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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
3章 名前を呼んでほしい
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6 ドクターD

 自分が正義か悪かといえば、間違いなく悪だろう。

 一度選んだことを途中でやめてはいけない、それだけを守って生きてきた絶望の時代だった。


『我々は〈アイスエッジ〉という。起きてみれば知らぬ生き物で溢れておる。面白い』


 その妙な生物は、白銀の肌を晒して笑った。


『お前には感謝しているぞ――。弱っていた我を救うとは。しかし雄としての器としては足りない』


 一人の研究員が、頭を下げている。


「ドクターD。名前は不自然に削除されている。分かるのは服に刺繍された――」


 映像を止めて肩のあたりを拡大する。


「苗字の頭文字、Dだけだ。これだけじゃまだわからない。でも、彼が間違いなく始まりの人物――エイジさんに言われて調べなければここまでたどり着かなかった」


 ヒビキはキーボードを叩いて、基地に残された情報を探る。

 まだわからないことが多すぎた。


「どこかに何かあるはずだ」


 頭文字だけを頼りに、ただひたすらに探し続ける。

 そして、一つのファイルを発見した。

 一人の研究者の個人ファイル。


 開いてみると、そこには家族写真が並んでいた。

 幸せそうな家族の笑顔が並んでいる。


「マフラー?」


 どこかで見たことがあるようなマフラーを身につけた少年。

 四人組の子供達が身を寄せ合って写真に収まっている。


「私の子供と友人たち。彼らには未来が必要だ――左から道城要、坂木奈々嘉、灯部茜」


 書き込まれたコメントを目で追う。そして


「大門、瑛士――」


 ヒビキはその少年の顔をじっと見つめる。


『ヒビキ、ヒビキ、聞こえるか?』


 通信が入っていることにしばらく気付かず、そして慌てて答える。


「ヒビキです。何かありましたか?」

『巣と思われるものを発見した』

「了解しました。エイジさん、一度こちらに戻ってきてほしいのですが」


 Dで始まる苗字をもつ研究者は何人もいただろう。

 ただ、ヒビキはもうこれ以上考えられなかった。

 もうそれ以外が、考えられなかった。


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