4 おにいちゃん
「にい! 美海が!」
「……どうした?」
すぐに体を起こして、瑛士は康介が抱き上げている美海の顔を覗き込む。
「顔が赤い。熱はないか?」
「すごく熱いんだ」
「氷は売るほどあるんだ。僕が見ているから、康介は外を頼む」
「でも――」
康介は、美海が体が弱いことを言えないでいた。
体が弱いのに、この寒さの中を連れ歩いていたことが、今になってどんなに危ないものだったのかと考える。
「薬がないな。暗いうちはまだ外を歩くわけにはいかない。明るくなったらすぐに薬を探しに行こう。それまでは耐えてもらうしか」
「だいじょうぶだよ。えいじにいちゃん」
弱々しい声で美海は言った。
「外を見てくる」
康介は外へ飛び出した。
家を出た後、康介は足を止めない。
さっきまで見張りをしていた場所を通り過ぎ、走っていく。
「おれがおにいちゃんなんだから。おれが見つけなきゃ。おれが持ってこなくちゃ」
水色のナイフを握る。
「待て! 康介!」
康介の様子がおかしかったことに気づいた瑛士は、外を走っていく康介を見つける。
声は届いていないようだった。
彼を一人にするわけにはいかなかった。
もうすでに、見捨てられる関係ではなかった。
「うぅ」
弱々しく声を漏らす美海を見る。
そして、奥にある――倒れたまま動かない体を見つめる。
連れて行けるのは一人だ。
考えるまでもなかった。
瑛士に選べるのはひとつだけだ。
「ごめん。すぐに戻ってくるから」
マフラーを美海の首に巻く。
瑛士は一人を背負いあげ、家を飛び出した。




