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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
2章 失われた名前
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3 外の世界へ

 爆風に逆らうようにして、エイジは奇怪な何かの懐に飛び込んでいた。


「体を鋼で包むなら、もっとしっかりコーティングすればよかったな? 隙間――狙わせてもらう」


 エイジは肩から鉄剣を抜き


「KA――」


 胴と尾を結ぶ節を突いた。

 それはほんの数センチメートルの隙間をくぐりぬける一閃。

 刃を横になぎ、エイジは矢が突き刺さったままの、奇怪なそれの目を睨みつけた。


「俺の勝ちだ。糞野郎」


 重々しい音を立て、宙に浮かぶそれは落ちていく。

 紫の飛沫が吹き上がり、エイジの服をその色に染めていく。

 拍手を送る人間はだれもいなかった。


 終わった。

 ミドウはその戦いをずっと眺め、結局何もすることはなかった。

 頬に紫の飛沫がかかり、頬を伝っていく。

 それでもミドウはぼうっとしたまま、その惨状を眺めているだけだった。


「ミドウ……おい、ミドウ」

「え……あ、ああ。どうしたエイジ」

「どうしたじゃないだろ。いますぐここから離れるんだ」


 エイジは鉄剣をしまって、化け物の来た方向に歩み出した。

 ミドウはその姿をやはり目で追うだけで、口を開けたまま、何かを言い出すことができない。


「後ろは俺が守ってやる。だからお前は先導して、どこか安全なところに行けばいい。まあ、本当に安全なところなんてどこにもないんだろうがな」


 エイジは振り返らず


「ここからは地獄だ。だがそれは、お前が招いた事態なんだよ。全てお前のせいだ。だけどな――いや、だからしっかり残ったやつを守ればいい。それが、継ぐってことだ」


 黒い煙は、まだ消えることがない。

 遠くからまだ何かが近づいてくるような気がする。


 村の隅に集まった人――その中心にミドウは立っていた。


「ここを捨てます」


 そのあまりにも不可解な言葉に、村人たちは驚きと困惑の声を上げた。

 ミドウはそれでも続けて


「軍基地に行く。助けに来ないなら、自分たちから助けてもらいに行けばいい。危険かもしれないが、ずっとこのままここにいるよりは絶対にいいはず」


 その言葉は自分に言い聞かせているようでもあった。

 どう考えても無謀である話だったが、誰ひとりとしてそれを否定する人間はいない。

 だれもが、自分で行動するということを忘れてしまっているのだった。

 自分の意識というものが完全に欠落してしまっていたのだ。

 だれかにまかせておけばいいという意識だけで、彼らは生きているのだった。


「荷物をまとめてほしい。男は食料を、女は子供を。この先ははぐれないように、勝手な行動はさけること。以上」


 ミドウは最期にそう言うと、近くに立っていた男に後を任せ、もう一度エイジと話をしようとその場から離れた。


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