表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大陸の覇者  作者: 熱悟
5/23

第四章:無敵の援軍

よく考えたら……

僕は、まだ挨拶もしてませんでした。忘れてました。

はじめまして。虚人です。

「ゆけーーー! 標的は竜だ! 油断するな!!」


いきなり奥の、霧に隠れてよく見えもしないような丘の方から角笛の音が聞こえたと思ったら、

そこから次々と馬に乗った兵たちが駆け下りてきた。なに? 3億年前に馬が居たのかって?

まあ、少し現代の馬とは違う。まあもともと現在、3億年前の人間の話が残っていないのは、

ある理由がある。その理由で当時の人間たちはいなくなり、その時馬も姿を消した。

その祖先というか、新種というかが、現在の馬になったのである。

このとき馬は、目がデメキンのように飛び出て、鬣は少なく、尻尾は短かった。そしてなにより、

牙が鋭く、口から真上にはみ出した牙がギラリと光る。


話を戻そう。なぜ丘からそんな騎馬隊がやってきたのか? まあ、せいぜい10人程度だが。

その理由は今はわからなかった。だが、知ろうともしない。今は腐竜の攻撃を防ぐのに精一杯

だったからだ。


「突撃ィーーーーーーーーーー!!」


その軍のリーダーとおぼしき男が、馬上から剣を掲げ、掛け声をあげた。

そのとき軍の兵たちも一緒に声をあげ、武器を上に掲げた。


そこで先頭の2、3人の兵たちは足を止め、はじに寄る。残りの兵たちはそのまま猛スピードで駆け

降りてきた。まだ目がかすんで見えないほどの距離だ。なに? それほど遠くの、たった10人程度の

兵が見えたのかって? 質問の多いやつだ。これは単純な理由。シンはずっと山暮らし。

視力はかなりのものに決まっている。まあ、それでも普通の奴じゃ絶対に見えないような距離だが、

シンは普通じゃない。ただそれだけのことだった。


それと当時の馬は、現在の馬とは比べ物にならないほど速い。だから、すぐに腐竜の背後まで

駆けてきた。そして、今先頭を走る若い男。さっき掛け声をあげたリーダーとおぼしき男が、

大刀を振り上げ、馬を地上において腐竜の頭の高さまで飛び上がった。


「はあっ!」と掛け声をあげ、腐竜の頭上から大刀を振り下ろし、一気に腐竜を切り裂いた。

と、思ったら、斬ったのは角一本だけ。竜は思いのほか素早く、頭を斬られる一瞬に

首を動かし、犠牲を最小限におさえたようだ。頭がよかったのか、それともただ動いただけか。


男は馬の上に上手く着地し、大刀はそのまま地面にぶつけ、「ちっ!」と舌打ち。腐竜は

うなり声をあげ、ますます暴れだす。腐竜の頭から切り落とされた角は、男のすぐ隣に落下。

幸いそこに人はいない。いや、わざわざ人のいないところに計算して落としたのだろう。

なかなかできる男のようだ。シンは唖然としているが、それでも腐竜の攻撃はかわしきる。

男はまだまだ大刀を振り回し、腐竜の足に少ないながら切り傷をあたえる。扱いは雑で、

我流の刀のようだ。男の後ろからも、多数の特徴的な兵たちが次々やってくる。


「な、なんだ!? あいつらは!!」

「あの胸の印……ライル傭兵団!?」


兵たちの胸に輝く印は、白い石を加工されて作られた妙に輝くものだった。

そしてそれは、都ライルの、傭兵団の証だった。


「なんでここに……」


グルイドが言いかけたときだった。暴れる腐竜の前足がグルイドのすぐ目の前を力強く踏む。

近くの大地に強い衝撃がはしり、なかなか重いグルイドも、後ろに吹き飛ばされてしまう。

「うおっ」と小さな声をあげて後ろに倒れこむが、硬い大地にぶつかったとは思えないほど

柔らかな感触がした。顔を上げて見てみると、そこには2メートルは優にあるであろう大男が

膝立ちになり、グルイドの体を支えてくれていた。


「……大丈夫か?」

「……え、ええ……」


影でよく顔が見えなかったが、その大男は髭面で、現在の言葉で言う『ダンディ』な顔をしていた。

だがその状況もすぐ終わり、男はグルイドを土にそっと置いて立ち上がった。そしてすぐ

むこうからリーダーの声が聞こえてきた。


「おい! ケイト! こっち頼む!」

「はっ! ベグオン様!」


そう返事するとケイトという男は、隣に置いておいた大剣を手にとり、さっきの穏やかさからは

想像もつかないほど俊敏に、大きな体からは想像もつかないほど早くリーダー・ベグオンのもとに

