表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
2章 失われた名前
32/147

11 紫

「もういい、この話はここまでだ」


 エイジは軽く目を瞑って息を吐いた。

 それが、彼なりの切り替えだった。


「お前がここにいるということは、そして生きているということは、ここは安全だ、ということで間違いないんだな」

「……まあ少なくとも外よりは安全だ。保証する」

「食料は」

「できるだけ外に取りにいっている。賞味期限が切れた食料ならまだ山程あるが、できるだけ食べないようにしていた。尽きてしまっては意味がない」


 エイジはまたもう一度息を吐いた。


「ワタリ」

「ああ」


 エイジと入れ替わるようにして、ワタリが男の隣に腰掛けた。


「どうしてここに来たのか、という話に戻りたいが」

「……」

「ふう。まあ、簡単に言うとだ、俺の仲間達が住む場所がない。ここに住ませてほしい。それだけの話なんだが」


 男は少し考えるようなそぶりをみせたあと、ゆっくりと頷いた。


「ありがたい。すぐに仲間を呼んでくるとしよう」

「待て、ワタリ」

「ん? 急がないと、外は安全じゃないんだぞ」

「ここも、安全とは言えないだろう」


 何かが扉にぶつかり、ドンドンと音を立てている。


「知り合いか?」


 ワタリは扉から離れて武器を構える。


「私の知り合いにこんな乱暴な人はいません」

「なるほど」


 ワタリはエイジに目配せする。

 どうやらお前がやれと言っているようだが。


「知ってるか、ワタリ」

「なんだよ」


 バキバキと音を立てて扉が破壊された。

 その醜い姿に、ワタリが声にならない悲鳴をあげる。


「ガラス人間は、うっすらと光るんだ。青色にな」

「……俺には紫に見えるぞ」


 人型のようなその生物は、背中から羽のような結晶を広げている。

 ぼんやりと紫に光る体は、ミシミシと妙な音を立てて蠢いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