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彼は写真を見つめていた。
画面に映されたままの4人の子供達の写真だ。
彼はぼんやりとその写真を見ている。
見ているだけ――なにかを考えているのかもしれないが。
彼は自分の手のひらに視線を移した。
握っては広げて、感覚を確かめるように。
「ヒビキさん、でしたね。なにか替えの服ってありませんか。ずっとこの服だったので」
「……そこの棚にいくつか入っているよ。少し大きいかもしれないけど」
「いまは何を?」
服を着替えながら、調べ物をしているヒビキに声をかける。
「A762年9月16日。私が生まれたのはA763年だったんだよ。大門――ああ、この時代の危機の元凶でね。なにか演説のようなものをしたようだが、映像が残っていないかと思って――よし、あった」
袖を折り曲げてなんとか服を着る。
彼にはまだ少し服が大きかったようだ。
「おれも見ていいですか?」
「構わないよ」
映像がスクリーンに映される。
「なにか気になるところがあったら言ってくれると助かるよ」
異常なまでに静かだった。
あるはずの音がない。
映像には一人の男が立っている。
『これは私を裏切ったお前たちへの宣戦布告だ。どこにでも逃げるがいい。どこにでも隠れるがいい。36年だ。滅ぶべきはお前たちだ――――――――』
「36年か。A798年9月16日が丁度この映像から36年後。氷河期が来るとずっと言われてきたそもそもの原因はこれだとして。そもそも隠していることが多いから、国民には氷河期ということしか伝えられなかったのだろうね」
「36年になにか意味があるんでしょうか」
ヒビキは腕を組んで考える。
「いや、A798年の方に意味がある可能性もあるからね。いや、うん……?」
ヒビキは何かに気づいたように、目の前に立つ少年に目を向けた。
「君はなんというか、やけに落ち着いているね。まるで子供じゃないようだ」
「よく言われます」
彼は乾いた笑い声をあげた。
「名前は確か、カナ――」
『もう一度言う。滅ぶべきはお前たちだ』
『「生き残る権利があるのは、立ち向かった人だけだ」』
映像の声と、彼の声が一致する。
「偶然ですかね。私には君の声が映像と一致したように聞こえましたが」
「あなたはどちらですか。ヒビキさん」
少年は笑う。
その笑みに、子供のような無邪気さはなかった。




