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気になるのは絵のサイズの違いだった。
剣、杯、杖、硬貨の4枚の絵画と、壁にある3枚の絵画は大きさが違う。
2つを選んで壁に嵌めることは、なにか間違っているような気がした。
「ん?」
「ノゾムなにかあった?」
「ああ、ここ見て」
2つの窪み。
そこにはただ窪みがあるだけだと思い込んでいたが――。
「右側の窪み――3枚目、女の子の絵の左隣だ。窪みの下になにか傷がある」
「ほんとだ」
なにかが引っかかったのか。
よく見るとその窪みの下側は少しばかり欠けてしまっていて、これでは絵を嵌めたとしても落ちてしまうだろう。
「違うな。ここには絵があったんだ。4枚目の絵が」
「じゃあどこに?」
「持ち去られたか、あるいは……」
「あるいは?」
部屋を改めて見渡してみる。
通ってきたはずの扉はすでに閉じてしまって、どこからはいってきたのかもわからなくなっていた。
閉まった音もせず、あったはずの扉がなくなっているのだ。
まったくの別空間に急に飛ばされたような――。
この部屋には壁全てに意味があるのだろう。
嵌められている絵も、きっとそうだ。
「この傷、床まで続いている。床まで行く途中で切れたわけでもない。床に落ちたのなら、跡がこうして床と壁の境まで残っているのは変な話だ」
「つまり、その……この下にまで続いているってこと?」
床を指差して、琴子は苦笑いを浮かべる。
答えは見つかった。
あとはそれまでの過程である。
「剣、杯、杖、硬貨――この4枚の絵と同じくらいの窪みが床にないか見て回ってほしい」
「あ、あった! ここ!」
覗き込んでみる。
そこには杖のマークが描かれていた。
「あと3つ――」
全部で4つ窪みを見つけることはできた。
絵の数と一致する。
「結局二択かよ!」
「わっ、急に大きい声ださないでよ!」
4つの窪みのうち、2つにはマークがあった。
杖と硬貨。
絵もその2つを当てはめてみるとぴったりだった。
あと2つがわからない。
削れてしまったのか、マークが消えてしまっているのだ。
「間違えたって大丈夫でしょ。血もないし」
「あのなあ琴子。壁の絵のトラップは、おそらく触れると――」
小石を絵に向かって投げてみる。
触れると同時に壁からいくつもの槍が飛び出してきた。
「ま、あれで串刺しというわけだ。だから床に血と骨がある。だって床に穴が空いているわけじゃないからな」
「……ちょっと、やめてよね。建物の中でスカイダイビングとか、冗談にもならないじゃない」
「まあ可能性の話だ。よし試しにこっちを……」
「ちゃんと考えてよ!」
もちろん考えなしにそうするわけではない。
「これにヒントはないんだよ。マークっていう答えが本来はあったんだから」
「でも……」
僕は絵を床に並べた。
「じゃんけんしよう」
「なんでよ」
「勝った方に運があると考えるか、負けた方に運が残っていると考えるか――琴子はどう思う?」
「それっていま必要な話?」
「ああ、すごく大事な話だ」
琴子は少し考えるような素振りを見せたあと
「後者ね。やっぱりみんな平等であってほしいし」
「よし。じゃあ説明する。じゃんけんに負けた方から見て左の絵を、じゃんけんに負けた方から見て左側の窪みに嵌める」
ふたつの窪みと絵を見比べて、琴子はため息をついた。
「さっそくってわけ? はやくない?」
「仕方ないだろ。ほら、じゃんけん――」
「げ……」
「ほら、運が残ってる人。嵌めてこいよ」
琴子は絵を拾い上げ、とぼとぼと歩き出した。
「わたしのこと恨まないでよ?」




