表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
4章 終わりを求めて
76/147

「……」


 エッジとマザー。

 マザーに関しては、まだどのような姿をしているのかわからない。

 ただ、ナナカの前に立っているその生物が、マザーというものではないことは一目でわかる。

 巣に卵がないことも異常だったが、その生物がこんなところにいるというのは一番の異常である。

 それは彼女自身もそうであったが――。


「いらっしゃい」


 エッジを従えた男性は、おそらくは50を過ぎたほどだろうか――エッジの尾を撫でて、その姿から共存していることが一目でわかる。

 彼は間違いなく普通の人間だ。

 ナナカはその光景に恐怖した。

 人とエッジに共存はありえない。

 敵だとナナカは判断した。


「待ちなさい。何も争う必要はないだろう。特に、君のようなものにとっては」

「……何が言いたいんです」

「君はこちら側。人間の味方をする必要はない」


 手を差し伸べる男に、悪意のようなものは全く感じられなかった。

 何より自分自身が見透かされているのが恐ろしかった。

 自分のことは誰以上に自分が知っているはず。

 自分の知っていないことが、その男にはわかっているというのだ。


「私は大門。どこにでもいる研究者だ」


 敵陣にいるのだから、そこにいるのは全て敵だ。

 大門という存在を知らないナナカでも、彼の異常性が、危険性が――はっきりと感じ取ることができた。


「ついてきなさい。君にはこの世界を知る義務がある」


 伸ばしていた手を戻して、大門は奥へと進んで行く。

 彼のすぐ後ろを飛んでいるエッジが振り向いてすぐに攻撃をしてくる可能性がある。

 いや――と、ナナカは考える。

 彼は危険人物だ。

 このまま素直についていく必要もないし、そもそもこの場にいるエッジは彼の両側を飛ぶ二匹のみ。


「いける――」


 片方を一撃で破壊し、一対一なら負けはない。

 あとは、あの男を取り押さえる。


「やめておいたほうがいい」

「……」

「そんな怖い顔をしないでおくれ。そうか、ならこうしよう」


 男が手を振ると、隣にいたエッジたちは離れていく。


「これで、少しは信用してくれるかね」


 大門は柔らかい笑みを浮かべたが、ナナカの表情はかたいままだ。

 彼は手を振るだけでエッジに『離れろ』という命令を与えた。

 ならば、逆もできるはずである。

 もうナナカに逃げ場はなかった。

 取り押さえられるのは自分のほうだったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