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「変な絵ね。こういうのって、壁画って言うのよ」
壁に刻まれた絵を指でなぞって、琴子ちゃんは言う。
おそらく人だろうか、大勢の人同士が固まって向き合っているのがなんとなくわかる。
「戦争か。まあいまじゃそんなこと信じられないけれど、大勢の人がいれば争いもあったというところだろ」
「じゃあ、こっちは?」
横たわった人が何重にも重なって山のようになっている。
死体の山だ。
「戦争の結果、人は大勢死んだ。それで次は……まるでなにかから逃げている絵だな」
「よく見て。この逃げている人たち、服装がバラバラよ。敵味方関係なしに同じ方向に逃げて行っているわ」
人間に対しての脅威といって間違いないだろう。
争っていた人間たちは、そこで戦争をやめるしかなかった。次は何だろう。
「神様?」
膝をついて祈る人々の中心になにかが浮かんでいる。
人のような身なりだが、羽がある。
人というにはあまりに違うようだが。
「羽か……」
まだ一度しか見たことのない蜂のようなあれは、こうして人に崇められるようなものではないだろう。
そもそも、人のような絵で描かれるのも妙な話だ。
あれとは関係がないのかもしれない。
「ふふ、なんだか楽しそうね。いつのまにか敬語もなくなってるし」
「あ、ごめ……んなさい」
「いいわよ。だっていまは同じ年くらいなんでしょ、見た目は。だからちゃんだってつけなくていい」
「……わかったよ」
壁画はそこで終わり、先には部屋が見えた。
扉があるわけではない。
「あのさ、琴子。あの部屋に入るまでにひとつ決めておこう。もし、右か左かそんな二択があって選ぶ方法がない時、どちらを選ぶ?」
「左ね」
「わかった。ちなみになんで左なんだ?」
にっこりと笑う。
きっと意味なんてないのだろう。
先へ歩いていく彼女の姿が、どこか遠く感じた。




