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まず死んだのは親父だった。
食料を探してくると言って、二度と戻ってこなかった。
生きていると考える方が変な話だ。
次は兄だった。
二人で狩りに向かったら、足を滑らせて崖から落ちた。
最後は母だった。
「はぁっ……!」
首に残る締め付けられた跡が、じんわりと痛みを伝える。
母を殺したのは僕だった。
息苦しさに目を開け、首を絞める母の姿に気付いた僕は、いつのまにか母を殺していた。
兄が死んだ次の日のことだった。
昨晩の会話を思い出す。
二人でがんばろうと言い合ったあの会話には、嘘しかなかったということだろう。
僕は一人になった。
これからどうする。
窓の外は吹雪いていた。
食料はなんとかもつにしても一週間といったところ。
家の中は外よりは安全だというだけで、一人でいるには辛いところだ。
思い出したくないことも思い出してしまうだろう。
「ま、なんとかなるさ」
親を殺すような人間だ。
それこそなんでもできるというものである。
「そうだ、旅に出よう」
そんなことを言ってみる。
こんな時代にそんな妙なことを考えるのは僕くらいなものだろう。
外にある危険に対抗する手段はない。
隠れてこそこそ見つからないようにすることで精一杯だ。
次に死ぬのは僕だ。
ならばその時まで、せめてこの世界を見て回ろうじゃないか。
自分が生きてきた時代というものを。
これからどうなるのかと考えながら。
「よっしゃ」
僕にはわからないことが多い。
外をうろつく人をかけ離れた存在や、蜂のような殺意の塊のようなもの。
どれだって、僕にとっては危険なものだという認識で、他にはさっぱりだ。
でもまあ、知らないからといってなにかが困るわけでもない。
死ぬ時は死ぬし、死ななければ死なない。
そういう時代だ。
まあせめて、崖から滑って死ぬような終わり方は御免だ。
そうだな、もし死ぬ時が来るとしたら――いや、そんなことを考えるのはやめておこう。
そういうことは死にそうになってから考えればいいことだ。
「ふむ。じゃあ今考えるってことなんじゃないのか?」
苦笑いを浮かべて僕は立ち上がった。




