2 虹色のマフラー
二人で手をつないで、康介と美海は、年上の少年のすぐ後ろを歩いている。
なにを話しかけても返事はしない。
逆に、話しかけてくることなんてあるはずもなかった。
「しぇるたーにいきたいの」
美海は少年に声をかける。
「……」
やはりなにも言わない。
康介はただじっと、その後ろ姿を見ていた。
年は一回りも離れていないように見える。
そうしてじっと見ていると、また背負っているものを下ろして、走り出した――と思うと、遠くでなにかに襲いかかって、そして暫くして戻って来る。
その人がいったいなにと戦っているのか、康介には全くわからない。
それでも、戦っているそれが、普通ではないことくらいはわかった。
「おれにもおしえてくれ!」
隣に並んで歩いて、何度もそうは言ってみるが、少年はやはりなにも反応しなかった。
「今日はあそこで休む」
少年はそうして遠目に見える家に向かって歩き始めた。
康介はついていく。
なにが彼をそうさせているのかはわからなかった。
死んでいるだれかを背負っている少年の姿は、普通じゃない。
しかし、康介にとっても美海にとっても、今になれば恐怖は感じなかった。
「おにいちゃんはえいじってなまえなの?」
自分のことかと思い美海を見てみれば、少年のマフラーを指差して言っているようだった。
よくよく見てみれば、エイジという文字が縫い付けてある。
「……ああ。僕の名前だ」
「ぼろぼろだね」
「気に入っているんだよ」
にっこりと、そのときになって初めて、瑛士という少年は微笑んだ。