駆けつけた。グルイドは、ただ呆然と座るしかなかった。


シンはそんな一団になんだか興味が湧き、じょじょにケイトに近づこうと試みるが、

腐竜の口から吐かれる暴風のような息と、腐った液体が邪魔する。その液体は、唾液か胃液。

しかし、普通の人間のものより、物を溶かす作用が強く、あまりうけすぎると溶けてしまう。

実際、マーゼレンの兵の死体はその液体をもろに浴びて、体の半分は溶けている。シンはそれを

見てゾッとする。しかもその危険な液体が津波のように襲い掛かってくるのだから、うかつには

近づけない。


「うわっっ……」


ここでまたピンチだ。シンの足に、少し腐竜の液体がかかる。靴の先がだんだん溶けてゆき、

素足に直接当たりそうになる。「わっ」と声をあげ、急いで靴をぬぐ。しかしぬいでる途中、

腐竜の長い尻尾が右からとんできた。危うく尻尾に殴られて死んでいるところだ。しかし、

そこで助けてくれたのがライル傭兵団である。


「はっ!」


掛け声を一言発した騎士は、長刀で尻尾を切り裂き、止めた。随分大きな馬に乗っている。

まあ、縦に少し長いだけだ。騎士の後ろには大きなスペースがあり、人が座っていたような

跡がある。きっとさっきの男・ケイトは、ここに乗っていたのであろう。


「大丈夫ですか!?」

「あ、ああ……、ありがとよ……」


シンは柄にもなくオロオロした感じで、かつ冷静に……呆然とする。グルイドと同じだ。

するとすぐに騎士は、走り出す。


「はっ! ご無事でなによりです! ……それでは!」


随分真面目そうな騎士だった。長刀を使う騎士という時点で珍しいが。騎士には槍を使う者が多い。


「あ! 待ってくれ!」


我にかえったシンが、慌てて騎士を呼び止める。


「なんですか?」

「あんたらはいったい何故ここに……?」


キキッと止まった騎士に、シンは慌てて質問する。すると騎士は迷わずこう答えた。


「竜に襲われる人がいたから! 死人は最小限に抑えたかったのです!」

「あんた……、名前は……?」


シンはもうひとつ質問した。そこで少し間をあけて、騎士はこう答えた。


「ハロン……。ライル傭兵団、新人ハロンです!」


そう言うと騎士・ハロンは走り去って行った。気が動転して、顔はよく見えなかった。

まあ、グルイドと同じだ。


そのとき、丘から大量の矢が降ってきた。しかし、何故か人間には一本も当たらない。

どうやらさっき丘に残された兵は、皆弓兵だったようだ。だいたい丘から腐竜のいる地点まで、

100メートルぐらいで案外短い。ただ霧のせいでよく見えないだけ。だが、見えないのにかわりない。

そのなかを、的確に竜だけ狙い打つ。腐竜の周りには傭兵団員が沢山いる。下手をすれば

仲間に当たっていたかもしれないのを、平気で打つ。その度胸に関心したと同時に、

なんだか胸が高鳴るシン。強者の定めという奴であろうか。


「おもしれぇじゃねーか!!」


シンは怒鳴り声をあげ、腐竜にむかって行った。

ライル傭兵団には他にもいろんな強者たちがいた。巨大な斧を片手で振り回す者や、

さっきのケイトやハロンのような豪傑たち。そしてなにより注目すべきはひとりの女。

屈強な男衆に紛れて少し離れたところから遠距離攻撃。だが、武器は弓じゃない。素手から、

何も無いところから光を出し、そこから炎を飛ばしている。しかもかなり大きな炎の弾が、

かなりの速さで腐竜に襲い掛かる。頭に何発もいれられて、もうくらくらだ。


「なんだありゃあ!?」


シンが大きな声を出したときだった。「知らないのかい?」

と声がし、シンの真横に丁度ふりかかるところの尻尾を蹴りで吹き飛ばした。

ちなみに、腐竜の尻尾は三本ある。


「あれは『魔法』さ……」


その男は細い体で軽装。スラッと身長は180センチほどで、これまた渋い顔をしている。


「知らないのかい?」


男はもういちどシンに訊く。シンはこくこくと頷く。


「……まあ、いいか。全てにおいて、説明はあと! まずはこいつを片付けようぜ!」


相変わらず渋く、そして熱い声でそう言うと、腰からナイフを一本取り出して、腐竜の方に

駆け出した。


シンの中で、期待がどんどん膨らんでいくのがわかった…………。



読んでくださった方、ありがとうございます。

感想や評価など、あったら待ってますので、ご気軽に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