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「そのままって訳にはいかないからさ。道城さん、かわいそうだし――」
雪が降る中、少女は何かを引きずっていた。
この世界、この時代、外を歩く危険性は十分に知っていた。
彼女にとってはただそれよりも、重要なことだったという――それだけの話である。
「――くんは、必死だから。眠ってるいまのうちに、あたしも頑張るの」
向かう先には穴があった。
彼女はそっと、運んできたものを落とす。
何かを埋めるために掘ってあったのだろう。
彼女はすぐ側の積み上げられた雪を崩し、穴に投げ込む。
埋まっていく。
穴を半分ほど埋めたあたりで、彼女は異変に気がついた。
「音だ――」
彼女は雪を抱えたまま走り出す。
――――――
彼は泣き止んだ赤ん坊を置いて、外に出ていた。
民家の側に、人が一人なんとか入れそうな穴を見つけたのだ。
赤ん坊を連れて行くことは憚れた。
彼は民家を飛び出して置いてきたものの場所に戻ってくる。
「……」
それを人の体だったと言うには無理がある。
彼は腕を握り引きずった。
吹き出した血が固まって、背負い上げることは不可能だった。
引きずっているうちに固まっていたものが根元から折れてしまったが、彼は気にしなかった。
すでに済んだこと。
もうそれは屍である。
「――」
赤ん坊の声がした。
彼は足をはやめる。
それほど距離は離れていない。
穴にそれを放り込み、赤ん坊をあやしながら雪をかけた。
赤ん坊には見せておきたかった。
その赤ん坊にはまだ何も見えなくとも――彼はかじかんだ指で雪を撫で、立ち上がる。
どこかに向けて歩き出した。
赤ん坊の声は止まなかった。