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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
7章 そして少年は這い上がる
112/147

   

 家からでて行くヤマキと、もう一人、空に浮かんで行くあの巣にいた少年を見送る。

 どこかに行った。

 いまこの家にいるのは彼一人だけである。


「――」


 目を瞑る。

 自分を落ち着けるにはそれが一番だった。


 ――――


「わからないわ」


「いや、信じてくれ。大門のやつが動いたんだ。いま映像を見せただろう。俺たち人間を滅ぼす気だぞあいつは」


「彼はそんなことをするような人じゃ」


「俺だってそう思ってたさ。いまならまだシェルターに入れてもらえる。だから俺と行くんだ」


「でも」


「ああ、くそ、通信だ。いいか、すぐ戻って来るから。下手に外に出るなよ」


 ――――


「茜、これ」


「なにそれ」


「誕生日プレゼントだ」


「あんたから?」


「だと思うか?」


「瑛士ね。いつもそう。これからどうなるのかしら、あたしたち」


「それなりに生きていくんだろうさ。で、お前はどうするんだ。決めたのか?」


「うん。離れることにした。彼が死ぬのなんて見たくないし」


「俺が死ぬのはいくらでも見れるわけか」


「そうね」


「即答かよ」


 ――――



 自分の中をまた誰かが巡っている。

 足元に転がっているナイフを拾い上げ、腕に突き刺した。


「くっ――」 


 同時に痛みがあれば、それがいまの自分の姿。

 記憶の痛みにはラグがある。

 そうして、自分を安定させる。

 自分自身が本物だと信じ込ませる。

 少しでも眠るためには、目を瞑らなければならない。

 しかし5分の睡眠には、倍の時間の記憶が自分の中に押し寄せてくる。


 それでも休まなければならない。

 体の限界を感じていた。

 またその波に襲われるとわかっていたとしても、彼はまた目を瞑る。


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