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暗闇の中、少しずつ降りてきている巣を睨みつける。
降りて行く場所のおおよその予想はついていた。
やはりここでも、ヤマキの目撃情報が役に立つ。
ほんの数キロ先に湖がある。
あの土のような塊は、そのまま地面に降り立つことはできないらしい。
衝突してしまえば崩れてしまうのだろう。
つまり行き先は――
「先回りしよう。湖だ」
川にあれだけの規模のものを受け入れられるものはない。
以前ヤマキがみたときは別の場所の湖だったらしいが。
「さすがに、こればかりはこの時代じゃなければつらいところだったな。敵地に船で近づくっていうのは無理がある。相手が飛んでいるんだからなおさらだぜ」
湖は凍っている。
あの巣が着水したとして、氷は崩れて割れてしまうのかもしれないが、足場は残っているはずだと期待しておく。
「ああ、やっぱりあいつがいてほしいところだな。あいつは頭が良かった。俺みたいに適当に生きてたわけじゃねえ」
「仲間……」
「ま、あいつは俺のことをそういう風には一度も思ってなかったみたいだけどな。なんというか、俺以上に人間を恨んでいたさ。人間というよりは、他者全てを信用していないようだった。ちなみに俺は、お前のことは信用してるぜおちび」
「む」
コトコはまた頬を膨らませる。
いまだ作戦という作戦を思いつかないでいた。
侵入して、破壊して、排除して――その三つだ。
その三つが自分にはあまりに不可能に思える。
本当にそんなことがただの人間である僕にできるのだろうか。
「ひとつずつでもいいんじゃない?」
コトコは考え込む僕の顔を覗き込む。
「……とは言ってもだな――ごほごほ」
息をごまかすように咳をする。
つい返事をしてしまったが、気をつけなければ。
しかしひとつずつ考えるというのはいい案だ。
三つ同時に考えたところでうまくいくわけげない。
まずは侵入方法から考えよう。
ヤマキに戦ってもらっているうちに侵入する。
「……」
なんだその単純すぎて他に何の言いようのない作戦は。
他には策がない。
つまり、侵入したあとは彼の力には頼れないというわけだ。
次を考えることにしよう。
巣を破壊する方法だ。
「……」
あの規模のものを人力でどうにかできるものなのか?
例えば中に大量の爆薬でもあればできるのかもしれないが、そんなことあるわけがない。
「……うむぅ」
とりあえず保留だ。
三つ目にいこう。
もう一人の彼女の排除。
おそらくあの巣の一番奥にいるだろう。
どうやって排除するか。
「……」
会ってもない。
どんなやつかもわからないやつの排除の仕方をどう考えれば良いのだ。
「夜明けまであと1時間ほどだな。さ、用意しろよ」
「……」
じっと僕の言葉を待つコトコに、伝える言葉が見つからない。
なにも策が思い浮かばなかった。
しかしもう、このままこの機会を逃せば、人間を恨んでいるヤマキに気付かれてしまうのは時間の問題である。
そうなればなにもかもが終わりだ。
歩き出すヤマキを見送って、コトコを引き止める。
「ヤマキに僕たちが中に入る手伝いをしてもらう。彼はそのまま巣から離れてもらおう。侵入するのは僕たち二人だけだ」
「そのあとは?」
「……こんな言葉を知ってるか」
当たって砕けろ。
体当たりで巣を壊せるのなら、どれほど楽なのだろうか。
コトコはわかりやすくあまりにも大げさにため息をつく。
呆れたと、口だけを動かして声に出さない。
せめて口で言ってくれた方が言い返せるというのに。
「わたし、がんばるから――」
駆け出すコトコを追って、僕も走り出す。
気持ちが落ち着かなかった。
なにもわからないまま進んで行く恐怖を、改めて思い知る。
巣は湖の真上まで来ていた――。




