とちゅ〜で、食べてねん♪」



 社長の事だから脱ぎたての下着でも包みにブチ込んで持たせようとしたのかって思ったけど、そうじゃなかったみたい。


 っていうか、弁当って、あの弁当……?



 「カスミちゃんって〜結構食べるからねぇ〜」


 「私、に……?」


 「他に誰がいるってのよぉ〜」


 「あぁ……、そっか……」



 これも、初めての事、だった。


 中学の頃だって、親からそんな物を持たされた記憶がない。


 あの頃は、周りの連中が親から持たされた弁当をちょっと羨ましいって思いながら、見てたもんだったけど……。


 そっか、こういう物、なんだ……。



 「ちょっとした遠足くらいの距離だけどさ、ムスペルヘイムの時は、忙しくてこんな余裕も無かったから」


 「今回は〜、お姉さん頑張っちゃいましたぁ〜♪」



 と、ぶいサイン。


 なるほど……。

 何ていうか、コレは……。



 「早起き、ご苦労様です」


 「えー! ゆーこと、それだけぇ〜?」


 「いやだって、糧食は十分積んでるし。ま、折角だから食べるけど」


 「もぉ〜、作り甲斐ないなぁ〜、カスミちゃんってばぁ〜」



 なんて、口では言ってるけど、なんだか凄く、温かくて。


 でもこう、嬉しい! みたいに喜ぶのも癪で、適当に誤魔化そうとしてみたんだけど。



 「素直じゃないね、君も」


 「な、なによっ、解かった風な事言ってっ」


 「慶次く〜ん、そーゆーのは、敢えて突っ込んじゃだめでぇ〜す」


 「そ、そういう物、ですかね?」


 「ちょ、社長まで……もう、いいっ」



 バレバレだったらしい。


 けど、そっぽ向いて頬膨らませてる私に。



 「気を付けてね。怪我しちゃダメよ?」


 「わ、解ってるってば! ホンット、お母さんみたい! ウチのはそんなじゃなかったけど」


 「私も〜、こんなおっきな娘を産んだ覚えはありませぇ〜ん」


 「……ったく」



 そこへ、殿を務める隊の伝令が走って来て。



 「お見送りの所お邪魔して、申し訳ありません。荷駄隊、全て滞りなく出立致しました。我々で最後です」


 「ん、分かった。私も直ぐ出るから、先行ってて」


 「ハッ!」



 伝令の兵士は踵を返し、最後尾の荷駄隊の後を追い掛けて行った。



 「一週間くらいで戻って来るから、そう心配しなさんな、お二人さん」


 「うん、気を付けてね」


 「行ってらっしゃい、カスミちゃん」



 ヴォイドフリックでインベントリから騎乗用アイテムの“グラーネ”を選択、使用する。


 と、目の前に光の粒子を纏いながら嘶く灰色の軍馬が現れ、私はそれに騎乗した。



 「んじゃ、ひとっ走り行って来ますわ!」



 手綱を引き、グラーネを反転させ、そう言った私に、二人は笑顔で手を振って。


 けど、何かこう、インベントリに納めてしまうのが勿体無くて、手に持っている小さな包みを胸に抱え、私は。



 「―――おべんと、その……ありがと」


 「フフッ、ううん♪」



 その凄く優しい笑顔を見返すのが照れ臭くなって、私はグラーネの腹を蹴った。



 「行って来ます!」



 グラーネの足は速くて、直ぐに二人の姿は遠ざかってしまったけど、それでも最後まで、「行ってらっしゃい!」って声は聞こえてた。


 まったく、たかが100キロくらい離れた場所に遠征に行くだけで、一週間もしない内に帰ってくるっていうのに、ホントあの二人ときたら、何を心配しているんだか。


 っていうか、その気になれば“送還石”で一瞬の距離だってーの。


 なんて、内心愚痴を零しながら走っていると。



 「なんだか、嬉しそうでござるな」


 「うおっ、アンタ居たの!?」



 何時の間にか並走していた、馬上の青金。


 どうも一気に飛ばし過ぎたみたいで、何時の間にか先頭集団まで追い付いてしまっていたらしい。



 「居たの? とは心外でござるなぁ。何度かお声掛けしたのでござるよ?」


 「マ、マジで? ゴメン、気付かなかった……」


 「いや、構わんでござるよ。余程嬉しい事があったのでござろう? 顔に書いてあるでござる」


 「べ、べつにっ、何でもないし!」


 「ハハ、でござるか!」



 むぅ……。私って、そんなに顔に出易いタイプだったろうか?


