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彗駆の勘銃手〜オレは何しに異世界へ!?〜  作者: 諏訪秋風
第一章「彗星の如く駆けるは異世界」
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第2話 part1「掟破りのお宝探し」

子どもたちを聖堂の奥にある教壇の前に集めた後、カノンと俺は教会右奥の階段を駆け上がっていた。


途中、二度も段差で躓き心配されたが、無事に鐘が備え付けられた見張り台へとたどり着いた。


直径4mほどの円形で、ドーム型の屋根で覆われている。吊るされた鐘は顔よりも大きく、余裕で街の外まで音を届けるだろう…。


……いや、街じゃない。やっぱりここは村だ。


見張り台の高さは三階建ての屋上ほど。だが、このあたりで1番高い場所だった。ここから見渡して、それとともに理解できた。



教会の前にあった街並みのような通りは、あの一本だけだった。



向かいの建物の裏はどうみても畑や牧草地で、その奥は豊かな森が広がっている。教会の裏も似たような光景が広がっている。

ここはいわゆる路村だった。



「ド田舎じゃねぇか!!」


「そうよ!?さっき言ったよね?何も無い村だ、って」


少し怒っていた様子のカノンは深呼吸をし、自らの両目を覆うように右手を顔に被せると……


「“千里眼”!!」


魔法を発現させる。

彼女の手の中が青白く光り、指の隙間からそれが漏れる。効果は名称そのままだろう。



そのとき《勘》が働いた。

眼鏡の代わりになるかもしれない…と。

理由も適当なものが思い浮かぶ。


「その魔法、俺にもかけてくれ!2人で探す方が早い!」


俺は駆け寄って提案した。

緑の瞳がほのかに青く輝いているカノンが、キリッとした表情で頷いたのが分かった。

そしてそのまま、右の手のひらを俺の両目の前に来るようにそっと置いた。



《勘》が目を閉じるよう忠告するより早く、カノンの魔法が発動する。


「“千里眼”!!」


「あああああああ!目が、目があああ!!!!」


「えぇ!?なんで開けてるの!!?馬鹿なの!?」


俺は、某大佐のように絶叫した。


「い、いや…。…この方が効果が増すかなと思って……。」


「あー…確かにそういう人も、たま〜にいるけど…。流石に、目の魔法のときはやめといたら?」


「うあぁ〜…次があれば、そうする…。」



未だチカチカする目を恐る恐る開いた。


俺の《勘》はやはり正しかった。

見たこともない美しく明瞭な世界が飛び込んできたことで思わず鳥肌が立つ。



「すっげぇ!!遠くまでくっきり見える!!凄いな、カノン!ありがとう!!」


興奮して偉大な魔法使いの方を見ると、


そこには「えっ!?」と声を漏らし、照れくさそうに頬を赤らめる、新緑の美少女がいた。


さっきまで輪郭がハッキリしてなかった少女は、敬意と興奮の補正も受けて、先の魔法以上に眩しいものへと進化していた。農作業はあまりしないのか、肌は白く透き通るようだ。長髪と瞳の鮮やかなグリーンは一瞬エメラルドを連想するも、俺の乏しい知識では該当しうる宝石はない。神官の胸を見るというのは気が引けたが、服の上からでも年相応にはあるのが分かり、食生活の豊かさを物語る。褒められたことで、嬉しそうで恥ずかしそうな表情になっていて男の幸せを感じとる。


……この目は細部まで見通してすぎてヤバイ。

裏にある物事の本質まで見通しすぎてヤバイ!

今度はコミュニケーションに支障が出る!!!



「わ、私の魔法なんて…!!こ、これは普通のことで、そんな風に褒められたの……は、初めてというか、なんというか……あの、えっと…」


なんか知らんが困ってる。


うん、可愛い。

これで何とも思わない奴は人間じゃないな。



……あれ?もしかしてよく見えてなかっただけで、カノンのお姉さんも超美人なんじゃないか!?

あの素早いおじさんも、見ればハリウッド俳優並のイケオジなのでは!?


