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彗駆の勘銃手〜オレは何しに異世界へ!?〜  作者: 諏訪秋風
第一章「彗星の如く駆けるは異世界」
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第3話 Part1「封印されしリボルバー」

奥の台座に出現したのは、この新緑の空間と対をなす紫苑に淡く輝く六角柱の障壁。厚みが全くないのに反して、何者も通すことはないと思わせる。


まるで、ここに眠る武器は世に出ては行けない代物とでも言うようで、俺のテンションは逆に上がった。



本当に手に入らない可能性もあるが、落ち込むのは色々試してみてからでいい。


何故なら…


「カノン!こいつは…!」



1人では無理でも!



「ええ、かなり(ふる)い結界ね。こんな魔源ソースも無い場所でなんで維持できるなんて、普通じゃないわ!」



仲間の助けがあれば!



「支援魔法とかは使えないか?強力な一点集中の物理攻撃でなら、多分突破できる!俺の《勘》がそう言ってるんだ!」




困難は超えられる




「勘!?推理は!?いや、でもフーガがそう言うなら…!…スゥー………ふぅ…。ジッとして」




というお約束パターンだ!!




「“筋力強化”“上位筋力強化”“攻撃力強化”“上位攻撃力強化”“戦闘力強化”“上位戦闘力強化”“反動削減”“超繊細”“弱点特攻”“戦女神の祝福“”英雄の加護”“武の極地”…えっと、“超反応”、あ“鬼神戦氣”に“乾坤一擲”も…」





いや、むしろオーバーキルだわコレ!!!



「ちょっ!?多い多い!!え、そんなポンポン唱えられるもんなの!?」


一人エレクトリカルパレードになった俺が慌てて制止する。


「えっ!?いやでも、普通…」


「普通じゃない事が好きなんだろ!?それに関してはもう分かってるからいいよ!この結界を破るにはその位で十分みたいだ。それより、コイツを借りるぜ?」


ちょっとドヤ顔で、拝借してきた金属製の燭台を腰のポケットから取り出した。持ち歩けるタイプで握りやすい上に、蝋燭を刺すために先端が鋭く尖っている代物だ。


これからする攻撃に耐えられるとは思えないが、装飾品の一つくらい必要経費として見てもらえるだろう…


「あっ!泥棒!!ちょっとそれはダメよ、返して!!!」


と思ってた時期がありました。




「ええー…、はい」



それにしては、先程のカノンの扱いは雑すぎる。


納得が行かないまま、俺は武器かりものをしぶしぶ返すと…


「“保護”“頑丈”“耐久”“凶器化”“能力付与”“刺突”“鋭利”“痛撃”“会心”“一点突破”!」




廃課金もチート持ちもビックリのエンチャントを施して




「なんてね、冗談よ。これで思いっ切りやっても壊れないし、コレも簡単に破れるわ」




ふふんとドヤ笑顔で武器を授けてくれた。

魔法の武器へと進化した古い燭台は混沌とした輝きを宿している。



「これはひどい」


想定外の圧倒的強化に苦笑して受け取る。


この娘いったい何者??

好都合っちゃ好都合なんだけど、異常を通り越してもはや超常なんですけど…。


でも、女神様とかじゃないみたいだしなぁ…。



さて、こんなチートですいませんが結界破らせてもらいます。


封印を施した先人達に謝罪しつつ、助走をつけるべく回廊の中ほどまで距離を取ったところで体の変化に気がついた。



力が漲る。血が滾る。

身体がいつもの半分くらいに軽い。

“千里眼”、使われた強化魔法のどれか、それに《勘》も加えて突くべき一点を探しだす。


中央やや右上に狙いを定め、魔法の刺突武器となった燭台を構え


踏み出す。



「……ッ!!」



殺人的な加速で30mの距離を2秒弱で駆ける。

右腕を肩口から引くように振りかぶり、牙突の構えで躊躇うことなく結界へと突っ込む。


自分でも驚くほど滑らかな動きが、加速によって生じた運動エネルギーを先端へ集める。このまま突っ込んでも、強化された筋力と反動軽減により自傷ダメージは少ないだろうと確信する。




\ガッキィィィィン!!/



鈍い金属ともガラスとも違う音が響く。

結界に突き刺さりヒビを入れるが砕けない。


追撃を瞬間的に決定するが、それは無意識での行動だった。


今の俺は熟練の格闘家のように、息をするように技を繰り出すことが出来た。

結界に刺さった瞬間、燭台を離す。

前に流れた右手を身体を回転させるようにしながら引き戻す。

踏み込んだ左脚を入れ替えるようにして、回し蹴りを寸分違わず燭台の底に食らわせた!