 まさか、カズにまでバレているとは……。


 なんとなくこの暖かさを情報化してしまうのが惜しくて、インベントリに入れてなかったけど、この調子だと次は誰に何を言われるかも分かったもんじゃない。


 私は仕方なく社長お手製のお弁当をインベントリに仕舞い込み、手綱を握り直した。



 「にしても、キマイラねぇ……」



 後続の荷駄隊との距離を気にしつつ、何の気なしに呟いたその言葉に、カズが首を傾げる。



 「何か気になる事でも?」


 「うんまぁ」



 キマイラ。ギリシア神話に登場する怪物。


 キメラとかカイメラ、シメールなんていう呼び方もあるけど、全部同じ物。


 ゼウスに比肩するとまで言われる力を持つテュポーンと怪物の母と呼ばれるエキドナの間に生まれた娘とされている。


 山羊の胴と後ろ足、それと頭、獅子の前足と頭を持ち、尾は毒蛇という姿で描かれ、強靭な肉体を持ち、口から炎を吐くとも。


 でもそれは伝説上での話。


 昨今の漫画やゲームの影響で、このキマイラって化け物のイメージは随分と変わっているのだ。


 大抵の場合、キマイラは“魔術によって人工的に合成された怪物”に成り代わっている。


 元を辿れば生物学のキメラに由来する話しなんだけど、まぁそこは割愛。


 ただ、その所為で、どうにもキマイラって名前を聞くと“人為的”な何かを感じてしまうのだ。


 野生のモンスターであるなら、それで良し。

 蛮族が画策した何かしら意図のある策略なのだとしても、やはり放っておく事は出来ない。


 何れにしても討伐する必要性はある訳で、結果は変わらないのだけど……。



 「腑に落ちないのよねぇ……」



 昨日、ミミのお爺ちゃんも言っていた事だけど、リムニルグ村には蛮族にとって戦略的価値が無い筈。


 キマイラなんていう大型で強力なモンスターを用意してまで襲わせる意味が解らないのだ。


 それに、キマイラは凶暴で口から火炎を放ち、森や村を焼いている。


 これでは、蛮族達にとっても得る物が無い。


 だとすると……。



 「やっぱり、野生種なのかなぁ……」



 悩めど悩めど、答えは出ず。


 そうこうしていると、隊の後方から蹄の駆ける音が聞こえて来た。



 「―――姫様〜っ!」


 「ん……?」



 何やら騒がしく馬を寄せて来たのは、騎士鎧を纏う帯剣したエルフの青年。


 エルフにしては珍しく短髪で、整髪料でも使っているのか、風にも負けないバリバリのウルフヘア。


 金のイヤリングを片耳に付けているのは……お洒落? かどうかは解らないけど、ちょっとチャラい感じがする。


 ただ、アンダーウェアの首に刺繍された剣型は一本。これは、騎士としての彼の階級を表していて。



 「姫様、ご挨拶が遅れて申し訳ありません! 自分は、此度の遠征でエルフ隊の指揮を任されております、イヴァルト・ライナーと申します。階級は少尉。以後、お見知り置きを」


 「あぁ、キミが……」



 リヴァルト・ライナー。


 確かに、カズからも報告は受けていた。


 エルフの騎士で、階級は少尉。


 剣と魔術の双方に長け、この若さ? で少尉に抜擢された優秀な男だと。


 ただ、どうも見るからに私の好みのタイプではなくて、って別に異性としての好みの話しじゃなくてね?


