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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
2章 失われた名前
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15 死は何処に

「あれを見ろ!」


 ワタリが指差した先には、予想もしなかった人物がたっていた。

 ワタリが声をあげたからか、こちらに気づいたようで近づいてきた。

 その人物とは、ミドウであった。

 しかし、どうもみるかぎりではお迎えにきてくれた――なんてことはないらしい。


「おーい!」


 ワタリが笑みを浮かべて手を挙げるすぐ横で、エイジだけは腰から銃を抜いていた。

 ふらりふらりと歩み寄ってくる彼女の姿、そして隣でのんきに手を振るワタリは、かつて見たことのある光景にそっくりだった。


「ワタリ、下がれ」

「何言ってんだ? ミドウだぞ」

「いいから下がるんだ」

「お前どうしたんだ? 銃をおろせよ。あれはどう見てもミドウじゃないか」

「違うんだ。俺が言っていることはそうじゃない」

「何を言ってるんだよ。だから――」


 構えていた銃を手で押さえつけられ、エイジはワタリを睨みつける。


「ワタリよく聞け。落ち着くんだ」

「お前が落ち着けよエイジ。銃なんかさっさとしまっちまえ」

「頼むから言うことを聞いてくれ。下がれと言っているんだ」

「あれはミドウだから大丈夫だって言ってるだろ! 下がるのはお前だエイジ!」


 話を聞こうとしないワタリに、エイジは続けて声を上げようとしたその時――


「あ」


 視界から瞬時にして、ワタリの姿が消えた。

 何かに飛ばされるように。


「ど、どうしたんだよミドウ。急に抱きついたりしてさ」


 すぐ足下から、彼の声がする。

 エイジは恐る恐る目を移した。


「かか――――」

「くっ!」

「エイジ! やめてくれ!」


 引き金を引こうとした瞬間に、ワタリは声を上げた。


「エイジ。俺はずっとわからなかったんだ」


 腕に噛みつかれ、ワタリは表情を歪める。


「この先氷河期になって、その時が来て――俺はいったいどうやって死ぬんだ? 凍えて死ぬのか? 自分たちで火も起こせるのに? 食べ物だって、計画さえすればうまくいくんだ。あの、ゾンビみたいなガラス人間がいなかったら……」

「……」

「俺はわからない! それがずっと怖かったんだ。でもさ、もういいんだ。俺は、こいつに――ミドウに食われて死にたい! それでいい。だから、こいつが俺を食べ終わったら、その時は殺してやってくれ」


 何かが砕ける音がした。


「エイジ。お前のことはずっと、生意気なガキだって思ってたよ」


 そのガラス人間は、ワタリの頭部に噛みつき、満足そうに頬張った。

 エイジはその光景をじっと見つめ、ワタリの言葉の意味を考えた。

 やはりワタリも、その答えにたどり着いていたのだろう。


「俺たちは――時代に滅ぼされるんじゃなかったのか? 死の時代を生きられないからじゃ、なかったのか?」


 ぴたりと、ガラス人間は動きを止めた。

 そして、エイジの顔をじっと見つめる。


「か……」

「俺だって、わからないさ。どうやって死ぬかなんて。どうして生きているかなんてこともわからないんだから。俺が、本当にエイジなのかも――もう、自信がない。だったらいっそ」


 口を開けて、ガラス人間は何かを待っているようだった。

 そこに死がある。

 終わりがある。


 エイジは銃を手放した。


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