プロローグ
はじめましての方は、はじめまして。
今回の作品ですが、全体を通して主人公や登場人物のキャラクター性に重きを置いた作品になってます。
キャラの性格に関しては好き嫌い別れる所でしょうから、合わないと思った方はとりあえず回れ右して下さいな。
ただ、実際にこういう人間もいるんだ、っていう事をもっと知って貰いたいという想いも込めていますので、安直な否定や盲目的な肯定も避けて下さい。
重要なのは、“考える事”だと自分は思ってます。
あと、作品の内容について追記ですが、全体的にアクションは強めに出すつもりでいます。が、序盤は少し抑えている部分なので、「もっとアクションが見てぇ!」とか「俺TUEEEE!」ってのを見たい方は、解説多めの序盤は流し読みでも構わないかと。
では、本編をどうぞ!
〜 プロローグ 〜
―――私は、人間が嫌いだ。
人は一人では生きられない、なんてドヤ顔でのたまう奴は特に。
言葉の意味を取り違えている事に気付きもしないクズ共。
それは、精神性の話しじゃない筈だ。
糧食や居住環境、経済的な意味で発せられた言葉であり、誰もが他人と和気藹々友達ゴッコをしなければならないという強制を促す言葉ではない。
そもそも、奴らは何を勘違いしているのだろう?
友達や友人、知人なんて口当たりの良い言葉で誤魔化しているが、結局一人では不安で誰かに助けを求めているから、それらは必要になる。
つまり、“他人を利用する為に関係を持ちたい”というのが本音で、それ以外では有り得ない。
人間という生き物は損得勘定でしか動けない、というのが短い人生で私が学んだ確実な真理。
だから、自己利益の為に他人を利用する上で必要だから作られたのが“友達”や“友人”なんていう甘い言葉で、“愛情”や“友情”なんてのもその表現を置き換えただけのものだ。
そうしないと不安だから。
誰かに助けて欲しいから。
けど、それは必ずしも万人に適用されるとは限らない。
だってそうでしょ?
世の中の大半の人間は、役立たずなんだから。
何を不安に感じているの?
助けが欲しい時って、どういう時?
例えば、事故や病気だ。
自分一人の手だけではどうする事も出来ない状況だから、誰かに縋る事で安心したいんだ。
なのに、現実はどう?
交通事故にあって大怪我を負ってしまったとしよう。
奴らは当然、誰かに助けて欲しいと願うに決まってる。
だけど、それまでの人生で必死になって作った“友達”やら“知人”とやらは、その時に本当に助けになるの?
実際には、先ず助けになんてならない。
その友達や知人とやらに大怪我を応急処置できるだけの知識と技術、度胸はあるの?
そもそも、大怪我をしてしまったその現場に、その友達や知人とやらは居てくれるの?
大半の人間は、怪我の有様を見てテンパるだけだろうし、仮に落ち着いていたとしても知識が無ければ行動する事も出来ない。
精々がスマホで画像撮影してるか、事故からしばらく経って思い出したように救急車を呼ぶかって程度だ。
まるでアテになんてなりゃしない。
そんな連中と数つるんで一体何の意味が?
私にしてみれば、そんな連中はただ煩わしいだけだ。
腹の底では損得勘定で物事を秤にかけて、自分が助かりたいから白々しい作り笑顔で集ってくるだけの使えない連中。
その上、自分ではロクに学ぼうせず、他人を頼って覚えもしない。
そういうのは他所でやって欲しい。
私まで巻き込もうとするな。
私には、必要の無い物だ。
自分で応急処置が可能なら自分でやるし、何か身体に不調を来したと感じたなら独力で病院へ行く。
それが出来ないならハナから諦めるだけで、それで苦しむなら私自身の責任だ。
だから、いらない。
近所付き合いだとか、公共の場での他人との触れ合いだとか。
それだと将来困る?
就職はどうするんだ?
馬鹿馬鹿しい。
最近じゃ在宅で個人端末から幾らでも仕事を探せる。
稼げるヤツなら、一生社会になんて出て働く必要がない程度に。
わざわざ他人と関わりを持つ必要なんて、実際ありはしないのだ。
だから、私はネトゲでリアルマネーを稼ぎ、独力で高校卒業資格を得て、就職先もゲーム内で獲得した。
『Perish Yggdrasil Online(滅びのユグドラシル)』
―――通称・PYO。
世界初のCCP搭載型VRMMORPG。
CCPとは、『Cyber Consciousness Projection』の頭文字を取った略称で、正式名称を“電脳意識投影システム”という。
これは、電脳空間に構築される情報を電気信号に変換し、人間の脳に送り込んで外部電脳でアシストする事により、人間が直接電脳空間の情報を読み取ってあたかも実際にその場所に立っているかのように体感させるVRシステム。
要は、ゲームの世界で自分自身が自由に行動し、五感全てでリアルにその世界の全てを体感出来るという物だ。
これを開発し、オンラインゲームの新機軸としたのが、北海道は札幌市に在る新進気鋭のゲームメーカー『アドバンスドブレインコーポレーション』。
そのゲームの中核を成す開発チームから、私は直接スカウトされた。
当初は、一プレイヤーでしかない私が何故? とも思ったが、どうやらそこには複雑な理由があったらしい。
『このゲームで、GMの仕事をしてみるつもりはないかい?』
開発チームの主任研究員をしているという『松岡 慶次』は、その時私にそう尋ねた。
GM。ゲームマスター。
運営陣とプレイヤーとの間で橋渡しをしつつ、プレイヤー達が抱える諸問題の解決を主な仕事とする一種の役職。
通常、GMと言えば学生のアルバイトなどが一般的だが、PYOは違う。
PYOのGMにはもう一つの側面があるのだ。
それは、“エージェント”としての役割。
人間の脳とコンピュータをリンクさせているという特性上、その安全性は絶対の物でなければならない。
また、ゲーム内のキャラクター情報はプレイヤーが装着する外部電脳で保持される為、特殊な知識を持つ人間であればデータの改竄も不可能ではない。
故に、PYOのGMには、それらシステム的に重大な問題や規約違反者の横行を取り締まる任務も与えられる。
その為、PYOのGMになる為には厳しい審査と試験が課せられ、世界ランカークラスのプレイヤースキルと経験、知識を要求されるのだ。
ところが、どうやら私はその審査を通っていた、という事らしい。
これで、晴れて私は、隔離された生活環境で一生分の食い扶持を確保出来た。
これから先、バラ色の人生が待っている。―――と、そう思っていたのだが……。