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覚悟をしたのはヤマキも同じだった。
と同時、動きを止めようとする体に、ただひとつの動きだけを命令していた。
打ち砕いた目の奥からの銃弾はもう避けられないだろう。
尾の先にある機関銃のようなものは、初めからヤマキを狙ってはいなかった。
初めからヤマキが目を破壊し、もう一つの銃で殺せるとわかっていたかのようだった。
飛び上がった体が地面に吸い込まれていくその中で、ヤマキは後ろに引いていた右足を振り抜いていた。
左足は右拳を振り下ろす勢いと共に前に出ていたため、力を貯めることにも使えず、中途半端な勢いにもならなかったかもしれないが――その死に物狂いのような一撃は、銃弾の行き先を変えるには十分すぎる一撃だった。
「っぐ!」
まるで地を蹴りつけたような鈍痛が、ヤマキの体を襲った。
と、尾の先にある機関銃が火を噴く。
咄嗟の判断だった。
ノゾムはヤマキのその動きを目で追って――そして、ぶれた銃口を睨み、その反対に体を投げたのである。
走っていた方向とは全くの逆。
投げたとは言っても、走っていた体を急に、無理やり逆に動かすことは無理があった。
ただ精一杯にブレーキをかけたというのがいいところだろう。
火を噴く銃口。
ノゾムの足を何かが走り抜けていった。
「ヤマキ!」
痛む左足を抑えて、ノゾムはすぐに走り出した。
地に落ちたヤマキは、ピクリともせず――ノゾムは決断する。
「逃げるんだ」
背を向けて逃げることが正しいわけがなかった。
ただ彼には戦う術もなく、彼よりも戦闘に優れたものはすでに殺されてしまったのだ。
逃げることしか、彼にはできなかった。
カチ――カチ――。
秒針が進む。
死の時がすぐ側にまでやってきている。
「あ――――」
左足が崩れていく。
それに引っ張られるように、ノゾムの体は地に落ちた。
瞳から飛び出した小さな銃身が、笑みを浮かべているように見える。
「死にたくな……い」
雪を掴んで、ノゾムは先へ進む。
動かない足を引きずって、安全な場所まで――。
「ぐ……」
腹部を襲う強烈な痛みは、彼の頭と体の繋がりを奪った。
もう彼には、自分の体を動かすことができない。
痛みがほぼ全てをショートさせてしまったのだ。
「死にたくない――死にたくない――嫌だ! 嫌だ!」
雪を噛む。
「――――」
秒針は最後に雷のような音を上げ、静かに――その動きを止めた。
ぐったりと雪に沈む少年は、誠意一杯腕を伸ばしたまま動こうとしない。
わずかな駆動音。
赤いボディは吹雪の中に消えていった。




