表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
3章 名前を呼んでほしい
49/147

5 違和感

「通信機を貸してくれ、ナナカ」

「はい」


 エイジが何度か声をかけると


『ヒビキです。なにかありましたか?』

「巣と思われるものを発見した」

『了解しました。エイジさん、一度こちらに戻って来てほしいんですが』

「そのつもりだったんだが、あれは空を飛んでる。一度見逃したら次見つけるのは――」

『ナナカにまかせてください。今度は大丈夫です。念のために発信機をつけてあるので』


 驚いて身体中をぺたぺたと確認するナナカ。

 本人は知らされていなかったようである。


『通信機は、1週間ほど充電がもちますから、電源は消すなと言っておいてください』

「消すなってよ」

「本当かな」


 機械のことはあまり信用しないらしい。


「ヒビキ、これから必要なのはDの事だ。もう隠さなくていいだろう」

『わかりました。戻って来ましたら伝えます』

「通信を切る。何かあったら俺の方にかけてくれ」


 エイジは通信機をナナカに渡すと、カナメの方へ振り返った。


「これから安全なところまで行く。お前にもし仲間がいるなら、少し探すくらいの余裕はあるぞ」

「いえ、大丈夫です。ずっと一人でいたので」


 一人で生きてこられた――しかしエイジは不思議だとは思わなかった。

 自分だって、一人で生きてこられた。

 ミドウたちと出会わなかったとしても、ずっと一人で戦っていただろう。


「よくわからないやつに会ったら逃げる。おれはそうやって生きてきたんです」


 足に自信があるようだ。

 エッジから走って逃げていたのを見たことを思い出せば、常人の脚力ではないように思える。


「じゃ、あたし行ってくるね」

「ああ、気をつけてな。危ないと思ったら逃げろよ」

「だいじょうぶ。出来る子だからね」


 手を振って、ナナカは巣を追いかけて行った。

 カナメはじっとその姿を見送って、エイジを見つめる。


「ついていきます」

「後ろは頼んだ」


 カナメは強く頷く。

 懐かしさがある。

 ただその懐かしさが何なのかが、エイジにはわからない。

 少しずつ膨らんでいく違和感は、いずれ彼を苦しめるだろう。


「俺は――」


 エイジは遠く流れていく巣を睨みつけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