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「なあノゾム。俺とお前どこが違う?」
ヤマキの突然の問いかけに驚きつつ、その意味について考える。
違いなんてわからない。
ノゾムが思いつくこととすれば、体温の違いと、力の違い。あと
「生まれるところから全部違うもんな」
「ああ、だから、お前がわざわざこちら側にくる必要はないんじゃないか?」
ヤマキに頼んだことは、そのことだった。
戦える力がほしいと、そう頼んだのである。
何か知っていることがあればというお願いだったが、ヤマキにはもちろんそんなことわかるはずもない。
だからこうして二人で外に出て、ヤマキが唯一思いついた場所に向かっている。
「軍の基地になにかあればいいけど」
「力になるものはなくても、情報はあるだろうよ。場所は知ってても、行こうなんておもったことがなかった」
情報もおそらく、十分な武器になる。
もうそこにはだれもいないと、そんなことを決めつけて二人は基地にたどり着く。
ヤマキの後に続いて、ノゾムも中に入る。
「……」
と、その異常に気がついた。
人の気配がする。
使われていた形跡がある。
いや、使われている形跡があるのだ。
「人間か?」
「まだ生きてる人間なんて、お前くらいじゃねえの?」
まるで馬鹿にするような言い方だったが、確かに、生きている人間がまだいるとは思えなかった。
軍は実はまだ潰れていなかったのかと考えたが、しかしそれはありえない。
警備が甘すぎる。
だれかがここを住処にしているだけだと考えるのが普通だろう。
多人数の可能性は消していいだろう、とノゾムは辺りを見渡した。
多人数ならば出入り口を見張る人間がいるはずだが、見当たらない。
監視カメラがどうやら機能していないのは、電力の問題なのかどうかはノゾムにはわからなかったが、氷ついて動いていないのを見るとそれ以前の問題なのだろう。
「俺が先を歩く」
ヤマキを追いかけて奥に進んでいく。
想像もつかない基地の奥、何があるのか、何を探せばいいのかもわからないまま、二人は歩み続ける――。




