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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
3章 名前を呼んでほしい
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13 記憶の海の果て

 気づけば、瑛士は雪の上に倒れていた。

 揺れる視界の奥に、白銀の何かを捉える。


「さあ、食べなさい」


 そいつが話しているのかどうかはわからない。


「か……」


 まだ幼い少年の姿に、見覚えがある。

 服の胸のあたりは、血で滲んで汚れてしまっている。

 赤いはずの血液には水色の液体が混じり、


「さあ」


 白銀の何かに頭を捕まれ、抵抗することもできず、その時を待っていた。


「か」


 口を開けて、少年は待っている。

 おれは、俺は、待っている――。


 貪るように、目に入ったものを口に入れていた。

 目に入るものは全て、食べ物だった。

 そして次第に、食べることに飽き、狩りを楽しむようになった。

 もうその頃には、記憶がどこかに行ってしまっていたのだろう。

 自分の中に入ってくる何かに抗って、そうして、自分を見失っていたのかもしれない。


「大丈夫?」

「……」


 そう声をかけてきたのは、彼女が初めてだっただろう。

 何年も人間に出会わなかったから、それが何なのか理解できなかったことを、エイジははっきりと覚えていた。


「私はミドウ。君の名前は?」

「…………エイジ」


 自分にあった名前は、それだけだった。


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