第六章:思いつき城主
いらっしゃい〜。
この話はちょっと前に書いて今も続いているものを丸写ししているものなので、だんだん文法が変わってるかもしれません。ご了承くださいね。
「まあ魔法ってのは要するに、自然の力とか神に祈りだとかなんとかで、この大陸で魔道士は
沢山いる」
ジェイクはめんどくさそうに話始める。だが何故か嫌そうではなかったので、口を挟まず聞く。
「しかもその魔法にもいろんな種類があるとかなんとかで……ああ、よくわかんねぇ。
サナ、あと、頼む」
と、やはりめんどくさがっていたようだ。そうして無理矢理説明役を押し付け、足を崩した。
サナは軽く微笑み、ジェイクからだんだん目をシンたちに移し、話し出した。
偉く活き活きと話していた。まだ子供だからか、世話好きなのだろうか。最後に歳を訊いてみた。
「16だけど……?」
聞いたときはビックリした。この時代の成人は17歳となんとも中途半端な数値である。
なぜかというと、もとはきりのいい15歳だったのが、それではまだ小さすぎないか? ということで
話し合われ、15がダメなら20? でも、それは大きすぎなんじゃ……、と。今とは、考え方も大分
違うようだ。あと1歳で成人というのは、目の前の10歳ぐらいに見える少女には想像もつかないもの
である。
その説明では、どうやら魔法には沢山の種類があるらしい。
先ほどサナが使っていたのが『攻撃魔法』。敵にダメージをあたえることだけを目的とする
比較的使用の簡単な魔法らしい。ちなみにサナが先ほど使っていた攻撃魔法は、
『フラッシュ』という威力の低い下位魔法だ。
それと、味方の傷を癒すことを目的とした『回復魔法』。まあ名前のとおり、
仲間の傷口を塞ぎ、痛みをなくすものだ。使用の難易度は攻撃魔法と同じようなものだそうだ。
それと『特殊魔法』。もともと魔法の存在じたいがシンにとっては特殊なものだったが、
その中でも更に特殊な効果を持った魔法らしい。ここは、難しくてよくわからなかった。
と、シンが頭の中で整理し、ようやく特殊魔法以外は理解したときだった。
城門の方から声がザワザワと響く。
シンたちが振り向いて耳を澄ませば、領主が帰ってきたとかなんとか。
「……おい! 皆! ライル領主のレイスが帰ってきたって……」
シンが傭兵団メンバーに向かって話しかけたとき、もう皆はいなかった。どうやら傭兵団の
奴らは、城の中がざわついた時点でレイスの帰宅に気づいたらしい。
ちなみにその名前は、さっきベグオンから聞いたものである。
ライルはローラシアの三分の一をしめる土地。さっきまで居たイスラは、ローラシア地方の中でも
さらに小さな地方である。もはやライルの領主は、一国の王と同じようなものだ。
グレールはひとつの国として成り立っているが、一応ライルは、ローラシアの半分、ジキルという
国の中のひとつの土地にすぎない。まあ、そのひとつの土地が国の大半を占めてしまっているのだが。
そんな大きな土地の領主に会える。いや、この際地位はシンには関係なかった。
シンは、あの強いライル傭兵団をおさめる男に、彼らを雇った男に会うのが楽しみでたまらなかった……。
「やぁやぁ。ただいま! 皆!」
ふざけた顔で城に侵入してきた黒髪の男。それが、ライルの領主・レイスであった。
シンは呆気にとられた。もうちょっとこう、渋くてカッコイイ男を期待していたからだ。
これ以上渋顔が増えても困ったものだが、シンは頭の中に、立派で威厳のある歴戦の男のような、なんかそんな奴を思い描いていた。
それがコイツは、だらだらで、まるで威厳のないボンボンの若者みたいな、
なんかそんな奴であった。
グルイドもまた同じ。シンにつられて、呆気にとられる。百聞は一見にしかずというのは
このことだ。そのことわざ自体、この時代にはないから表現のしようもない。まったく困ったものだ。
「ん、こいつらか。あの竜とやりあってたっていう……」
「ああ、そっちの槍持ってんのがシン、剣の方はグルイドだ」
そう言ってベグオンは、2人の方に手を向けて言う。シンも、「ああ、どーも」ととりあえず言う。その次にすぐ、ベグオンはシンたちに雇い主を紹介した。
「で、この男が領主のレイスだ。……一応雇い主だ」
ベグオンが次にレイスの方を向いた。レイスはへらへらと笑いながら、「一応とはなんだ」なんて言っている。本当にこいつが領主か? とシンですら思うほどの威厳のなさだった。
皆が一息ついたところで、レイスは一行を奥の広間へ案内した。
玉座の間から左に出て、右に曲がって真っ直ぐ歩く。そしたらすぐに広間が見えてきた。
