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「なんて読むの?」
ヤマキが案内した家の表札には道城と書かれている。
「どうじょう?」
「みちしろだよ。仲間っていうのはここの家のやつでな。裏に墓があるんだが、そこから出てきたんだよ。自分もそうだったって知ってはいたんだが、見るになかなかのホラー映像だったぜ」
たしかに、土から這い出てくるあの光景はいまでもはっきりと覚えている。
あまりに衝撃的すぎる光景だった。
「ああ、やっぱりいないか。そう簡単には済まないよな」
仲間はどうやらいなかったらしい。
中からため息をつきながら出てくるヤマキは、なにやら紙に書き残しをしているようだ。
「よし、これで大丈夫だ。さあいこうぜ」
「どこに行ったかわからないの?」
コトコの疑問にヤマキは首を振る。
「仇を探していたのは知っていたが、どこにいるかなんてわからないといつも言っていたしなあ。探しに行ったのなら、あいつ自身もどこに行ったのか予想がつかない。わからないことだらけってやつだ。さほど遠くに行っていないとは思うんだが。まあ、あいつも俺たちと同じだから、蜂なんかに負けやしないしな。そのうち会えるさ」
土から這い上がった人間――彼らが揃って蜂に立ち向かえるというのなら、もしかすればコトコも同じような力があるということなのだろうか。
本人が気づいていないだけなのだろうか。
「あの巣になにかあるのか?」
「えーっと……たしか――」
巣の破壊。
それはあの人に言われた試練だ。
それをパスして初めて、この世界は変わり始める。
平和へと向かい始める。
しかし、それだけではだめだ、と彼女は言っていた。
あの閉ざされた空間の中で眠っていたもう一人の彼女――それをこの時代から消し去ることで、この時代の危機は終わるのだという。
「――そんなかんじ」
「……それで終わるのなら、そうだな。それもいいかもしれない」
ヤマキはなにか意味ありげに言葉を漏らすが、それ以上のことを言う様子はなかった。
雪が少し大人しくなってきたところで、僕たちは歩き出す。
あの巣の中に入ることは簡単じゃない。
中に入ったあと、どのようにして巣を破壊するかも考えていない。
そして、たどり着いた先にいる何かに、僕はどう立ち向かえるのだろう。
「まだ時間はあるよ」
コトコは励ますように言った。
まだ日も落ちていない。
そうだ、まだ時間がある。
ゆっくり考えていこう。




