3 外の世界へ
爆風に逆らうようにして、エイジは奇怪な何かの懐に飛び込んでいた。
「体を鋼で包むなら、もっとしっかりコーティングすればよかったな? 隙間――狙わせてもらう」
エイジは肩から鉄剣を抜き
「KA――」
胴と尾を結ぶ節を突いた。
それはほんの数センチメートルの隙間をくぐりぬける一閃。
刃を横になぎ、エイジは矢が突き刺さったままの、奇怪なそれの目を睨みつけた。
「俺の勝ちだ。糞野郎」
重々しい音を立て、宙に浮かぶそれは落ちていく。
紫の飛沫が吹き上がり、エイジの服をその色に染めていく。
拍手を送る人間はだれもいなかった。
終わった。
ミドウはその戦いをずっと眺め、結局何もすることはなかった。
頬に紫の飛沫がかかり、頬を伝っていく。
それでもミドウはぼうっとしたまま、その惨状を眺めているだけだった。
「ミドウ……おい、ミドウ」
「え……あ、ああ。どうしたエイジ」
「どうしたじゃないだろ。いますぐここから離れるんだ」
エイジは鉄剣をしまって、化け物の来た方向に歩み出した。
ミドウはその姿をやはり目で追うだけで、口を開けたまま、何かを言い出すことができない。
「後ろは俺が守ってやる。だからお前は先導して、どこか安全なところに行けばいい。まあ、本当に安全なところなんてどこにもないんだろうがな」
エイジは振り返らず
「ここからは地獄だ。だがそれは、お前が招いた事態なんだよ。全てお前のせいだ。だけどな――いや、だからしっかり残ったやつを守ればいい。それが、継ぐってことだ」
黒い煙は、まだ消えることがない。
遠くからまだ何かが近づいてくるような気がする。
村の隅に集まった人――その中心にミドウは立っていた。
「ここを捨てます」
そのあまりにも不可解な言葉に、村人たちは驚きと困惑の声を上げた。
ミドウはそれでも続けて
「軍基地に行く。助けに来ないなら、自分たちから助けてもらいに行けばいい。危険かもしれないが、ずっとこのままここにいるよりは絶対にいいはず」
その言葉は自分に言い聞かせているようでもあった。
どう考えても無謀である話だったが、誰ひとりとしてそれを否定する人間はいない。
だれもが、自分で行動するということを忘れてしまっているのだった。
自分の意識というものが完全に欠落してしまっていたのだ。
だれかにまかせておけばいいという意識だけで、彼らは生きているのだった。
「荷物をまとめてほしい。男は食料を、女は子供を。この先ははぐれないように、勝手な行動はさけること。以上」
ミドウは最期にそう言うと、近くに立っていた男に後を任せ、もう一度エイジと話をしようとその場から離れた。




