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彗駆の勘銃手〜オレは何しに異世界へ!?〜  作者: 諏訪秋風
第一章「彗星の如く駆けるは異世界」
22/24

第7話 part2

六月の第2週までの一ヶ月の間、諸用により投稿が不安定になります。出来る限り更新しますが、かなりお待たせすることになると思います。申し訳ございませ。

「はぁ〜…お湯に浸かるのは久しぶりだな……」


「ん〜…僕は昨日ぶりだな〜」


「そりゃそうでしょう…」


「そうだね〜」


気の抜けた声で言葉を交わす赤と黒の青年は、くつろいだ体勢で半身浴をしている。クライスは騎士にしてはやや細く、元テニス部の風雅と体格は同じくらい。二人とも俗に言う細マッチョな体型だ。


ここはケルシェオニク村の公衆浴場。

有名な温泉地ヴォイヤージュから液体転送菅を通して疲労回復の効能を持つ源泉が送られている。天然でこの色なのか、それとも入浴剤が入っているの、これまた澄んだ緑色だ。



「緑色がこの村の象徴なんですね〜…」


「うちの教会も緑一色だしね〜」


「教会が…りゅーいーそー…か」


「なんだいそれ…?」


「えっと……必殺技です」


「へー!見てみたいな〜」


「あー…残念ながら、これはそう簡単に出せるものじゃーないんですよ…」


今日は朝から頭をフル稼働させっばなしだった。

少しでも休ませるため、俺は考えるのを止めた。


そのせいでさっきから会話に中身と言えるものがない。だが、どうせ30分後にはまた頭を働かせなきゃならない。

今はこれでいいのだ…。




──カノンは心配事が消えたこともあって、嬉しそうに歓迎会の件をシュロンとクライスにも伝えた。


その内容を聞けば、カノンとシュロンの話には明らかな矛盾が生じるはずなのだが…


「じゃあ、その前にフーガ君とお風呂行ってくるね!お風呂でじっくり考えて、絶対に思い出すよ!」


彼は気がつかなかった。


毒気が抜かれるほど真っ直ぐなその返答にとうとうシュロンが折れた。

というか、諦めた。


疑うという言葉を知らないのではないか。

そう思えるほど純粋な彼は…


「ええええええっ!!?フーガ君、異世界から来たの!!?凄いじゃん!!そういうことは先に言ってよー!!それにしてもどうやって来たんだ!?あ、いつまでこっちにいられるとか期限はあるのか?!はっ!そうだ!!この村の案内をしてあげないと…って、もう真っ暗だった!」


かなーり


「なーんだ!そっか〜!!お世話になったのはついさっきだったんだね!それじゃ別に、フーガ君のことが分からなくても良かったんだね〜!そうそう、フーガ君!シュロンを助けてくれて本当にありがとう!お礼に僕に出来ることならなんでもするよ。いや〜それにしても、またシュロンの話を早とちりしちゃったな〜。反省反省…」



説明を飲み込むのに時間がかかった。



とりあえず、俺の歓迎会は教会ここで20時から行われるとのことだ。


教会で騒いではいけないと小さな子どもに怒られたことは記憶に新しい。俺の頭の中ではおごそかで騒がしくならない、形だけの歓迎会みたいなものがイメージされていた。


どうせならどんちゃん騒ぎの歓迎会の方が嬉しいのだけど。…式典の後に宴会開いてくれないかな。

大勢に囲まれる事になる歓迎会まであと1時間。

それまでに今、出来る限りのことをしよう。



─というわけで、お風呂に来た。


着替えはクライスに借りることになった。

風呂に入る前に気がついたのだが、この世界にも正確な時刻の概念があった。


脱衣場で発見したその時計は、文字盤が8までしかなかった。当然、気になってクライスに尋ねたところ針が3周で1日だそうだ。驚いたことに、この世界でも60秒60分24時進法で時は刻まれていた。

