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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
2章 失われた名前
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13 犠牲と未来と

「エイジさん。ついてきてください」


 ヒビキは壊された扉を通って、例の部屋へ向かうようだった。

 杖を頼りに歩いているのを見ると、どうやら体がうまく動かないようであるが。


「俺はここで片付けでもしておくよ。扉もこのままってわけにはいかないだろうからな」

「ワタリさん。ありがとうございます。さあ、エイジさん」

「ああ」


 例の部屋の前に来る。

 扉は乱暴に開かれたままだった。


「ここには5人のガラス人間を収容していました。それぞれ、AからEに分けて、経過を観察していたのです。条件は5つ」


 ヒビキは指を立てた。


「Aには何も与えず。Bには木片。Cには人間と同じ食料。Eにはガラス人間の肉を与えています。資料には書いてあったと思いますが、ガラス人間は食料を必要とします。そしてもし、なにも食べるものがなくなった時、自分の結晶を他の何かに伝染させ口にすることで、一時的に食欲を満たすことはできます。それは、血液を持たないものに限った話ですが。こうしてガラス人間は、絶望の時代を生き抜くことができるのです」

「Dはどうした」

「……」

「Dにはなにを食べさせたんだ」


 ヒビキは首を振る。


「先ほどの化け物は、おそらくEのガラス人間が変化したものでしょう。本来ガラス人間は、ガラス人間を食すことなんてありませんから。なんらかの変化は起きると予想出来ていました」

「お前、本当にこいつらを外で捕まえてきたんだな?」

「ええ、外で」

「……いい、続けろ」


 これ以上のことは、聞かなくても分かる。

 それに、他の誰かがどうにかなったところで、エイジにはどうでもいいことだった。


 部屋の中に入る。

 想像通り、Eの柵が壊されていた。

 いまゆっくりと観察してみれば、ABCのガラス人間たちはどれも少しばかり違っている。


「Aは何も食べていないんだよな。にしては、やせ細っているということもないのか」

「ええ。後で追加で資料を渡します。個体差こそありますが、ガラス人間は何も食べなかったとしても一年はほぼ確実に生きていけるようです」

「他と比べてみると、違うのは結晶か」


 そして、結晶を見る。

 それぞれはやはり青みがかっていて、先のような紫ということはない。

 違いがあるのは、結晶に覆われている体の範囲だった。


「こいつらは結晶の犯され具合が違う。エッジの毒にやられた時期の違いは?」

「同じ日です。完全にガラス人間になるまでの時間差はあったでしょうが、そこは考えなくていいと思います」


 Aのガラス人間は、左腕が結晶に覆われているが、それ以外に覆われている様子はない。

 Bのガラス人間は、同じく左腕が結晶に覆われていて、その結晶は肩から頭部を覆い、左半身をほぼ隠してしまっている。

 Cのガラス人間は、左腕と頭部を覆われているが、しかし、Bのように左半身を全て覆うほど結晶化が進んでいる様子はなかった。


「そして、Eがあれか」

「まだ、研究は続ける必要がありそうです。Eがなぜああなったのか。何がガラス人間をそう進化させたのかを詳しく調べなければ」

「ストックはあるのか」

「……」

「今から来るやつらもいるか」


 ヒビキは目を逸らしたが、エイジは追求しない。

 一人が死んで残りが生きることは悪いことじゃない。

 それが繋ぐことになる。

 それならあいつらが死んだって――


「繋ぐためにしてきたことだ。途中でやめるな」

「わかっています」


 ヒビキはもう、目をそらさなかった。

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