表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
断章 残酷は人を殺さない
38/147

1 忘れ物を届けに

 少年は歩いていた。


「おにいちゃん。おんぶ」


 手をつないでいた妹に背を向ける。


「ほら」


 背伸びして手を伸ばす妹を背負い、彼は歩く。行く当てなんてない。彼はただ、どこかへ行くだけだ。親を探して、ただまっすぐ。


「父さんと母さんは、俺たちを置いていったんじゃない。ちょっと忘れちゃってただけなんだ。だから、おれたちから行ってあげないと。忘れちゃってるんだから」

「うん」


 数日前、家に封筒が届いた。

 まだ読める漢字の少ない少年には、それがいったいどこから来たものなのかもわからないが、両親がそれを広げた途端に喜んで抱き合っていたことを思えば、きっといいものだったのだろう。


「しぇるたーってところに、父さんと母さんは行ったんだ。そこはすごくいいところなんだよ。おれたちも行って、家族みんなで一緒にいるんだ。それが一番なんだ」


 手紙の中にあった2という数字がいったいなにを意味していたのか、彼にはわからない。

 例え、彼がその場所にたどり着いたとしても、中に入れてもらうことはできないのだ。


「おにいちゃん」

「ん?」

「あれ」 


 妹の指先を追って、そして遠くに、だれかが歩いているのが見えた。

 だれかをおぶって歩いている。


「いってみよう」

「うん!」


 妹は背中から飛び降り、二人で走っていく。


「おーい!」


 何度か呼びかけても、その人は振り向いてはくれなかった。

 ついに追いついて、顔を覗き込む。


「ひっ」


 なにも見ていないようだった。

 どこかに向けて、足を動かしている。

 背負っているのは、人だった。

 腕はだらりとぶら下がり、何かが垂れ落ちている。


「なにをおんぶしてるの?」


 妹は恐れもなく、その人に問いかける。

 そうしてやっと、なにも見ていなかった、死んでいるような目がこちらを向いた。


「なんでうごかないの?」


 カランと、乾いた音がなった。

 その人の首には、なにかの首飾りがぶら下がっている。


「わたしはみみっていうの。おにいちゃんのなまえはこうすけ」

「僕は――――」


 言葉を止めたと思うと、背負っていたなにかを下ろして駆け出した。

 少し遠くに、なにかが歩いている。

 少年、康介が知っているもので考えれば、それは人間に似ている。

 それに容赦なく襲いかかり、そして暫くして戻って来た。

 服は水色の混じった赤色のなにかで汚れてしまっている。


「どうせ死ぬ。そのときはこいつの隣がいい」


 動かないそれをまた背負いあげて、その人は言った。


3月29日の投稿はお休みします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