\ビシッィ!/




燭台の大部分が突っ込み、結界はヒビだらけ。


だが、まだ足りない。そう思うが早いか、


蹴り込んだ左足をそのまま踏み込み、渾身の右ストレートを叩き込んだ。




\パキャンッ!!/




硝子のように砕け散った光の破片は溶けるように消えていく。


繰り出した本人も信じられない早業三連コンボが魔法の障壁を打ち破った。


そして、その結果を受けてふと思う。


これだけ強くなれるなら、封印された武器、いらなかったんじゃ…。





…伝説の武器は欲しいので、考えつかなかったことにした。




「やったわね!!燭台も無事だし、良かった良かったー」


回し蹴りまで叩き込まれた燭台は傷一つ付かずに台座の下に寝転がっている。案外手になじんだので、サブ武器にしてもいいかもしれない。



結界を破ったことで安心、いや慢心していた。


次の瞬間にはもう結界は脅威的な速度で再生を始めていたのだ。



反応するも身体が重い。

いや、いつも通りに戻ってしまっていた。



そのまま成す術もなく結界が閉じる。



「くそっ!!やり直しかよ…しかも、燭台ぶきが中に行っちまった!…にしても、効果が切れるの早すぎるな。千里眼はまだ発動してるのに…なんでだ?」


効果が切れてなければ結界の内側に飛び込めただろう。それだけに納得いかない。


「あ……。それは“乾坤一擲”の効果よ。1回限りにする代わりに、全ての強化を更に強化するっていう…。使うの止めようとしてくれてたのに、止められ無くって……本当、ごめん」



カノンは申し訳なさそうにしていた。

だが、謝られても俺は何も言えない。


「…いや、支援を頼んでおきながら、最後に失敗したのは俺の不注意だ。お前が謝る必要はねぇ」


一度は破ったのだから、カノンの支援魔法はしっかりと、役目を果たしている。

警戒心を緩めた俺が悪いのだ。


「それより、今度はカノンの番だ。結界を解除する魔法とか、魔法を無効化する魔法とかはないのか?昔おばあちゃんに教えて貰った、古いおまじないでもいい。案外、そっちの方が封印解けたりしてな」


それだけ言っても責任を感じているカノン。

自分で自分を責めて欲しくないので、話題をすり替えることにした。


「…!分かった、やってみる!そういえば聞いたことがあるわ」


「おおっ!ホントか!?どんな意味の言葉だ?『吾を助けよ、光よ甦れ』とか!?」


「いや、そうじゃなくてこの結界のこと!昔は魔法がそんなに発達してなくて、人の持つ魔力も今よりずっと少なかったじゃない?だから逆に、自然から魔力を集めることには長けていたの。しかも、それを動力源として組み込む技術を持っていたらしいわ。繊細かつ長期的な作業を要するらしく、今の技術でも再現不可能らしいの。でもそうよね。だって、魔源がなくても動き続けるなんて凄いじゃない!?」



なるほど、わからん。

歴史は苦手だ。


「あ〜、要約してくれると助かるんだが…」


「つまり私の推測では、この結界は周囲の魔力を集めて半永久的に発生させられるってこと。失われた秘術がそれを可能にしているってわけよ」


「ほうほう、つまり、どうすればいいんだ?」


「ウフフ。まぁ、見てなさい!“範囲拡張”っ!そして“点在魔力吸収”!!」



そう言ってカノンが左手で魔法を発動させると


「おおっ!!」


「こうすれば結界が消えるはず!」


結界の周囲から魔力らしき光の粒が手のひらに集まってくる。そして、結界もだんだんと薄れ、カノンの言葉通り消滅してしまった。


「さぁ今のうちに取ってきて!燭台も忘れずに」


「でかした!!やっぱりお前すごいな!!頭の出来が違うわ。いい意味で普通じゃないなカノンは」


正面突破しか考えつかなかった脳筋な自分が恥ずかしい。


しかも、あれだけ超強化してもらいながら一撃では破りきれなかった。

脳筋(脆弱)もいいとこだ。

…なんとなく、さっき言っていた人の持つ魔力がどうこうという話が関係ありそうな気もする。



「(…そんな風に面と向かって言われると恥ずかしいけど…)ありがとう」


声が小さくて聞き取りにくかったが、お礼を言われた事はハッキリと分かった。


もの凄く嬉しくてニヤけてるので、今はちょっと振り向けない。こちらも口の中で、どういたしましてと言葉をもごもごさせた。


魔力が失われた室内は少しばかり暗くなった。

台座の上には古い木製のアタッシュケース。

と言っても、取っ手や鍵は見当たらない。



「直接渡さず、見ず知らずの誰かと協力しなければ手に入らないだなんて、神様も凝り性だなぁ…」



それでも結果的に手に入ったことに安堵しつつ、そんな思いを口にして蓋を開ける。



あくまでこの世界での姿なのだろうか。


見たことのない木製の

見たことのある拳銃ハンドガン

そこにあった。

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