15 死は何処に
「あれを見ろ!」
ワタリが指差した先には、予想もしなかった人物がたっていた。
ワタリが声をあげたからか、こちらに気づいたようで近づいてきた。
その人物とは、ミドウであった。
しかし、どうもみるかぎりではお迎えにきてくれた――なんてことはないらしい。
「おーい!」
ワタリが笑みを浮かべて手を挙げるすぐ横で、エイジだけは腰から銃を抜いていた。
ふらりふらりと歩み寄ってくる彼女の姿、そして隣でのんきに手を振るワタリは、かつて見たことのある光景にそっくりだった。
「ワタリ、下がれ」
「何言ってんだ? ミドウだぞ」
「いいから下がるんだ」
「お前どうしたんだ? 銃をおろせよ。あれはどう見てもミドウじゃないか」
「違うんだ。俺が言っていることはそうじゃない」
「何を言ってるんだよ。だから――」
構えていた銃を手で押さえつけられ、エイジはワタリを睨みつける。
「ワタリよく聞け。落ち着くんだ」
「お前が落ち着けよエイジ。銃なんかさっさとしまっちまえ」
「頼むから言うことを聞いてくれ。下がれと言っているんだ」
「あれはミドウだから大丈夫だって言ってるだろ! 下がるのはお前だエイジ!」
話を聞こうとしないワタリに、エイジは続けて声を上げようとしたその時――
「あ」
視界から瞬時にして、ワタリの姿が消えた。
何かに飛ばされるように。
「ど、どうしたんだよミドウ。急に抱きついたりしてさ」
すぐ足下から、彼の声がする。
エイジは恐る恐る目を移した。
「かか――――」
「くっ!」
「エイジ! やめてくれ!」
引き金を引こうとした瞬間に、ワタリは声を上げた。
「エイジ。俺はずっとわからなかったんだ」
腕に噛みつかれ、ワタリは表情を歪める。
「この先氷河期になって、その時が来て――俺はいったいどうやって死ぬんだ? 凍えて死ぬのか? 自分たちで火も起こせるのに? 食べ物だって、計画さえすればうまくいくんだ。あの、ゾンビみたいなガラス人間がいなかったら……」
「……」
「俺はわからない! それがずっと怖かったんだ。でもさ、もういいんだ。俺は、こいつに――ミドウに食われて死にたい! それでいい。だから、こいつが俺を食べ終わったら、その時は殺してやってくれ」
何かが砕ける音がした。
「エイジ。お前のことはずっと、生意気なガキだって思ってたよ」
そのガラス人間は、ワタリの頭部に噛みつき、満足そうに頬張った。
エイジはその光景をじっと見つめ、ワタリの言葉の意味を考えた。
やはりワタリも、その答えにたどり着いていたのだろう。
「俺たちは――時代に滅ぼされるんじゃなかったのか? 死の時代を生きられないからじゃ、なかったのか?」
ぴたりと、ガラス人間は動きを止めた。
そして、エイジの顔をじっと見つめる。
「か……」
「俺だって、わからないさ。どうやって死ぬかなんて。どうして生きているかなんてこともわからないんだから。俺が、本当にエイジなのかも――もう、自信がない。だったらいっそ」
口を開けて、ガラス人間は何かを待っているようだった。
そこに死がある。
終わりがある。
エイジは銃を手放した。




