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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
7章 そして少年は這い上がる
120/147

12

 

 覚悟をしたのはヤマキも同じだった。

 と同時、動きを止めようとする体に、ただひとつの動きだけを命令していた。

 打ち砕いた目の奥からの銃弾はもう避けられないだろう。

 尾の先にある機関銃のようなものは、初めからヤマキを狙ってはいなかった。

 初めからヤマキが目を破壊し、もう一つの銃で殺せるとわかっていたかのようだった。


 飛び上がった体が地面に吸い込まれていくその中で、ヤマキは後ろに引いていた右足を振り抜いていた。

 左足は右拳を振り下ろす勢いと共に前に出ていたため、力を貯めることにも使えず、中途半端な勢いにもならなかったかもしれないが――その死に物狂いのような一撃は、銃弾の行き先を変えるには十分すぎる一撃だった。


「っぐ!」


 まるで地を蹴りつけたような鈍痛が、ヤマキの体を襲った。

 と、尾の先にある機関銃が火を噴く。


 咄嗟の判断だった。

 ノゾムはヤマキのその動きを目で追って――そして、ぶれた銃口を睨み、その反対に体を投げたのである。

 走っていた方向とは全くの逆。

 投げたとは言っても、走っていた体を急に、無理やり逆に動かすことは無理があった。

 ただ精一杯にブレーキをかけたというのがいいところだろう。

 火を噴く銃口。

 ノゾムの足を何かが走り抜けていった。


「ヤマキ!」


 痛む左足を抑えて、ノゾムはすぐに走り出した。

 地に落ちたヤマキは、ピクリともせず――ノゾムは決断する。


「逃げるんだ」


 背を向けて逃げることが正しいわけがなかった。

 ただ彼には戦う術もなく、彼よりも戦闘に優れたものはすでに殺されてしまったのだ。

 逃げることしか、彼にはできなかった。


 カチ――カチ――。


 秒針が進む。

 死の時がすぐ側にまでやってきている。


「あ――――」


 左足が崩れていく。

 それに引っ張られるように、ノゾムの体は地に落ちた。

 瞳から飛び出した小さな銃身が、笑みを浮かべているように見える。


「死にたくな……い」


 雪を掴んで、ノゾムは先へ進む。

 動かない足を引きずって、安全な場所まで――。


「ぐ……」


 腹部を襲う強烈な痛みは、彼の頭と体の繋がりを奪った。

 もう彼には、自分の体を動かすことができない。

 痛みがほぼ全てをショートさせてしまったのだ。


「死にたくない――死にたくない――嫌だ! 嫌だ!」


 雪を噛む。


「――――」


 秒針は最後に雷のような音を上げ、静かに――その動きを止めた。


 ぐったりと雪に沈む少年は、誠意一杯腕を伸ばしたまま動こうとしない。


 わずかな駆動音。

 赤いボディは吹雪の中に消えていった。


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