表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
断章 残酷は人を殺さない
39/147

2 虹色のマフラー

 二人で手をつないで、康介と美海は、年上の少年のすぐ後ろを歩いている。

 なにを話しかけても返事はしない。

 逆に、話しかけてくることなんてあるはずもなかった。


「しぇるたーにいきたいの」


 美海は少年に声をかける。


「……」


 やはりなにも言わない。

 康介はただじっと、その後ろ姿を見ていた。

 年は一回りも離れていないように見える。

 そうしてじっと見ていると、また背負っているものを下ろして、走り出した――と思うと、遠くでなにかに襲いかかって、そして暫くして戻って来る。


 その人がいったいなにと戦っているのか、康介には全くわからない。

 それでも、戦っているそれが、普通ではないことくらいはわかった。


「おれにもおしえてくれ!」


 隣に並んで歩いて、何度もそうは言ってみるが、少年はやはりなにも反応しなかった。


「今日はあそこで休む」


 少年はそうして遠目に見える家に向かって歩き始めた。

 康介はついていく。

 なにが彼をそうさせているのかはわからなかった。

 死んでいるだれかを背負っている少年の姿は、普通じゃない。

 しかし、康介にとっても美海にとっても、今になれば恐怖は感じなかった。


「おにいちゃんはえいじってなまえなの?」


 自分のことかと思い美海を見てみれば、少年のマフラーを指差して言っているようだった。

 よくよく見てみれば、エイジという文字が縫い付けてある。


「……ああ。僕の名前だ」

「ぼろぼろだね」

「気に入っているんだよ」


 にっこりと、そのときになって初めて、瑛士という少年は微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