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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
3章 名前を呼んでほしい
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12 記憶の海5

 だれかのすすり泣く声が聞こえた。

 手のひらに感じるひんやりとした感覚――瑛士は目を開けた。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


 何度も同じ言葉を紡ぐ――それは、奈々嘉だった。

 ボロ付いた洋室のベッドに横たわる瑛士の手を握って、奈々嘉はひたすらに泣いていた。

 首筋にある傷から流れる血――それは赤ではなく、水色の混じった濁りのある色だった。

 皮膚は青白く、ひと目に見てもその異常さはわかってしまうほどだった。


「奈々嘉」


 瑛士は握られている手を強く握り返した。

 やはり、奈々嘉の手はひんやりと冷え切ってしまっていた。

 瑛士はなんとなくその意味が分かった。


「これが夢じゃないなら……僕は言わなくちゃいけないことがある」


 瑛士は奈々嘉の潤んだ目を見つめる。

 しかし、瑛士の声は届いておらず、奈々嘉は泣き続けた。

 手に力も、入っていないのだろう。


「これからあたし死ぬんだ……死んじゃうんだ……」


 首を撫でて、奈々嘉はまた嗚咽を漏らす。


「瑛士くんなんて言うかな。怒るよね。そうだよね」


 鼻水をすすって、大きく息を吐く。


「茜ちゃん、ごめんね」


 なにかが頰に触れて、奈々嘉は部屋を飛び出していく。

 止めることはできない。

 もう過ぎたことなのだ。

 これから起きることを、瑛士は知っている。


 記憶の旅は、もう終わりに向かっている。


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