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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
3章 名前を呼んでほしい
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8 記憶の海1

「私たちは家族だよ。国っていう大きな家のね。自分たちの家のことは、やっぱり家族みんなで決めないとね」


 そんなのはおかしな話だ。

 家族というのは他人同士でなれるものじゃない。

 瑛士はそう言い返す。


「両親とあなたの繋がりって『血』だけだよね。それがなかったら他人でしょ? そもそも両親同士だって、もとは他人同士なんだよ?」

「ふむ……」

「他人同士でも家族になれるよね?」

「でも――」

「だよね?」


 こう押し切られてしまうのは男としてどうなのだろうかと、彼はいつも思う。

 そして、茜はいつものことように、彼に語りかける。


「あたしたちは家族として、助け合って生きていかなくちゃいけないの。人間の命っていうのは、いつもそうやって、繋がって――継って――ずっと続いてきたし、これからもずっと続いていくの」

「でも二十年たてば――」


 氷河期が来る。

 それは避けられないし、助からない。

 人間に、その死の時代を超えることはできないのだ。


「二十年もある――あたしたちはまだ、繋ぐ方法を探しているだけなの」

「無理だよ、そんなの」


 彼は知っていた。

 どうやっても、人間の技術ではその死の時代を超えることはできないことを。

 自然燃料も尽きた時代――これ以上の技術進化を求めることはできないのだ。


「無理じゃないよ。いつかきっと、家族が助けてくれる」


 彼女は迷いなく、笑ってそう言った。


「だから、お別れしましょう、瑛士」

「どうして? いいじゃないか、僕たち四人で一緒に暮らせば」

「だめよ。別々に生きなきゃ。いつお別れになるか――死んじゃうかわかんないんだから。ずっと一緒だったら急にお別れになった時に堪えられない。だから、もう会うことはないって覚悟した上で、お別れしましょう。また会った時は、再会を喜びましょう」

「そうか」


 瑛士は納得して、頷いた。


「瑛士は奈々嘉を守らなきゃ。妹みたいなものじゃない」

「あいつは、そうか……僕が守らないといけないのか」

「そうよ。あたしの後ろをずっとついてきて、今になっては言ってることまで一緒だけど。それでも、あの子はきっと、弱いままだろうから。あたしには馬鹿兄がいるから大丈夫。心配しないで」


 茜はそう言って、手を振った。


「大事にするからね、これ」

「……要に言えよ」


 誕生日にプレゼントを渡すのが恥ずかしくて、要に渡してもらったのだ。

 瑛士からのものだとは知らないはずだったが。

 今にして思えば、彼女は気付いていたのだろう。


「そうだね、じゃ」


 それが最後の別れではない。

 その後何度も再会している。

 ただ、瑛士にはその記憶がずっと根強く残っているのだ。


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