なんとなくそう思ったのだが、それを考えるよりも今はやるべき事がある。



《勘》に任せて適当に指を指す。

普通は相手の意識を逸らす技だが、俺の場合は…


「あー!!あれはなんだー!?」


「え!?あ、あれは“素早い”おじさん達!?」


話を正しい方向へと進めるの…だ……



ちょっと待った。



「…今、なんて言った!?」


「“素早い”おじさんよ!!ラ・ニ・ッ・シュおじさん!この村最速の専業農家のおじさんよ!…他にも“硬い”おじさんに“巧み”おじさん、“紅葉”おばさんもいるわね」


指をさした方角では土煙が巻き起こり、何が起きているか分からない。だが、荒れ狂う土煙の中から教会で俺を囲んでいたおじさん達が飛び出てくるのが見えた。


やはり、遠くからでもハッキリとわかるイケオジだった。



…ていうか


「ほ、本当にラニッシュおじさんだったのか…!!いや、それより、あれは何してるんだ!?収穫でもしてるのか?」


魔法を唱えている気もするが、知識もないし視界も悪いため全くわからない。


これがこの村伝統の収穫風景です、と言われても納得してしまう。


「そんなオチ嫌よ!……じゃない。敵襲よ、敵襲!!みんな何かと闘ってるもの!…今のところ互角かそれ以上ね。でも、魔力もいつまで持つか…」


今、オチって言ったなこの…。


というか、村に住んでるのに分からないのか?

敵襲…って村人数人で対処できる事なのか?

ほかの村人達は今、どこで何しているんだ?


疑問は尽きないし、何が出来るか分からない。



だが、カノンの言うとおりだ。

状況が悪くなる前に…



「助けに行こう」


見合って頷き、俺達は急いで階段を駆け降りる。


「村に護り手はいないのか!?そもそも人は何人いるんだこの村は!」


「100人ちょっとの小さな村よ!昔はもっといたけど、近頃はみんな都市部に移住してるわ!私も家が教会じゃなければ今頃は……!!」


「始まりの村は過疎化が深刻とは、なかなか現実的だな…逆にリアルな実感が湧くぞ…。」



移動の最中でもしっかり情報は集めた。

護り手どころか人手が足りてなかった。

ゲーム風にいえば、彼らの救出が最初の戦闘イベントかな。まだ丸腰だけど。



そうこう言っている内に聖堂に戻ってきた。子どもたちは心配そうにこちらを向くが、泣いている子はいなかった。


……さっきの自分が情けない。

だが言葉と視界は解決した。

ようやくストーリーが進む!!

よっしゃ、今から本気を出す!!!


「おい、この教会に武器はないのか?」


いや、あるのは分かってる。

なぜなら《勘》がそう言っ……


「あるわけないでしょ!なんで教会に武器があるのよ!?そもそも使う必要がないから、そんな物はこの村にすら無いわ」




…あれっ!?


ガーンだな。出鼻をくじかれた。

って、ふざけてる場合じゃない。


使用許可を貰うための言い回しのハズが、これまた予想外の方向に話を持ち去ってしまった。

話がっ!進まないっ!!



つまり、今から武器を探さなくてはならない。

初めて来た教会で、どんな武器かも分からず…。


─もしも《勘》で探し当てられるなら、とっくに眼鏡を見つけている。


上手く使いこなすために《勘》には幾つも欠点があるのを知っている。


そのうちの一つに

「選択肢が多いと機能しない。」

という欠点がある。


選択肢が10を超えるとあやふやになり、20もあると全く分からなくなるのだ。

そもそも、今ある選択肢の中に答えが含まれていないことも少なくない。



だが、やるしかない。

手当り次第に探すのだ。


幸いなことに、ここには人手がある。


大切なものを隠したりおかしな物を発見するのが得意な、小さな小さな人手がある!


「おいカノン!ここはお前ん家なんだよな?」


「??そうよ?武器がないのはよく知っ……」


「すまんが、手当り次第に荒らしてもいいか?」


「ちょっ!?子どもたちもいるのに、なんて事を

……!」


「ん?その子達にも手伝って貰うんだが?」


「はいいい!?え!な、なにをする気なの!?」


「………隠された武器を探すんだよ。今の流れで、どうすればそうなる…。」


勘違いを見抜くのは造作もない。

少しでも違和感があれば、即座に見抜ける自信がある。


だが、この勘違いの仕方…。

本当にこの娘、普通じゃない……。



ていうか、子どもがいなきゃ拒否しなかった可能性があるのか…。いくらチョロインでも、そこまで堕ちるのは早くないぞ。


「えぇ!?あ、そっちね!?分かった、別に探しても問題ないよ!」


「ありがとう。ということで、みんな!宝探しタイムだ!この教会のどこかに隠された武器を探し出して、おじさん達を助けるぞ!」


「「「おー!」」」


俺の体操のお兄さんみたいな宣言をうけ、こどもたちは元気いっぱいに散らばっていった。


「私も小さい頃は、よく宝探しごっことかしてたな〜。それらしい物は何もなかったけど……」


神官カノンと俺は、そこら中の絨毯や装飾品をひっくり返す。いや、正しくはカノンがひっくり返してる。



基本的に無神論者の俺はともかく、彼女が教会を荒らすのを躊躇しないのはどうかと思う…。



程なくして、1人の少年が「なんかあったよー!!」と明るい声でみんなを呼んだ。

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