レイスはその中心にある大きな、いや、広間の大きさに比べたらかなり小さなテーブルに腰かけ、「どーぞ」と4人を座らせた。ちなみに今、サナとジェイクは不在である。村に残った5人を向かえに行ったのだ。
「で? いったいなんで腐竜と戦ってたんだい? しかもたった2人で」
急に真剣な表情になったレイスに、ただものじゃないというオーラを感じ取ったシンは緊張気味に答える。
「いや……俺はグレールと戦うために旅立って……、途中で暴君マーゼレンに会ってだな……」
「そいつを怒らせてしまったというわけです」
シンの言い方がじれったいので、グルイドがさっさと終わらせようと口を挟む。
レイスは、「ふん……」となにやら考えだし、2人に訊いた。
「グルイド。君は行き先があるか?」
「い、いえ……。ありません……」
「シン。君はなぜライルに来たんだっけ?」
「え? いや、母さんの仇のグレール王国を倒すため……」
「そうか……」
するとレイスはまた考え込んだ。他の3人も黙ったままである。
沈黙に耐え切れず、ベグオンが言った。
「レイス、まさか……」
ベグオンがいい終わらぬうちに、レイスは大声で言った。
「君達、ライル傭兵団に入れ!」
「は!?」
さすがのシンも驚いた。もちろん、グルイドも大声をあげた。
いきなりで話がわからない。何故そんなことを言い出すのかちゃんと一から説明してほしい気持ちで
いっぱいだ。
「お、おい! レイス! どういうことだよ!?」
たまらずベグオンも口をだす。しかし動じず、レイスはニヤりと不適に笑って言った。
「行き先のないグルイドは、傭兵団に入った方がいいだろう? 何故ならライル傭兵団は、3食だしてもらえるし、飲み水も十分に補給できる。全部雇い主に払ってもらえるちょっと他とは違う傭兵団だからな」
「ま、まあそりゃ行き先ないですけど……」
グルイドは反論できない。正直、そんな条件のいい傭兵団があるとは知らなかった。
そこに入団できるなら入団したい。路頭に迷うよりましだ。
「そしてシン。ライル傭兵団は今、本格的にグレールと戦闘に入ろうとしている。君も入れば、グレールと戦うことができる。君はなかなか実力があるらしいし、加わってくれればきっと、グレール本体とも渡り合えるようになるかもしれない」
「ほ、本当かよ!?」
シンは反論しない。むしろ喜んでという気持ちだ。自分がいればグレールを倒せるかもしれない。
そんな甘い言葉に乗せられたのだ。
「で、どうだ? 君達。入るかね……」
「待てって!」
ここでやっとベグオンが口を挟んだ。
「俺の意見も聞けよ! いいかお前ら! 俺たちはかなり危険なことしようとしてんだぞ!?
わざわざくることもねえ。条件にのまれないほうが身のためだぞ!?」
ベグオンが必死に危険性を訴えている。だが答えは変わらなかった。
「私は山賊にはなりたくありません。それに、グレールを倒すためなら、協力を惜しみません!」
「俺は母さんの敵討ちのためならなんでもやるぜ。危険だろーがなんだろーが、おもしろそうじゃねーか!!」
2人の言葉に、力んでいたベグオンの顔が緩んだ。一気に力が抜けた。
そしてふっと溜息をつく。
「そうか……。じゃあわかった! 俺も賛成する!」
その一言でシンもグルイドも喜び飛び跳ねた。飛び跳ねたのはシンだけだが。
グルイドもそれを見ながら笑っている。
そのはしゃぐ男2人を横目に、レイスも笑ってベグオンに言った。
「いいじゃないか。あの2人はきっと戦力になるし、なによりおもしろそうだぞ」
ベグオンは「ふっ」と言う。溜息だかなんだかはよくわからない。シンとグルイドは聞いていない。
「レイスよ……。でもあいつら、まだ覚悟が生半可なようだ」
「……覚悟なんていずれ決めるさ」
2人の短い会話は終え、はしゃぐシンたちを止めた。そこで丁度、兵から報告がはいった。
「失礼します! レイス様! ただいま、傭兵団の皆様がご帰還なされました!!」
気合の入った兵の声も、大きな広間では独り言にしか聞こえない。だが4人は、それをキッチリ
聞き取った。
「お! 帰ってきたか」
「帰ってきたな……」
レイスとベグオンは歩き出す。残りの2人もついて歩く。
そして少し歩くと、入り口が見えてきた。
「君達がこれから付き合っていく仲間。仲良くしてやってくれ。あれが……」
その数7人。それとベグオン。思ったより穏やかな空気で、夜明けの光で、妙に輝いて見えた。
「ライル傭兵団! 全員帰還しました!」
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