 何というか、雰囲気が軽佻浮薄で、どうにも得意ではないというか。


 まぁ、一般的な見地で言うなら、多分イケメンの部類に入るんじゃないかな、と。


 隣を行くカズには言えないけど。



 「ふむ……、見知り置く。総指揮は私が執るが、エルフの隊は貴公に任せる。頼んだぞ」


 「ハッ! この命に代えましても」


 「あーいや、命に代えろとまでは言わんが……」


 「いえ、このリヴァルト・ライナー、姫様のお力になれるとあらば、例え如何なる命であろうとも必ずや完遂してご覧に入れますればっ」


 「あーこらこら、ちょっと落ち着きなさいって……」



 何この子、人の話し聞いてない。


 っていうか、何そんなに興奮しまくってんの?


 鼻息荒過ぎだっての……。



 「ちょっとカズ、コレちゃんと使えるの?」


 「い、いや、普段はこうではござらんのだが……」



 コソッと隣のカズに尋ねてみたんだけど、この反応。


 コレ、ひょっとして……アレ?

 芸能人目の前にしてテンション上がっちゃってる系みたいな系?



 「―――ハッ! し、失礼致しましたっ、憧れの姫殿下にお会い出来て、興奮の余りつい……っ」


 「あぁ、やっぱりそういう系……」


 「ソウイウ、ケイ……で、ございますか?」


 「うん、そういう系」



 言葉の意味が読み取れなかったようで首を傾げてるけど、まぁスルーの方向で。



 「それで、生で見た感想は?」


 「それはもう! 噂に違わぬお美しさで、自分は……! 自分は……ッ!!」


 「おーい、帰ってこーい」


 「―――ハッ!」



 うん、コイツちょっと面白い。



 「それはそうと、リヴァルト殿」


 「あ、はい、何でしょう? カズユキ殿」



 と、リヴァルト君で遊んでいたんだけど、どうもカズの方には用事があったらしく。



 「リムニルグの駐屯部隊から、その後の経過報告は受けてるでござるか?」


 「いえ、今の所は。ただ、コレは未確認なのですが、村の周囲でフードを深く被った“ダークエルフ”のような者を見掛けたとの報告もありました」


 「ダークエルフ?」



 思わず会話に割って入ってしまう。



 「はい。顔までは確認出来なかったとの事ですが、衣服の袖から黒い肌が見えた、と」


 「ダークエルフ……」



 私は眉を潜めた。


 北欧神話について書き記された“スノッリのエッダ”で有名なスノッリは、ダークエルフの事を“ドヴェルグ”と言及している。


 ドヴェルグっていうのは、解り易く言うと、“ドワーフ”の事で、スノッリは闇の精霊、即ちスヴァルトアールヴをドワーフと呼んでいたワケ。


 どういう事かっていうと、スノッリは、ドワーフとダークエルフが同じ物だって言ってるって事。


 でも、近代創作物の常識としては、ダークエルフとドワーフっていう二つの種族は明確に別の物として描かれている場合が多い。


 とりわけ、その姿に関してはまるで別物だ。


 ダークエルフは肌の黒いエルフとして描かれているし、ドワーフは力持ちの小人として描かれている。


 ただ、どちらにしても言える事は。



 「エルフの敵、よね……」



 最近のファンタジーだと、エルフとドワーフが仲良く冒険してる事も多いけど、本来は敵同士の種族で互いに争いが絶えなかったっていう。


 今回のキマイラ騒動。

 ひょっとすると、スヴァルトアールヴヘイムが一枚噛んでるって事……?



 「ねぇ、リヴァルト君」


 「はい! なんでしょうか、姫様!」


 「そのダークエルフの件、もうちょっと詳しく調べて貰えるよう現地の駐屯部隊に伝えておいてくれる?」


 「ハッ! 喜んでっ!」



 言うが早いか、リヴァルト君は直ぐ様馬を反転させ、荷駄隊と行動を共にしている連絡員に指示を出しているようだった。



 「此処に来て、ダークエルフの目撃情報、でござるか……」


 「どう考えてもキナ臭いよねぇ」



 カズと二人、重苦しい溜め息を吐き。


 その後、私は荷駄隊を率いてグラーネを駆り、一路リムニルグ村へと急ぐのだった。

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