だが、一秒の長さが少しでも違えば1日の長さは大きく変わる。時間がある時に、体内時計の秒感覚と照らし合わせて検証してみよう。

そんなことを思いながら大浴場の扉を開けた。



疲労感が解きほぐされ抜けていく。

これまで味わったことの無いほどハッキリとした疲労回復感。

この効能は聞いていた以上だ。



「フーガのいた世界には、僕らの知らないことが沢山あるんだろうね〜」


「それはお互いさまですね〜。俺もこの世界のことはなーんにも知らないですし」


「ははっそうだね、そのうち分かるよ!それよりも、僕は君の世界のことを知りたいな!というより、行ってみたい!!行ってみたすぎる!!!」


時々、クライスが年上ということを完全に忘れることがある…。この世界の人特有の実年齢よりも若い見た目…よりもさらに低い精神年齢のせいだ。


「うーん……行き方、っていうか帰り方?が全く分からないんですよね〜。もし行けたとしても、大混乱になる未来しか見えないです」


クライスが日本に来たら、間違いなく世の女性達がパニックになるな…。パッと見、異世界の王子様だもの。残念ながら、もう奥さんはいるけど。


「っと、そうだ。俺がいるせいで、こっちでも大混乱になったりしないんですか?」


「どーだろうねー…まぁ確かに、最初から街の方に来ていたら、大混乱になってたかも…」


「街ですか…。そこって、どんな様子ですか?」


「様子?うーん…ここより賑やかで人も多い…くらいかな」


「荒れてたりはしないんですか?」


そういう俺は、荒くれ者の冒険者がうろつく街を想像していた。


「そりゃ〜普通の街だし、今の時期は荒れないさ。フーガのとこではどうだったの?」


この世界の普通が分からないので、街の想像はそこで打ち止めとなった。


「俺の国は世界でも治安がいい方でした。けど、どんな街にも悪い連中はいて、裏路地とか見えない所は荒れてましたよ。イベントとかがある時期だと、表でも荒れました」


以前、ハロウィンイベントが駅前の通りで開催されたことがある。その際、バイト先のコンビニに超大量のゴミを置き去りにされた事件を思い出し、そう付け加える。あの時は手当り次第に、そういう仮装だと言い張ってゴミ袋を被せてやろうかと思った。


「そうなんだ〜!そういう連中は、長い休みにしか見たことないなー」


「それは…ずいぶん違いますね。なんで、長い休みだけなんです?」


「そりゃ、そういうことするのは決まって学生だしね。帰省して問題を起こすまでが、彼らの夏休みだよ」


「…へー」


ちょっと。のぼせてきたかな。

今、なにかを疑問に思ったが考えがまとまらなかった。


あれ?入ってから何分経った?

まだ10分も経ってないような…?



「フーガ?大丈夫?のぼせてない!?」


心配そうなクライスがそんなことを言った。


「いやいや、まら入ってすぐですよ?全然、大丈夫ですよ?」


「いや!?全然大丈夫じゃないって!!」


なんだ、人を疑うこと…出来るじゃん…。

ちょっと安心、した……。

安心したからか…眠く……


──────────────────



頭から冷水をぶっかけられ、意識が戻る。


「冷たっ…!!えっ!?な、何!?」


いつの間にかお風呂から上がって、脱衣場に横になっていた。だが、記憶に全くない。


心配そうに覗き込む、クライスと男の人3人が目の前にいた。


「ほならっ!起こせただろ?賭けはオレの勝ちだなっ!」


いささか乱暴すぎる気もするが…。まぁいいか」


「ちょ!?よかないでしょ!!オイ、誰が水ぶっかけていいって言ったんだよ!そんなの誰だって起きるわっ!!」


褐色の肌に銀髪の男の言葉に、深緑の髭を蓄えたマッチョなおじさんと金髪碧眼の男がそれぞれ返答する。この村の人たちだ。


「まぁまぁ。無事にフーガが起きたんだし、その辺にしておきなって。フーガ、気分はどう?もう動いても大丈夫そう?」


クライスの言葉を理解できる頃には、俺は現状を把握していた。


のぼせて気を失ったのは初めてだ…。


この世界に来てから3回目の目覚めは、手荒かったげ歓迎されている感じがして…そんなに嫌いじゃなかった。

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