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固く閉ざされた扉を無理やりこじ開けて、二人は中に入った。
平積みにされた資料の山と、大きなディスプレイには一人の男が堂々とした様子でなにかを語っている。
部屋の隅には血の跡があり、銃がひとつ転がっていた。
「これ、見ろよ」
「なにか?」
ヤマキの持つ資料に目を通す。
そこにあるのは地下施設の地図のようなものだったが。
「シェルター?」
それが何なのかがわからなかった。
ただそこが、すごく平和な場所なんだと――そんなことを曖昧に把握した。
途端に自分の中からなにかが崩れていく音が聞こえた。
これまでしてきたことが、生きてきたことが、全て意味のないものだったように思えてきたのだ。
「ノゾム、お前はどう思う――」
ヤマキの声が遠かった。
思い出されたのは、彼女の顔だった。
琴子の最後の笑みが胸を痛めつける。
彼女だけではなかったはずだ。
安全な場所にいなかった僕たちは、ただ必死だった。
この死の時代を、どうにかしてでも生き抜こうと――。
「――」
ディスプレイに垂れ流しにされた男の声が、頭に響いていた。
「ノゾム、お前はどう思うんだ」
平和にのうのうと生きている人間がいる。
『生き残る権利があるのは、立ち向かった人だけだ』
シェルターに逃げ込んだ人間たちは、逃げた人間だ。
この時代に立ち向かっているのは、地上に立っている僕たちだ。
庇って涙を流していたコトコの顔が思い出された。
「僕は――逃げた人間たちが許せない」