7 自身の喪失
エイジがカナメを連れて基地に入ると、入り口ではヒビキが待っていた。
ちらりとカナメを見たが、すぐにエイジのほうへ視線を向ける。
「エイジさん、すぐに来てください」
「わかった。カナメも付いてこい」
カナメは頷くと歩いていく二人の後を追った。
「エイジさん。あなたに聞かなければならないことがある」
「俺もだ。お前に聞きたいことがある」
「あなたの父親はなにをしていましたか?」
「エッジの毒はまだあるのか?」
二人して質問をぶつけるはいいが、それでは話が進むわけもない。
ヒビキはまずエイジの話を聞くことにした。
「まだあります――が、いったい何に」
「いま俺たちには羽が必要だ。誰かが、進化を受け入れなくては」
「……正気ですか?」
ヒビキはエイジの言っていることをすぐに理解した。
「Eはガラス人間にガラス人間の肉を与えた。そして、羽を手に入れた。あの時、扉を破壊して入ってきたあいつは、意識というものがあった。いま必要なのはあれだ。いや、もし、お前が隠し続けているDにもう一つの答えがあるなら話は変わってくるが」
「Dは……」
「人間の肉を与えたガラス人間のことだ」
エイジはすでに、そのことを把握していた。
実験結果までは予測できないが。
「あなたも隠しているじゃないですか。わざわざ遠回しに、私になにを言いたいんですか」
「隠していたのはお前だろ」
「ええ、私は隠していました。でも、あなたもだと言っているんです。あなたの父親ですよ! いまのこの、絶望の時代を招いたのは!」
エイジは言い返そうと口を開いて、ヒビキの言葉に息を詰まらせた。
ヒビキがなにを言っているのかわからなかった。
自分の父親――名前も思い出せないその存在は、いったいだれなのだろう。
なにをしていた人なのだろう。
「大門瑛士。いえ、これはきっとあなたの名前じゃないんでしょう。だとすれば、あなたを責めるのは間違っているのかもしれない。あなたはいったい誰なんですか、エイジさん」
俺はだれなんだ。
エイジに次々と襲いかかってくる疑問。
ずっとひっかかっていた何かからは、もう目をそらせない。
「この写真をみてください。これがあなたです。隣にいるのがだれかわかりますか?」
四人の子供が並んでうつっている。
「奈々……嘉……」
自信はなかった。
ただ、だれよりも大切だと思っていただけだ。
だとすれば、それは奈々嘉なはずである。
エイジはその笑顔と、頭にあるリボンを見つめる。
そのリボンは、だれがプレゼントしたのだろうか。
「違う。俺が、要に頼んで、渡してもらったんだ……」
じゃあ、彼女は――。
見えている世界が、全て偽物のように見えた。
記憶の海を巡る。
どこかに答えがあるのかもしれない。




